プーアール茶.com

茶教室・京都

宮廷プーアル熟散茶05年 その4.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド特級
茶廠 : 孟海茶廠(民営化後)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 梅干し壷
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯+鉄瓶・炭火
壷
竹皮

お茶の感想:
梅干し壷にて熟成中の2005年の宮廷プーアル熟散茶。
自分の手元での熟成は10年になる。
梅干し壷は蓋がゆるくて通気があるので、空気中の水の入れ替わりが早い。
熟成の変化も順調。
茶葉
宮廷プーアル熟散茶は、2003年とこの2005年のを所有している。
同じメーカーの製品。当初は互角と思っていたが、現在は2003年のほうを高く評価している。
2005年のは市場に流通している平均レベルよりはずっと良いはずだが、どうしても2003年のと比べてしまって、見劣りというか味劣りする。
泡茶
美味しさ=食欲をそそるとか、身体に健康的な刺激が感じられるとか。一般的な食べものや飲みものの美味しさの観点は、身体に対してどうなのかを生理的に判断していると思うが、お茶の場合は身体だけではない。心への作用を重視する。
実際に食欲をそそる美味しさのアピールは2005年のほうが強い。茶葉の栄養の充実が味のボリュームに現れている。
このために自分も当初の評価を誤っていた。
茶湯
濃く淹れても味は濃すぎずまろやか。水質はなめらか。バニラのような甘い熟成香もあって、発酵の良さが現れている。
2005年のは健康的で嬉しくなる味。果物のジュースに求めるのに似た価値観で評価できる。
それに対して、2003年のは得体のしれないものがある。感情に現すことのできない大きなチカラを感じる。心が揺さぶられる。飲む人を黙らせる。雰囲気というか印象というか景色というか、ある種の味わいがある。陰の味わい。
この味わいは難しくない。
飲み比べたらわかる。一瞬でわかる。これぞお茶に求めていたものだ!と誰もが思うだろう。
懐かしい風景みたいな感じ。
茶葉の良し悪しを評価する”品茶”はこの観点が大事。
2005年のは素質が良いのだから、もっと熟成がすすんで心を揺さぶる味わいになることを期待している。
10年では現れなかったけれど、20年めには現れるかもしれない。

宮廷プーアル熟散茶05年 その3.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド特級
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : なまこ火鉢
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の宝瓶・杯+炭火・鉄瓶
なまこ火鉢
宮廷

お茶の感想:
押入れの奥のなまこ火鉢に詰めて、竹皮と手工紙で蓋をして布をかぶせてある。
この蓋を開けるのは3年ぶりくらい。
表面はサラサラした散茶の状態を保っている。
熟成の変化は、微生物発酵はしないで、酵素による成分変化のみのだと思う。
茶葉
もしも保存中の壺の中で湿気て、微生物発酵がはじまると、茶葉同士がくっついて固まりができる。微生物は活動のために水分が欲しくて、衣装ケースに入れる除湿剤みたいに空気中の水を捉えて集める物質をつくるので、カンタンには乾かなくなる。
水分によって茶葉の粘着成分の効果が復活して固まりになる・・・・という具合の現象が起こるのだと推測する。
宝瓶
杯
温め
久しぶりにチェコ土の宝瓶の登場。
泡茶
茶湯
温
最近こうして熟茶を飲むのが好き。

孟庫戎氏宮廷小熟餅05年 その4.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省臨滄市双江県孟庫大雪山茶区晒青毛茶
茶廠 : 双江孟庫戎氏茶叶有限公司
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 小餅茶145g
保存 : 昆明−上海ー西双版納 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
茶壺を蒸して温める

