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温州人第七批熟茶2018年 その1.

采茶 : 2018年10月
加工 : 2018年10月・11月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
7批熟茶

お茶の感想:
温州人の7批の熟茶。
6批と違うところは最後の乾燥に日数をかけなかったこと。
なぜそうなったかというと、「茶葉を移動させちゃダメだろ」と自分が言い出したからだろう。
たとえ同じ部屋の中の移動であっても、微生物にとっては環境が激変する。発酵のサイクルが途切れる。
涼干
理想は、同じポジションでゆっくり乾燥させること。人が触らないこと。
しかし、もうひとつ言い出した「通気が足りない」という問題もあって、箱の中の布で内張りをした竹籠の中に茶葉を置いておくことができなくなった。
出したからには変化を止めなければならない。すぐに乾燥させるしかない。
熱風乾燥の設備もなく、その勉強もまだ足りないので適正温度がわからない。なので晒干(天日干し)することになった。太陽光の低温ならあまり味に影響しないだろうという考え。
天気は良くてキレイに乾燥した・・・はずだったが、届いた茶葉はちょっと湿っていた。
自分の手元で続きの晒干をして、しっかり乾燥させた。この時点でちょっと黴臭いのを感じていた。
晒干の前に一応飲んでみた。
茶湯は明るいめ
葉底
いつものように茶壺で茶葉を温めるとアンモニア臭が出てきた。これまでの中で一番強い。
飲んでみると、茶湯にアンモニア臭は無いが生臭い感じがある。糠味は強いがカラスミ味は少ない。
あんがいスッキリしているのは、発酵がやや浅めに仕上がって生茶のような部分が残っているからだろう。
煎を重ねて湯の熱が通るほどに味は安定していった。
煎じた後の葉底にはやはり黴臭いところがある。
炙った効果を見るのにちょうど良いサンプルになりそう。
6批よりもしっかり熱を通してみる。
複雑な形状の茶葉に、しかもほぼ乾燥した状態で熱を通すことを考えて、今回はステンレスの鍋を使うことにした。金属の熱の伝わり方を利用して、下から周囲から取り囲むように熱が伝えられると考えた。
底にはアルミの皿を裏返しに敷いて二重にして、一番熱いところを茶葉から遠ざけた。上にはアルミの皿で落とし蓋をした。
ステンレスの鍋
茶葉を炙る
蓋をして保温
はじめは手漉き紙で茶葉を包んでいたが、裏返したり軽く混ぜたりしやすいように途中から薄手の布袋に変えた。布袋に入れるとコンパクトになって熱の伝わりが良い。
それを考えると、圧餅してから水分がまだあるうちに熱を伝えたほうがもっと効率が良いよな。一般的にメーカーはそうしている。
今後の課題とする。
布袋
布袋の底に当たるアルミの皿の表面は熱いときで100度弱くらい。非接触温度計を日本に置いてきたので茶葉そのものの温度がわからないが80度になるだろうか。
2時間炙った時点で布袋を裏返したときにアンモニア臭が強く出ていた。さらに2時間後もそれがあった。
アンモニア臭は茶葉が乾燥状態で熱が入ったときに出やすくて、蓋碗や茶壺に湯を注いだときは出にくい。
過去の熟茶に対してこの点を確かめていないので、良いのか悪いのかはっきりできない。
もしかしたら、”生”の状態の熟茶にはどれにも多少のアンモニア臭が隠れているかもしれない。
前回の6批をしっかり炙った後にはアンモニア臭は見つけられなくなったので、すでに製品となって流通している熟茶から見つけるのは難しいだろう。
それにしても、7批のアンモニア臭はしぶとい。
緑黴っぽい、いわゆる黴臭い匂いもある。
冬になって涼しくなってきたから、乾燥のときの気温が下がって、黒麹菌の活動が鈍って抗菌のガードが下がって、他の雑菌が侵食しやすくなる。実際に緑黴が発生した後なのかもしれない。
そういえば、緑黴が出たときにこの匂いがしていた。アンモニア臭も発生していた覚えがある。
+【見えない水の流れ 上海のお昼ご飯 208年2月10日】
6時間炙った後、8時間かけてゆっくり熱を下げたら、アンモニア臭も緑黴臭もなくなった。
いつものように茶壺で茶葉を温めた。
茶葉を温める
葉底
このときの香りは良い。焼いたパンのような甘い香りが出てきた。黴臭くはない。
茶湯の色は明るい。発酵度がやや浅い様子。
一煎め
気が進まないが飲んでみるとあんがいいける。
焼いたパンの甘い香りが口に入れた瞬間にフワッと広がる。
アンモニア臭は無い。緑黴臭はほんの少し。事前に知らなければ気が付かないかもしれない程度。
煮出す
いつものように濃く煮出してみた。
甘い美味しい味に隠れて砂を噛んだような味がする。緑黴味と自分が呼んでいるそのもの。
ここでギブアップした。
もう飲みたくない。
でも、この判断はあくまで個人の判断。
カビ味のする熟茶はけっこういろんなメーカーが平気で売っている。健康上の問題はないのかもしれない。
葉底
熟茶が美味しいかどうかの判定は個人の感性に任される。
熟茶が安全かどうかの判定は、実はこれも多くの部分が個人の感性に任される。
成分検査でわかるのはほんの一部。
明らかに毒とされる農薬や重金属が規定量を超えていないかどうか。
微生物発酵の失敗による特定の成分が異常に増ていないかどうか。
そのくらい。
異常値は検出されないのに、不味いだけでなく、お腹を壊す熟茶があるかもしれない。たぶんある。
何度も話しているが、例えばカフェインの含有量は生茶と熟茶と変わらないはずなのに、熟茶にはカフェインの効果が少ない。別の成分がカフェインに蓋をしているから。
その逆に、ある成分とある成分がつながって毒を成すケースもあるかもしれない。
毒とわかっている成分が単独で作用するとは限らない。
毒が毒になるとは限らない。クスリとして作用することもある。
検出した成分だけから熟茶の質の良し悪しは判定できない。まだ知られていないことが多すぎる。
乳酸菌らしき
得体の知れないきのこ
微生物発酵が複雑な生態環境の森であるように、人のお腹の中にも森がある。
経験を積むしかない。
子供の頃に、藁に包まれた納豆があったのを覚えている。開けると大豆の表面に白いツブツブやらアンモニア臭やら危険そうなサインがあるが、これは安全だと学んでいた。美味しく食べていた。むしろアンモニア臭を出さないようにメーカーがヘンな防腐剤を入れているほうが怖い。
納豆と熟茶は違う。
熟茶は熟茶での経験を積むしかない。

