プーアール茶.com

茶教室・京都

醸香老茶頭散茶90年代 その4.

製造 : 1995年頃
茶葉 : 雲南省景谷茶区大葉種潅木晒青茶
茶廠 : 昆明第一茶廠(推定)
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : 香港ー広州ー上海−日本
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火

お茶の感想:
茶教室に何度も来てくださったお客様に選ぶ茶葉が難しい。
手持ちのお茶をひととおり飲んだので、ちょっと変わったのを出したいが・・・。
最近金花のついた『版納古樹熟餅2010年』はどうかな?と思ったが、実はそれほど味の変化はない。
金花がたくさん発生したからといって、すぐさま味が変わるわけではない。
金花の残した酵素がじわじわ効いて10年、いや20年ほどかかって・・・・と話していたら、ふと、これがあるのを思い出した。
+【醸香老茶頭散茶90年代 その1.】
茶湯
上海の准海中路に近い東方巴黎に住んでいた頃だと記憶しているので、2005年くらいだろうか。
熟茶に金花がビッシリ発生していて、始めて見たときは迫力があった。(写真はすでにそれから数年経っていて金花の粉は消えている)
そのときの日本のお客様の中には見ただけで捨てた人もあった。お客様本人ではなく、ご両親にプレゼントされたので、金花の価値の説明が伝わっていなかった。
これを久しぶりに飲んでみる。
もう20年近く経っているので金花効果が現れているのではないかと期待する。
茶葉
現在は金花の跡形の黄色っぽさがなく、くすんだ色になっている。
茶葉を温めているときの香りからその予感はあった。
バニラ、白檀、沈香などの高級感ある香り。
当時これを”醸香”と野暮ったい名前をつけたのは、そのときはまだ熟茶っぽさがあったから。
茶湯
ヤバいレベル。
久しぶりのホンモノの老茶の味。
美女の髪の毛から発せられる石鹸のような香りもある。
古いプーアール茶のマニアに「1950年代の紅紅印圓茶です!」と言っても疑われないだろう。
もともと鑑定可能なビンテージ茶を専門にしていた自分が言うのだから間違いない。というか、自分も騙されるだろう。
厳密に言えば水質の粘っこさから熟茶とわかるが、単独の試飲でそこまではっきり解る人は少ない。
熟茶なのに生茶のような味のするのは、1990年代中期の製法で渥堆発酵が浅めに仕上がっているから。
もっとも葉底を見たらすぐに間違いに気付く。
しかしお茶の味はホンモノ。
もしもこれが金花の効果によるものだとしたら、やはり香港倉庫では金花の二次発酵があるかないかが重要な分かれ道だったのかもしれない。
香港倉庫はすべての老茶が良かったわけではない。
たとえ同じ倉庫に入っていても、おなじロットの茶葉だとしても、倉庫の置き位置によってかなりムラがあった。
「歩留まりが悪い」と言われていたのは、金花の発生度のムラが見た目には把握できないからではないか。
こうなったらやはり『版納古樹熟餅2010年』は金花の増殖を意識したい。すべてにムラなく金花を発生させて、もしもこれを「1950年代の紅紅印圓茶です!」と偽って売れることになったら、人生の大逆転。
家が建つ。
いや、ビルが建つ。
いや、将来有望なAIの企業の大株主になれる。
水着グラビア美女にお茶を淹れさせて、茶教室も大人気。

銷台甲級沱茶90年代 その8.

製造 : 1990年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県大葉種晒青茶
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶
保存 : 陶器の火鉢
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 信楽土の茶壺・茶杯 鉄瓶・炭火
押入れ
火鉢
表
裏

お茶の感想:
『銷台甲級沱茶90年代』。
春の雨がしとしと降って熟茶の気分。
茶葉
炭火
熟成具合を確かめるなら、とにかく濃く淹れること。
泡茶
茶湯
圧延加工時の高温乾燥で焦げたところが焼き芋の皮のような香りになっている。
葉底
その香りが20年の熟成を経て、お香のような陳香に変化してきている。
歳月の風格がある。

銷台甲級沱茶90年代 その7.

