製造 : 2011年10月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹秋茶
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納紙包み+密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 大きめの蓋碗
お茶の感想:
「熟茶の葉底の正しい色は、黄金色から朱色の明るい色であり、黒くなったのは良い発酵ではなく炭化したダメな結果である。」
中国のお茶の雑誌だったと思うが、このような文章を見かけた。
この情報には嘘があると思う。
黒く変色するのは、炭化してダメになった茶葉だけではない。
たしかに黄金色から朱色の明るい色になるのもある。新芽・若葉は発酵しても明るい色を保つので、それらを篩分けしてつくられたお茶はそうなる。
ところが、大きく育った葉や茎は同じ発酵度であっても黒く変色しやすい。葉の成長段階によって内容成分が異なるので、発酵の結果も異なる。
栄養補給のためにお茶が欠かせない四川やチベットの高地の遊牧民は、大きく育った老葉や茎が多くて黒く変色したお茶を重宝している。四川の黒茶”康磚”はとくにそんな感じ。彼らにとっては新芽・若葉よりもそれが上等と言える。
老葉の熟茶は黒いが、それが炭化していたのだとしても、その成分が彼らの身体に必要かもしれないことを否定できないはず。
安易に入ってくる情報にはポジショントークが多すぎる。
品種も茶葉の色に関係している。
同じ製茶をしても白っぽい色になる品種もあれば、黒く変色する品種もある。
西双版納の古茶樹の茶葉には黒っぽく変色するものが多いと思うが、このことがおそらく1940年頃から1950年頃に西双版納の孟海県で大量につくられていた紅茶が市場から消えた原因のひとつであると推測する。
明るい色が正しい。
という情報が先に広まると、それが事実になって市場が形成される。
商売だから、業者は市場に普及した情報に合わせて売りやすいお茶をつくる。
明るい色になる産地の茶葉が選ばれるようになる。
あるいは品種改良される。
こうした流れは雑誌・テレビ・ネットが普及する以前からあったと思われるので、人の社会の自然現象かもしれないが、この現象を利用して商売上の有利な立場をつくる業者は後を絶たず、食べものや飲みものの知恵を失うことに歯止めがきかない。
今日はこのお茶。
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【紫・むらさき秋天紅茶2011年】
煙草香のある紅茶。
これが好きでリピートされるお客様もいらっしゃるけれど、万人ウケはしないと思う。
今回は南糯山の若い茶樹の紅茶と比べてみた。
紅茶はしっかり熱を通したいので、器を温めて、熱い湯でじっくり抽出する。
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『南糯山生態紅茶2013年』
左: 紫・秋天紅茶2011年
右: 南糯山生態紅茶2013年
南糯山の紅茶のほうが慣れ親しんだ紅茶の味がする。
身体に沁みついた記憶は更新できない。