ひとりごと:
煙
炎
炭に悪いのが混じっていて煙が出た。
炭のフリした薪が混ざっている。炎が出ている。
部屋中に煙を充満させてやる。
煙の嫌いなカビたちはあっちへ行け!

温州人第六批熟茶2018年 その5.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
炙りと生の散茶
左: 圧餅+炙り
右: 生の散茶

お茶の感想:
念のため昨日のつづき。
炙ったのがほんとうに美味しくなっているのか飲み比べて確かめる。
アンモニア臭は完全に消えている。やはり炙った熱のあるうちだけ見つかるもの。
茶湯の色
左: 圧餅+炙り
右: 生の散茶
湯を注いだときに生の散茶は糠味が薫る。こうして比べると生臭く感じる。炙りにそれは無い。パンを焼いたような甘い香り。
炙りと生の散茶
問題にしていたカラスミ味が炙りのほうはかなり少ない。意識しないと見つけられないくらい。
口に入れた瞬間の甘さはむしろ炙りのほうに強く感じる。
苦味とのバランスもよく消えが早いので爽やか。ただ、昨日書いていた”菊花茶”を連想させる香りやミントの爽やかさはそれほどでもない。
こうして比べると生の散茶は、生臭くて、甘いけれどヘンな苦味もあって、キレの悪い後味で、美味しくない。
炙りのほうはかなり美味しいレベルの熟茶になっていると思う。
手前味噌だが、炙りの腕が良いのだな。
いや、熟茶の味を最後に決めるのは熱風乾燥、つまり焙煎の技術だということになる。
葉底
生の散茶にはアンモニア臭が無かった。
もしかしたら圧餅のせいかもしれない。
やはり熟茶の”生”の状態は敏感なのだ。圧餅の蒸気で湿った茶葉を自然乾燥で何日もかけてゆっくり乾かしていてはいけない。熱風乾燥で1日で乾かして2日目にゆっくり熱を下げて3日めに仕上がる。炙りの時間配分といっしょ。

ひとりごと:
そうこうしているうちに7批のサンプルが到着。
7批熟茶
ちゃんと乾燥できていないのでとりあえず晒干。
乾燥のための焙煎が熟茶の美味しさを左右するのだから、そこに差をつけるような仕事をしたほうがよいかもしれないな。

温州人第六批熟茶2018年 その4.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜孝の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
炭火
灰
餅茶のかけら
焙煎