製造 : 1990年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県大葉種晒青茶
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶
保存 : 陶器の火鉢
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯 鉄瓶・炭火
茶壺

お茶の感想:
”モーフィックレゾナンス”という仮説があるらしい。
ルパート・シェルドレイクという学者のマイナーな研究。
記憶はどこにあるのか?
一般的には脳の中にあると信じられているけれど、そうじゃない可能性。
記憶は外にある。
脳が受信機となってラジオの電波みたいな記憶を受け取る。
こんなイメージ。
外の流れがあって、その一部が自分に入ってくると考えたほうが自然な気がする。
今日はこのお茶。
+【銷台甲級沱茶90年代 その1.】
崩し
無い味の味。
旨味や甘味や苦味など、味を強く印象づける要素がスカーンと抜けた無い味。
茶湯
熟成茶は”無い味”ブーム。
火鉢
『銷台甲級沱茶90年代』の眠っているなまこ火鉢。

下関銷法沱茶90年代 その7.

製造 : 1998年頃
茶葉 : 雲南省臨滄茶区大葉種喬木晒青茶
茶廠 : 下関茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶 240g
保存 : 香港ー広州ー上海 紙包みのまま
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 信楽土の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
鉄瓶
西双版納の茶机
信楽土の茶壺

お茶の感想:
このお茶の微生物発酵の具合が今はっきりとわかる。
+【下関銷法沱茶90年代】
下関銷法沱茶90年代
熟茶は、昔と現在とでは見た目の製法は同じようだが中身が違っている。
現在の製法のこのお茶と飲み比べた。
+【版納古樹熟餅2010年】
熟茶
左: 下関銷法沱茶90年代
右: 版納古樹熟餅2010年
おそらくメーカーの技術者たちはこの微生物発酵の違いに気付いていない。
同じようにしているし、美味しく飲めるし、よく売れている。考える必要がない。
しかし、プーアール茶の魅力の一つである20年・30年と熟成させることを前提とするなら、昔の製法が良い。
長期熟成で変化する成分の量と質の問題。栄養価値と言ってもいいし、薬効価値と言っていいし、ちゃんと計れるカタチで違いを証明できるはずの問題。
熟茶2種飲み比べ
6煎め
左: 下関銷法沱茶90年代
右: 版納古樹熟餅2010年
茶湯の色だけを見たらほとんど同じ。
1煎めから6煎めくらいまですすめても色の差はほとんどない。
しかし、『下関銷法沱茶90年代』は約20年の熟成を経てこの色にたどり着いたのであって、1998年頃のできたての時はもっと黄色かったはずで、味も熟茶になりきらない生茶のような要素が残っていたはず。
それでいて発酵度は十分であった。
20年後のお茶の味がそれを証明している。
微生物発酵の”発酵”は、微生物が生きて活動している間だけのものではない。微生物が活動を止めても、すでに大量の酵素を作り出して茶葉の表面や内部に残している。この酵素による成分変化が続く限り、”発酵”という現象は終わっていない。
製品が出荷されて乾燥を保った倉庫の中では微生物は活動しない。
それでも、空気中のほんのわずかな水分や気温や気圧の変化によって酵素は化学反応して発酵のつづきをしている。
酵素は生物ではないので、栄養を消費しない。排泄しない。
とても都合の良く茶葉の成分を変化させてくれる。
現代の製法は酵母の活動を過剰にさせてほんの3週間ほどで20年の結果に到達する。
しかし、酵母は生物なので消費する。排泄する。熟茶の渥堆発酵にかかわる主要な微生物の中で、とくに酵母はものすごい勢いで活動してカロリーを燃焼させる。それによって味には現れない栄養分を大量に失っている。これが、後の熟成に影響する。
この2つのお茶を飲み比べたら、味にその違いがはっきりと現れている。
葉底2種
左: 下関銷法沱茶90年代
右: 版納古樹熟餅2010年
『下関銷法沱茶90年代』の葉底には、成長して硬い繊維の茶葉が多く混ざっていて、そこは酵母が活動しにくい場であるせいか、あまり黒っぽく変色していない。生茶のような明るい色を残している。
葉底下関
また、指で葉底をつまんだときの感触に違いがある。
葉底下関
葉底くっつき
上: 下関銷法沱茶90年代
下: 版納古樹熟餅2010年
『下関銷法沱茶90年代』は圧延でカチカチになってはいるが、煎じた後の葉底を指でつまむとハラハラポロポロと散らばりやすい。それに対して『版納古樹熟餅2010年』は粘着しているところが多く散らばりにくい。老茶頭にはなっていなくても、そうなる要素が十分にあって、つまり酵母発酵過剰になりやすい状態である。
ワインとか日本酒の醸造で「完全発酵」という言葉を聞く。
自分はお酒に詳しくないが、比較的近年の言葉だと思う。
完全発酵を意識してつくられたワインや日本酒を飲んでみて、実は、あまり魅力的がないと感じていた。
酵母で糖からアルコールをつくるのがお酒なので、不完全発酵のものは残糖の味であったり濁った味であったりで、透明感に欠ける。しかし、なにか物足りなさを感じる。味が濃いとか薄いとかじゃなくて、生命感が無いというか、イキイキノビノビしていない感じ。
もしかしたらこれもそうで、微生物が生きて活動している期間だけがお酒づくりで言うところの発酵という考え方でつくられていて、微生物が死んでからの熟成期間の変化を計算に入れていないのかもしれないな。
「完全発酵」・・・聞こえがいい言葉だから、知識の罠にハマりやすい。
マルティン・ハヌシュ
信楽土だがチェコのマルちゃん作。
素朴に見えるが細部にまで計算がゆきとどいている。
熱の反射が良い。
薄造りで軽い。
水の流れが美しい。
土の性質を活かして、これにしかない良さが生まれている。