お茶の感想:
茶友たちが試みているオリジナルの熟茶づくりで問題としている”糠味”と”カラスミ味”。中国語で”味”は香りのことも含み、この場合はどちらかというと香りのこと。
お茶を淹れて出てくる”糠味”と”カラスミ味”は時間差がある。同時には出てこない。
糠味ははじめの3煎めくらいまで。後の煎は弱くなる。
カラスミ味は茶壺でじっくり蒸らして、5煎めくらいから後の葉底に強く出てきて、茶湯にもその香りがある。上の写真のように鉄瓶の上に乗せて蒸して加熱するとより出やすくなる。
1-4煎めくらいは別の香りが蓋をして出てこないのか、それとも熱が通ってから出てくるのか、よくわからない。
よくわからないけれど”カラスミ味”は厄介なやつであると感じている。
温州人にこの報告をして1週間経つ。
今朝、ミャンマーからのSNSでの報告では早速対策をはじめているらしい。
現在渥堆発酵進行中の7批(7番目の作)は、布袋の底の方の呼吸困難になっているであろう茶葉3分の1ほどを分離したらしい。
7批熟茶
7批
この茶葉、捨てることになるのかな・・・・。
新しく渥堆発酵をはじめて数日の8批は、はじめから布袋を取り除いて通気のよい竹籠だけにしたらしい。
8批熟茶
ちなみに下の写真は布袋があったときのもの。内側に綿の布。外側には麻の布が貼ってある。
布袋
ということは、やはり温州人も通気の問題と考えているのだろう。「二酸化炭素が蓋をして呼吸困難になる・・・」みたいなことを中国語で言っているが、意味は同じだ。
それともうひとつ結露の問題がある。
茶葉が水を含んで微生物発酵がはじまると発熱して蒸気が出る。茶葉だけでなく微生物発酵モノはだいたい熱が出て蒸気が発生するだろう。空気中の水分はより冷たいところに移動する。設備や道具の表面に結露する。
結露した小さな水玉に雑菌が増殖する。
人間の目には小さく見えても細菌にとっては湖くらいたっぷり水があるのだろう。すぐに乾けばよいけれど、乾かないで1日も2日も水が留まると雑菌が増殖するのに十分な時間を与えてしまう。
結露しない工夫も大事だけれど、もっともカンタンで有効なのは設備や道具をなるべく簡素にすることだろう。
この問題についてはまだ温州人の改善案が出ていないけれど、たぶん自然にそうなってゆくと思う。
これらの結果が出るのは2週間から1ヶ月かかる。
さて、今日の試飲はかつて糠味のあったお茶。
孟庫戎氏宮廷小熟餅05年
+【孟庫戎氏宮廷小熟餅05年 その1.】
その1.の文章で”味噌っぽい香り”と書いているのが糠味のこと。
2013年9月13日の記事だが、この時点ですでに糠味は消えていたらしい。2005年の生産だから2013年ではすでに8年経っている。今日はさらに5年後の試飲となる。
糠味ですぐに思い出した熟茶は、茶葉同士が粘着して小石のような塊をつくった”茶頭”だったが、このお茶は”宮廷”と謳っているくらいなので小さな新芽・若葉で構成されている。
餅面表
餅面裏
餅面の表はたしかに新芽・若葉が多く見えるが、よく見ると粉砕されて細かくなった茶葉のほうが多い。裏面はとくにそれが多い。
茶頭を粉砕して粉々にしていっしょにして圧餅したのだな。
糠味はやはり茶頭の味だったのだ。
茶頭
写真は『版納古樹熟餅2010年』の茶頭。
熟茶の渥堆発酵は、山にした茶葉の上のほうの乾燥した部分と、底のほうの湿った部分と、2層を意図してつくらないとうまくゆかないのではないか?という考察を前回の記事でしていた。
+【温州人第六批熟茶2018年 その3.】
見た目にましな餅茶にしようとしたら、篩いにかけて茶頭を取り除くのが一般的。
篩がけ
写真は篩がけの機械。
糠味が目立っていたということは加水の量が比較的多くて茶頭がたくさんできていたはず。
そうすると、茶頭を取り除くと生産量はかなり減ったはず。
しかし茶頭を粉砕していっしょに混ぜて圧餅したら、生産量を増やしてコストを下げることができる。
なかなか良いアイデアだと思う。
現在は茶頭にも人気があるが、昔の茶頭は”余りモノ”と認識されていて、なかなか売れなかったから。
泡茶
意識して飲んでみると、糠味とは言えないけれど、確かにその足跡のようなものがほんのり薫る。13年間の熟成で陳化してお香のような香りが混ざって良いバランスだと思う。
粉砕してあるから1煎めからドバっと濃い色が出てくるが透明度は高い。味も濁りがない。
味はちょっと酸味が立つけれど甘味も強いからバランスがとれている。
葉底
熟茶はもともと生活のお茶。
食卓に出すのならすぐに美味しく飲めるほうが良い。
広東や香港の飲茶レストランの出てくる熟茶にはピッタリだが、現在のレストランにはこのくらい美味しいお茶を出す余裕はないかもな。

わかるかな、この違い。
緑黴の落花生
落花生
上のやつは緑黴が発生している。
匂いはかすかに黴臭くて味はちょっと苦い。何粒かうっかり食べてしまったが、ま、大丈夫だ。
版納の茶友が袋いっぱい1キロほどプレゼントしてくれたが、3分の1ほど緑黴が発生していた。問題がなければ生のまま食べられるやつで、美味しいのだが・・・。
悪いけれどすぐに捨てた。
茶葉を置いている近くに黴の発生源を置いておくことはできない。
気候の温かい地域だから細菌たちも心地よく繁殖できて、種類も多くて生存競争も激しくて、それだから熟茶の発酵で活躍する黒麹菌はクエン酸のような強力な免疫力を備える。敵を毒殺するわけだ。まさに生物兵器。
発酵食品の地域的な特性を忘れて人間が勝手にいじったりしたらヤラれてしまう。

大益沱茶05年 その1.

製造 : 2005年9月
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド
茶廠 : 孟海茶廠民営化後
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 沱茶100g
保存 : お菓子の缶
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯・鉄瓶+炭火
お菓子の缶で熟成した茶葉
生産日付
大益沱茶05年プーアル茶

お茶の感想:
前回につづいてお菓子の缶に8年間眠っていたお茶。
+【大益沱茶05年プーアル茶】
生茶のプーアール茶。
大手メーカーの大衆茶。
国営の孟海茶廠が民営化されるときに準備されたのが”大益”ブランドで、中国大陸の市場に向けて大衆化した製品を供給することになって、新興産地の茶葉が使われている。
茶湯の色
正直に言って美味しくない。
雑味やアク味が邪魔してゴクッと強制的に飲み込むような感じ。舌にはシワシワ渋味が残って消えない。
8年間も忘れたまま熟成していて、もうちょっとなんとかなっているかと思った。
葉底
原料の茶葉の質は悪くない。
製茶が悪い。圧延加工が悪い。
製茶は焦がしているし、圧延の蒸しすぎた煮え味もある。
2005年のものはこれで標準的な大手メーカーの品質。
製茶はダメでも茶葉の質が良いから煎はつづく。
5煎めくらいから甘味と蜂蜜のような香りが出てくる。茶葉の持つ煙味がスパイスになっている。西双版納の南糯山や布朗山とのお茶に似ている。
ふと思いついてこのお茶。
+【南糯古樹青餅2010年】
原料の茶葉は似ているはず。
南糯山古樹青餅2010年
南糯山古樹青餅2010年
残念ながらこれも美味しくない。
製法の問題はそれほど見つからない。やはり品種特性だろう。
西双版納の実生(花が咲いて実が成って種から育つ)の古茶樹は、人間の兄弟がそれぞれ異なる外見や性格になるようにバラエティー豊かになって、クローン栽培のような単一化はできないが、茶山を選ぶことでざっくりと同じ風味のグループを選べる。
生茶よりも紅茶や熟茶にしたほうが良さそうな茶葉。
孟海県の南糯山が生茶をつくりだしたのは1980年代のこと。それ以前の数十年は緑茶と紅茶。もっと昔は微生物発酵させる黒茶の原料を提供していたはず。
大陸の新しい需要に向けて、高級茶づくりに歴史のない孟海県に新六大茶山を定義してブランド化したけれど、 この生茶の人気ははたして根付くのだろうか。

丁家老寨青磚2005年 その1.