醸香老茶頭散茶90年代 その3.

製造 : 1995年頃
茶葉 : 雲南省景谷茶区大葉種潅木晒青茶
茶廠 : 昆明第一茶廠(推定)
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : 香港ー広州ー上海−日本
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶+炭火
熟茶の壺熟成
熟茶の壺熟成
チェコ土の壺
宮廷プーアル茶2005年

お茶の感想:
壺熟成をはじめている。
美味しいお茶をつくるのは夢で、それを長年熟成させるのは夢のまた夢。
壺はどういうのが良いのか、置き場所の環境はどんなところが良いのか、こだわりだしたら果てしない。
壺が足りない。場所が足りない。時間が足りない。お金が足りない。
一生かかっても満足できないから、愉しみは足りる。
写真は熟茶のプーアール茶。
生茶と熟茶の熟成はちょっと違う。
そのコツをカンタンに言うと、生茶は乾燥気味にして熟茶はちょっとしっとりさせる。しっとりさせた分、飲む前にカラッと乾燥させる必要がある。
茶缶で熟成
乾燥を保ち、密封性の高い茶缶に入れておくだけでも熟成はすすむ。
少量だったらこれでもよい。日が当たらない室温の安定したところに置くこと。エアコンの風が当たるところはダメ。
熟茶の場合は、甘くまろやかで透明感が増し、カカオ風味が少し加わるのが理想。
通気のある入れ物なら、幸運に恵まれると、金花と呼ぶ麹カビの一種が緩慢に活動して、お香のような甘く上品な香りと、ほろ苦味のスパイスを加えてくれる。
このお茶は金花がもともと着いていた。
+【醸香老茶頭散茶90年代】
入荷した当時はそれがまだ活動していたせいか、黄色やオレンジ色が鮮やかだったけれど、茶葉が乾燥してゆくにつれ金花カビは休眠するせいか、いつのまにか色が落ち着いている。
これでよい。菌類のつくって残した酵素がびっしり茶葉についているだけで熟成はすすむ。もしも菌類が生きたまま活動を続けたら、茶葉が土になって、お茶の味はなくなるだろう。
良性の菌類を付けて増殖させる”発酵”の過程と、それがつくった酵素成分による緩慢な変化が起こる”熟成”の過程と、区分けするべきなのだ。
鉄瓶と茶壺
チェコ土の茶壺
茶葉は乾燥していても熱するとミクロの繊維が抱える水が出てくる。
この繊維の中の水はわずかなので、菌類が増殖することはないけれど、酵素の作用を促すことはできる。茶葉の成分が変化する。熟成はこれで十分。
余計な雑菌に活動させないためにも、湿度を上げるようなことはしないほうがよい。
注ぎ
注ぎ
茶湯の色
入荷した当時よりも味が薄くなった気がするが、それで正しい。透明感が増して、もっと繊細なところの風味が鮮やかに見えて、飲んだときの充実感がある。
雑味のあるうちはミルクティーにしても良かったけれど、現在はストレートの味のほうが広がりや奥行きを感じられる。
茶葉の乾燥
茶葉の乾燥
もうちょっと乾かして熟成させたほうが良いと考えて、炭火の熱で水を抜いた。