製造 : 2005年4月・5月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+景洪の茶商
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 西双版納 紙包み 竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興紅泥壺・鉄瓶・炭
丁家老寨

お茶の感想:
2018年の春は丁家老寨に行くことにした。
天気予報を見て山に入るタイミングを図っているところ。
他の有名茶山と同じく丁家老寨の古茶樹も乱獲がたたって、ここ3年くらいのお茶の味はパッとしない。
しかし今自分の勉強したいところは慣れた茶山にある。
スレていない茶地を求めてあちこち車を走らせている現地の茶商たちが見つけてくる茶葉には魅力があるけれど、これを一から理解するのには年数がかかる。
各山の晒青毛茶のサンプルを集めて、定期的に試飲して観察してきた。
はたして生茶のプーアール茶として適切な品種なのか?
製茶の技術はどうか?
熟成変化に魅力はあるのか?
これらの観察には手間と時間がかかっているので、これ以上いろんな山のお茶に手を広げると仕事の質を落としそう。
2012年のこのお茶でさえ、6年経った現在でもまだ謎が多い。
【丁家老寨青餅2012年 】
丁家老寨青餅2012年
丁家老寨青餅2012年
熟成変化はおおむね良好。
西双版納に在庫しているのは、はじめの1年間の保存でちょっと湿気ているが、質が落ちたと言えるほど明確に悪いこともない。湿気ると、香りの立ち方が鈍くなったり、味に酸味が加わったりするが、一年中気温の高い地域なので、もしかしたら乾燥に気を付けていてもこのくらいの変化はあったかもしれない。
漫撒山(旧易武山)の古い品種の茶葉は昔から(1950年代以前)長期熟成の実績がある。
この点でカタイというか安心感がある。
過去のサンプルと比べることができる。
漫撒山一帯のお茶を専門にしている茶商なら、過去に一度は丁家老寨のお茶を入手している。
知り合いの茶商が持ってきたお茶と比べてみる。
丁家老寨青磚2005年
『丁家老寨青磚2005年』(仮名)とする。
2005年のはちょっと珍しい。
2006年・2007年にプーアール茶バブルと呼ばれる相場の高騰があったが、価格の高騰は乱獲につながる。
一般的な農作物は豊作貧乏で、沢山収穫されすぎると価格を下げるのが普通だが、茶葉は長期保存ができるせいかそうならない。
2005年はまだプーアール茶ブームが中国大陸全土に広がっていなくて、昔から飲んでいた南方の人たちが主に消費していたので、生産量は今ほど多くなく、新しく森を切り開いて茶地をつくったり、年に3度も4度も茶摘みをするような乱獲は必要なかった。易武山の有名茶地は「麻黒」や「落水洞」くらいで、「丁家老寨」を知るのはマニアくらい。この頃は農家は茶商のオーダーがなければ茶摘みをしないこともあったくらいだから、茶樹は健康だったはず。
丁家老寨青磚2005年
丁家老寨青磚2005年
剪定や台刈りによって枝や幹が詰められると枝の分岐が増えて一本の樹から採取できる茶葉の量は増える。しかし古茶樹特有の滋味深さは失われる。
2005年のこれはまさに滋味深い。茶湯が口に溶けるようになじんで、すっと喉を滑り落ちて、お腹の底を温める。舌に残る苦味・渋味の消えの速さがよくて清潔感がある。心配していたほどに湿気た影響が悪く現れていない。
だが、お茶のお茶たる風味が弱い。なんだか眠い。
この眠さは丁家老寨のお茶の特徴かもしれない。
この2005年のはあきらかに茶摘みのタイミングが悪い。「春のお茶だ」と茶商は言うが、おそらく夏の雨季に入った5月の2番摘みだろう。
丁家老寨青磚2005年
丁家老寨青磚2005年
香りが無いし、茶気も充実していない。
ただ、それが眠さの原因じゃない。
2012年の早春に采茶した『丁家老寨青餅2012年』にもこの眠さがあるから。
丁家老寨青餅2012年
味比べ
左:丁家老寨青餅2012年
右:丁家老寨青磚2005年
比べてみると香りも茶気も2012年のが圧倒的に強い。でもやはりなんとなく眠い。
こういう品種特性かと思う。これでよいのかもしれない。
茶葉にしっかり熱が入る3煎めくらいになると香りがキリッとしてくる。外から薫るのではなくて吐く息に薫る香り。この香りが出てくると嬉しい。はじめの1杯めからフルパワーで薫る小葉種の、例えば”倚邦山”のお茶よりも香りにおくゆかさがある。
ささやくような香りは聞くほうの意識を集中させる。
お茶の味の審美眼が、昔の人と今の人とでかなり異なるのではないかと思う。
昔の人のほうが詩人だったので、お茶の味わいに揺れる心を鑑賞できたにちがいない。
どのお茶の香りが強いとか、渋いとか苦いとか、煎が続くとか、なにかに似ているとか、そうではなくて、茶酔いの美しさ。
美の鑑賞は感じる側の人の有り方が問われる。
千利休の時代の黄金の茶室に秀吉の貧しさを感じてしまうように、例えば曼松のお茶の派手な風味にはそれを好む人の未熟さを感じてしまう。(曼松は西双版納旧六大茶山のひとつで、清朝の時代に皇帝ブランドの冠が付けられて国内外の都市に売られていた。現在また人気が上がっている。わかりやすい強い香りが特徴。価格は高騰して毎年話題になる。ニセモノもあふれている。)
美にはこういう面もある。
人の心の卑しさみたいなところを美の学びから指摘できるのは、成熟した教育があるからこそ。
つくる側の問題ではなく、流通の人も、消費する人も。みんなの教育が必要。
葉底
左:丁家老寨青餅2012年
右:丁家老寨青磚2005年
コーヒーやワインは科学や経済が偉いが、お茶は芸術や思想が偉い。