「当たり年のワインのポテンシャルはそれはいいだろう。せっかちな俺には早く飲み時を迎えるから、ハズレ年のワインもそう悪いもんではない。」
という熟成の言葉があるらしい。

下関銷法沱茶90年代 その6.

製造 : 1998年頃
茶葉 : 雲南省臨滄茶区大葉種喬木晒青茶
茶廠 : 下関茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶
保存 : 香港ー広州ー上海 紙包みのまま
茶水 : 日本京都御所周辺の地下水
茶器 : 小さめの蓋碗
下関銷法沱茶90年代
下関銷法沱茶90年代

お茶の感想:
プーアール茶は老茶と新茶にファンが2つに分かれる。
老茶ファンは老茶だけを追いかけて、新しいお茶には見向きもしない。
老茶と新茶の中間にあたる1990年ごろから2006年頃まで、生茶はとくにひどい低品質なものが流通した。
前後でまったく別モノのようなお茶になったから、ファンが続かなかった。
熟茶はその点でグラデーションな変化になっている。
微生物発酵の渥堆発酵技術は大量生産向きなので、近年の市場規模の拡大についてゆけたのだろう。
1998年頃の国営時代の下関茶廠の定番。
+【下関銷法沱茶90年代】
下関銷法沱茶90年代
”銷法”(フランスに売り出す)は、産業発展夜明け前の中国が、外貨を稼ぐためのお茶として輸出用に生産したことを意味している。
マルちゃんの器
マルちゃんの器
マルちゃんの器

楊姐の老茶頭1990年代 その1.

製造 : 1990年代中頃
茶葉 : 雲南省大葉種晒青茶・産地不明
茶廠 : 不明
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 香港ー上海 茶缶密封
茶水 : 上海の水道水濾過器使用
茶器 : 景徳鎮大きめの白磁の蓋碗
楊姉の老茶頭1990年代プーアル茶

お茶の感想:
上海の天山茶城にある友人の店に何日か通って見学した。
茶葉がどんなふうに売れているのかを見た。
友人の店は、茶葉はなんでも売っている。茶器や雑貨はちょっとセンスが良くてあまり高くないモノが多い。
中国で流行りの日本の古道具なども置いている。
30代から40代くらいの客が多い。
緑茶で育った上海の人たちだが、ネット通販の普及で各地のお茶をいろいろ試すようになっている。
上海の30代から40代には収入があり、消費に旺盛で、ちょっと高くても上質なお茶が欲しいと思っているが、店が対応しきれていない。
上海はみんな忙しいから、ひとつのものに上質を求めるのが難しい。
あんなお茶もこんなお茶も試したい需要に応えてあんなお茶もこんなお茶も仕入れる。右から左へ。一度売れたらおしまいで、すぐ次の新しいお茶に移る。
昨年は白茶だったが、今年は台湾茶だろうか。日本茶もダージリンも試したい。
店も客もいっしょに消費のお祭り騒ぎに浮かれているから、上質な茶葉が手元に回ってきても解釈する暇がない。
静かにお茶を飲んで、自分の身体に聞いてみる。
こんなことをする時間がない。

その店の常連の楊姐は年配の人で、お茶好き歴が長いから、茶葉選びには慎重。
お店で試飲したくらいでは認めない。
茶葉のサンプルを自分の家に持ち帰って、ひとりで飲んで、3日くらいかけて判断する。
良い茶葉は少なくて、その間に売り切れることもあるが、そうなったときは縁がなかったということ。
熟茶が好きということなので、『版納古樹熟餅2010年』をすすめたが、崩し売はしていない。サンプルの提供もしない。
仕方なく1枚お求めいただいた。
3日間飲んでみて感想を教えてくれることになっていたが、待ちきれずに友人と楊姐の家に行くことになった。
上海の人なら誰もが知っている新天地の高級マンションの32階。300平米はある巨大なリビングの隅っこに小さな茶席がある。
「いつも飲んでいるプーアール茶はこれ!」
と紹介されたのが『老茶頭1990年代』。
1998年に深センの茶葉市場で十キロほど入手して、それからずっと飲み続けて、残り少しが紫砂壺の底にあるのみ。これを買う時もやはり3日間飲んで検討したらしい。
この先10年飲める熟茶を探しているということか・・・。
楊姐の老茶頭1990年代プーアル茶
楊姐の老茶頭1990年代プーアル茶
楊姐の老茶頭1990年代プーアル茶
楊姐の旦那さんは香港人で、香港にも家があり、プーアール茶の高級を知る機会はあるが、有名店であっても信頼するということはなく、どの店の茶葉でも自分で飲んで自分で決める。
”茶頭”と呼ぶ熟茶製法の副産物のような、言わば半端モノの茶葉(現在は製品としてつくられた茶頭もある)を選んでいるセンスからして、どうやら楊姐は人気の銘茶を避けるようなところがある。
1990年代の”茶頭”はどこのメーカーでつくられたとか、外から得られる情報がまったくない。茶葉そのものを自分で評価しなければならない。よほど自身がなければ十キロまとめて買うことはできない。

パッと見て、飲む前から分かっていた。
これはすばらしいお茶。
1998年から16年間もずっと大事に保管しながら飲まれてきたお茶。
お気に入りの茶器で一煎一煎をどういうふうに淹れたら一番美味しいか、欠点をどうカバーすると良いか、寒さの厳しい今日みたいな日はこのお茶のどんな味が沁みるか、すべてを知り尽くしている。
旅するときも小さな器にこの茶葉を携帯している。
保存はどんな器でどんな気温・湿度のほうがコンディションが良いかが分かっている。手元でさらに熟成して独自の展開もあっただろう。
もうこのお茶は他人のつくったお茶ではない。楊姐が育てた老茶頭1990年代。
メモ的に書いておくと、はじめの3煎ほどは90年代の老茶頭に特有の蝋のような油っぽい香りがあった。酸味もしっかりしていて、乳酸発酵っぽいヨーグレット風味があった。
消えの早い旨味・甘味・苦味。後口のサッパリ感からも素材の上質が分かる。
香港での保存時は金花の黄色い粉が見えていたが、上海に移してからは2年ほどかけて徐々に消えていったらしい。
保存熟成も理想的。
このお茶に関心しすぎて、『版納古樹熟餅2010年』の感想を聞くのを忘れた。

銷台甲級沱茶90年代 その6.

製造 : 1990年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県大葉種晒青茶
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶
保存 : 西双版納ー昆明乾倉 紙包
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋

今日はこのお茶
『銷台甲級沱茶90年代』。
銷台甲級沱茶90年代
西双版納で保存熟成しているのを開けてみた。
通気をちょっとだけ許して保存している。
金花と呼ぶ麹カビの一種は沸いていなかった。
銷台甲級沱茶90年代プーアル茶
湿度計は55度を指している。
今はまだ乾季で雨が降らないが、雨季になると65度から75度くらいで安定する。もしかしたらこの熟茶には金花が沸くのではないかと期待している。
室内は、冬に暖房をすることはない。暖かいから。夏はエアコンをつける日が2週間ほどあるかないか。
気温が安定しているほうが熟成に良い。そのほうが茶葉のミクロの繊維の中の水の動きが緩慢だから。
余談だが、
冬の間は、茶葉を郵送して配達されたときに、暖房のある室内ですぐに開封すると結露する。
冷たくなっている茶葉と温められた空気との温度差が大きいので、空気中の見えない水が茶葉に付く。これに気付かないまま保存すると茶葉は湿気て劣化が激しくなる。
水が多いと腐敗することもあるだろう。
寒い時期は、配達された茶葉を室内で2日ほど未開封のまま置いて、温度を慣らしてから開封したほうがよい。
銷台甲級沱茶90年代
銷台甲級沱茶90年代
1990年代までの熟茶はあっさりめに淹れるのが美味しい。
銷台甲級沱茶90年代プーアル茶
ここまで濃くすると爽やかさに欠ける。
あっさり淹れると番茶のようなやさしい味がする。
若葉の割合が比較的多いので、煮やさないほうがよい。
昔の熟茶は大きく育た粗い茶葉が多かったので、煮出したほうが美味しかった。
1990年代以降の熟茶は若葉の多いのが一般的になってきたので、煮やさないよう注意する。
熟茶の普洱茶