易武山刮風寨陳香餅05年 その6.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山刮風寨古茶樹
茶廠 : 易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納ー上海 紙包み+密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武山刮風寨陳香餅05年

お茶の感想:
チェンマイから西双版納に戻ってきた。
空港に着いたのは深夜1時半。2時間遅れにもかかわらず、広東の茶友が空港に迎えに来ていた。
春茶の季節が近づいている。
みんなの気持ちが高ぶってきている。
中国では闘いの気分。
空港からその気分になった。
チェンマイから昆明の乗り継ぎで、東方航空は受託荷物を他の便で運ぶかもしれないと言いだして、チェックインカウンターで係員ともめた。中国を実感する最初の闘い。目がつり上がって眉間にシワが寄り、中国の顔になる。声がでかくなる。
昆明空港に着くなりあちこちで人々が怒鳴っている。
子供を叱る親の声、夫婦喧嘩の声、職員の喧嘩の声、掃除のおばちゃんの喧嘩の声、携帯電話ごしの喧嘩の声。みんな闘っている。
西双版納ゆきの搭乗口に近づくと大声の人がもっと増える。田舎の人のマナーとパワー。脚の踏み場もないほど散乱している食べカスは、中国国内線のどの搭乗口にも負けない。
次の日から大家さんと喧嘩(家賃を余分にだまし取ろうとするから)、物を買うにも喧嘩(不良品を買ったので交換して欲しいと主張するため)、食べるにも喧嘩(オーダーしていない料理がでてきて、そのまま食べさせようとするから)。喧嘩喧嘩の毎日がはじまった。3日もしたら大声で怒鳴り合うくらいは平気になる。
この土地では争いなしではやってゆけない。
もしも争いを避けたら、自分だけがガマンを溜め込んで、いずれ崩壊するだろう。
チカラの均衡のために闘う。
民族が混在して、言語も習慣も信仰も生まれ育ちも違う人達と、お互いに納得できる妥協点なんて見つかるわけがない。相手を思いやることなどなく、自己主張の押し合いをするのみなのだ。
こんなに毎日イライラする土地には住みたくないと思うが、あんがいみんなが健康的に見える。そういう自分もけっこうハリキッている気がする。
今日はこのお茶。
『易武山刮風寨陳香餅05年』。
易武山刮風寨陳香餅05年
易武山刮風寨陳香餅05年
易武山刮風寨陳香餅05年
今年は刮風寨のお茶がターゲットのひとつ。
今この2005年のを飲んでみると、自分ならもっと美味しくつくれるぞ!と思えるようになっている。
進歩したのかもしれない。
そういえば広東の茶友ともよく口喧嘩している。年齢は同じ40代半ばだが、育ってきた環境も時代も違う。貧しい農家に生まれて小卒から働いて、偽物づくり工業分野で事業を成功させた彼は、その成功体験をお茶にも応用できると信じていた。
まあ、自分の思うようにやってみたら・・・。