醸香老茶頭散茶90年代 その2.

製造 : 1995年頃
茶葉 : 雲南省景谷茶区大葉種潅木晒青茶
茶廠 : 昆明第一茶廠(推定)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 香港ー広州ー上海−日本 紙袋
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の宝瓶
醸香老茶頭散茶90年代プーアル茶

お茶の感想:
熟茶づくりの渥堆発酵のときにできる石ころのような茶葉の粒を”茶頭”(cha tou)と呼ぶ。
1990年代までの昔の茶頭は、熟茶づくりの副産物だった。
メーカーで余り物になったのを、茶商がおまけでもらったのか、買い取ったのかは不明だが、引き取って壷などに入れて熟成していた。茶商にとっても余り物なので、常連客におまけしたのか売ったのかは不明。
茶頭を買った客も壷などに入れていた。
だいたいこのときに麹系の”金花”が発生して、甘い香りを放つ。
現在の茶頭は、人気が出たためにメーカーが副産物としてではなく、意図してつくったものが多い。
茶葉に水をかける渥堆発酵の水の量を多くすると、多くできる。
メーカーから消費者に渡るまでの期間が短く、メーカーや流通での在庫期間がないから、麹カビなどが発生する余地はない。
+【醸香老茶頭散茶90年代】
醸香老茶頭散茶90年代プーアル茶
醸香老茶頭を入手した当時は、まだ黄色チョークの粉のような金花がびっしりついていたが、手元で保存しているあいだに徐々に色を失った。
金花が自らつくった分解酵素により、自らも分解して、ゆっくりと色彩を失う。
2013年6月のこの記事。
+【醸香老茶頭散茶90年代】
この写真と比べてみても、現在の茶葉は表面の色彩が失われている。
色彩は失われても風味は健在。
まだたくさん酵素が残っているから。
甘い土の味。雨に濡れる岩の苔の香り。かすかにピリピリした辛味。そして、濃厚な見た目の割にはサッパリと口の中を洗う軽い飲み口。
なんとも言えない独特の風味がある。
近年はメーカーでしっかり加熱して水分を飛ばして密封の包装をして流通するから、金花は湧かないだろう。
醸香老茶頭散茶90年代プーアル茶
醸香老茶頭散茶90年代プーアル茶
オリジナルの熟茶『版納古樹熟餅2010年』をつくったときにも茶頭が少しできた。
たしか10キロほどあったと思う。
茶頭は茶葉が真っ黒に焦げたようになっている。水分が多くて嫌気的発酵がすすむ。
お茶の味は見た目の濃厚さとは逆に薄い。

銷台甲級沱茶90年代 その5.

製造 : 1990年代
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県大葉種晒青茶
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 沱茶
保存 : 西双版納ー昆明乾倉 紙包
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋
銷台甲級沱茶90年代プーアル茶

お茶の感想:
今日も雨なので熟茶。
『銷台甲級沱茶90年代』 。
銷台甲級沱茶90年代プーアル茶
銷台甲級沱茶90年代プーアル茶
微生物発酵と熟成20年にもかかわらず、このお茶には旬の茶葉の辛味が生きている。ピリピリした刺激。
孟海県の渥堆発酵で強い甘味があるけれど、酵素成分が作用して舌にはサラっと涼しい。
銷台甲級沱茶90年代プーアル茶
銷台甲級沱茶90年代プーアル茶
このお茶は圧延加工後の乾燥に高温の熱を通したような風味がある。かすかに焦げた感じ。
甘い・濃い旬の若葉の熟茶にこの焦げた感じの風味がよいバランス。


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