宮廷プーアル熟散茶05年 その2.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶孟海茶区ブレンド特級
茶廠 : 孟海茶廠(民営化後)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 上海
茶水 : ミネラルウォーター農夫山泉
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
宮廷プーアル熟散茶05年
宮廷プーアル熟散茶05年
うーん。
茶気も香気も水質も味の消えの早さも、合格点は満たしているが、美しさに欠ける・・・。
2003年のほうが美しい。
素質は良いから、気長に熟成の変化に期待しようと思う。

宮廷プーアール茶の良いのが見つからなくなる。
年々使われる茶葉の質が落ちてゆくので、2005年のこのお茶を慌てて仕入れたが、ちょっと遅かったか・・・。
上海のプーアール茶専門店も、やはり宮廷の美味しいのを見つけられないと嘆いている。

漫撒茶山黄金葉熟餅05年 その5.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家+漫撒工房
工程 : 生茶のプーアル茶+微生物発酵
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 紙包み 竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
無加水で自然に微生物発酵したお茶。
茶葉の変色にムラがある。
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
農家のつくった一次加工の晒青毛茶(天日干し緑茶)が湿って、袋の中の中心部の茶葉に微生物が湧いた。
発熱していたらしい。
麹らしい甘い香り。
お茶の味には一点の曇りもなく、薫り高く清らかで甘い。
口になじむ。喉に溶ける。
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
漫撒茶山黄金葉熟餅05年プーアル茶
これが本来の生茶だった。
プーアール茶は黒茶という分類が正しかった。

老班章古樹青餅2005年 その1.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省西双版納孟海県老班章古茶樹
茶廠 : 不明
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納ー上海 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
西双版納

お茶の感想;
景洪市の茶荘で2005年の老班章を飲んだ。
老班章は”先苦後甜”。
苦い!と感じた瞬間にそれが消えてなくなり、甘味が残る。
だから苦いほど甘い。
思い出しただけで唾液が湧いてくる。
このわかりやすい特徴があるから試飲しての鑑定は間違いにくい。
近くの山々の同品種の古茶樹モノは、同じ苦味はあれどなかなか消えなかったり、先に甘くて後から苦かったりして、老班章ほど美しくない。
2005年のこのお茶は、過去に飲んだ老班章の中では最も優れていると思うが、やはり”先苦後甜”が際立っている。
茶気が強くて透明感があるのは春一番の采茶にしかできない技。
そして殺青の炒りはしっかり。
独特の芳ばしい深煎り香がある。それを証明するように熟成9年目にしては茶湯に赤味が少ない。
老班章古樹青餅2005年プーアル茶
老班章古樹青餅2005年プーアル茶
老班章古樹青餅2005年プーアル茶
深煎りすると孟海県の古茶樹に共通してある”煙草味”が消える様子。
”煙草味”が良い悪いの問題ではなく、このようなノイズの無い方が”前苦後甜”がよりクリアーに表現されて洗練された味になる。
老班章は価格高騰して”土豪”(成金)のお茶のイメージがあるが、高級を競う中でファンの層の厚みができ、その期待に応えるだけの製茶技術が上がっている。
もちろん偽物・粗悪品の裾野が広くあるのも、むしろ本物の勝を上げて、よりよい結果になっている。
老班章古樹青餅2005年プーアル茶
同じ茶荘の2013年の老班章に5600元の値札がついていたが、今回飲んだ2005年のほうがもちろん高いだろう。
包み紙は白紙でメーカーは不明だが、メーカーは介在していないだろう。
個人の愛好家が自分で最高の晒青毛茶を少量集めてメーカーの設備を借りて圧餅したものだから。
1980年代以前の上質な老茶が入手困難になった今、店の看板になるお茶のポジションに老班章がぴったり納まる。
専門店が老班章の上質を競うと、お茶ファンにとっては店のレベルを知る目安にもなる。
「ラオスの原生品種です。」なんてマイナーなお茶では店のチカラ比べができないし、ファンもその実力がいかほどか知ることも出来ない。

ついでに、
店の主人が「良くないと思うけれど、どこが良くないのか?」と評価を頼まれた『易武落水洞古樹青餅2009年』。
易武落水洞古樹青餅2009年プーアル茶易武落水洞古樹青餅2009年プーアル茶
秋の茶葉ということだったが、秋になる前の雨の季節の茶葉だった。
茶気が弱く水っぽい。落水洞特有の蜂蜜香がほとんど無い。

下関甲級鉄餅05年 その2.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省臨滄茶区大葉種喬木晒青茶ブレンド
茶廠 : 雲南大理下関茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 昆明 紙包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
下関甲級鉄餅05年プーアル茶
下関甲級鉄餅05年プーアル茶
下関甲級鉄餅05年プーアル茶

お茶の感想;
試飲中のお茶の中に”鉄餅”と呼ぶタイプの生茶が4種ある。
今日はこれを一気に飲み比べた。
鉄餅は円盤型の餅茶だが、鉄の型で強く押し固めてカチカチなのが特徴。
茶葉をしっかり密着させるために、まずは深く蒸される。
強い圧延で潰れた茶葉からにじみ出る汁が接着剤となってカチカチに固まる。
茶葉の隙間が少なく水分の抜けが悪いため、やや高温乾燥される。
この時点で、原料の晒青毛茶(天日干し緑茶)からかけ離れた風味になっている。
一般的な餅茶は、軽く蒸して、圧延も軽いので、晒青毛茶との風味の差はそれほど大きくない。
鉄餅独特の風味がある。
個人的には好きじゃない。
鉄餅にも、美味しいのと美味しくないのとがある。
過去の2つの名作は美味しかったと思う。
【83鉄餅プーアル茶】
【早期藍印鉄餅50年代】
メーカー・銘柄・熟成年数を問わず鉄餅にはハズレが多い。
上の写真の『下関甲級鉄餅05年』はハズレだった。
大きくハズしてはいないが、もっと美味しいのがあるはずなので、これをベースにして以下の4つを比べる。
下関美術字鉄餅03年プーアル茶
下関美術字鉄餅03年プーアル茶
『下関美術字鉄餅03年』
下関小紅鉄餅01年プーアル茶
下関小紅鉄餅01年プーアル茶
『下関小紅鉄餅01年』
下関黄印鉄餅99年
下関黄印鉄餅99年プーアル茶
下関黄印鉄餅99年プーアル茶
『下関黄印鉄餅99年』
下関美術字鉄餅95年
下関美術字鉄餅95年プーアル茶
下関美術字鉄餅95年プーアル茶
『下関美術字鉄餅95年』
この最後の1995年の『下関美術字鉄餅95年』だけが美味しい。
葉底の茶葉は大きく弾力もある。素材が良い。
はじめの2煎めくらいまでクスリっぽかった。鉄餅ならではの風味。


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