お茶の感想:
渥堆発酵を終えたばかりの熟茶はまだたくさん水分を含んでいて、温州人の茶友は涼干(陰干し)だけで乾燥させているので、まだ熱を通していない”生”の状態。微生物のつくったいろんな酵素成分が生きていて、空気中のちょっとした水分や温度に反応して思わぬ変化がすすみやすい。なので、圧餅の蒸気の熱を通して安定させたのがこのサンプルの状態。”半生”と言えるかな。
これを炭火に灰をかぶせた柔らかい熱で炙った。
炙った時間は5時間。包んだ手漉き紙が変色しないくらいの低めの温度。その後の常温での涼干はまる一日かけた。
烏龍茶の焙煎のような香ばしい香りは出ない。むしろ香りが弱くなるような変化で、一応狙いの通りに炙ることができたと思う。
微生物発酵でできたある種のアミノ酸は焦げると臭いから、焦げない程度にしなければならない。
炙った後
茶葉は変色していない。もうちょっと黒くなると思ったが・・・。
メーカーで大量生産される熟茶は一般的に熱風乾燥させてある。
圧餅の前と、圧餅の後と。
熱風乾燥
圧餅前は、渥堆発酵後の茶葉を乾燥させるため。しっかり乾燥させないと圧餅する一枚ごとの計量が正確にできない。というのもあるが、近年のメーカーは生産効率を追求しているので2週間も3週間も待てない。2日で済ませるには熱を入れるしかない。
圧餅後は、これもまた生産効率を追求して乾燥室で熱風乾燥させている。もしも何トンもの茶葉を晒干(天日干し)するとしたら、サッカーグランドくらいのスペースと、何人もの作業員と、コストも労力もかかることになる。
熱風乾燥では70度ほどの温度で熱を通している。それがメーカーの熟茶の味を形成している。
今回の”炙り”はそれに近づけてみたつもりである。
もしかしたら、問題にしていたカラスミ味が消えるかもしれない。糠味は変化して爽やかになるかもしれない。
しかし、炙りは理想ではない。半生が理想。半生でちょうどの完成度にもってゆきたいのだが、それは今後の課題とする。
一煎め
葉底の香り
味は、ちょっと落ち着いて透明感が出てきたくらいで、そんなに変わっていない。
香りは弱くなったので糠味が気になることはない。一般的な熟茶に近づいた。
口感はとろみが減って舌触りも喉越しもドライになった。このほうが清潔感がある。
カラスミ味は、1煎めくらいから葉底にも茶湯にもある。嫌な感じはしないがあるにはある。減ってはいない。
孟海老師のこのお茶にだいぶん似てきた。
+【孟海老師3号熟茶2018年 その1.】
やはり孟海老師のは熱風乾燥しているのだろうな。
しかし、黒糖香はない。糖質の焦げからくるものと仮定して、もうちょっとしっかり熱を通してみるかな・・・。
ということで、再度炙ることにした。
今回はもうちょっとしっかり熱が入るように、アルミの皿を合わせて密封。
アルミの皿で熟茶を炙る
アルミの皿で炙る
2時間。途中で2度ほど裏返した。
もうそろそろかと蓋を開けてみたら、ほんのりパンの焼けたような匂い。
茶葉からアンモニア臭
ところが、茶葉に鼻を近づけるとアンモニア臭がある。ほんの微かだがツンとした刺激も感じ取れる。5分ほどして温度が下がるとアンモニア臭は消えたけれど、うーん、やっぱりダメかな・・・。
アンモニア臭=ダメ。と結論付けるのは慌て者すぎるけれど、上質な熟茶にコレはないだろ・・・。
涼干が待ちきれなくて淹れてみた。
葉底
一煎め
濃い茶湯
飲んでみたら意外と良い。
茶湯にはアンモニア臭はない。
糠味はもう完全に無い。カラスミ味だけ残っている。
甘味が減って酸味や苦味が増えて、でもこのバランスは良くて清潔感があってスッと喉を通る。
菊花茶のような香りとスースーするミントな爽快感が加わって、口の中での味の消えも良くなって、暑苦しい味が一転して涼しい味になりつつある。
『7581荷香茶磚97年』に似ている。
あいにく西双版納にサンプルを置いていないので飲み比べが出来ないが、ま、差不多だろう。
もうちょっと炙りを続けてみる。
再度炙り
アンモニア臭を飛ばすことができたら現地では飲めるお茶になるだろう。
販売はできないが、仲間内で飲むのなら問題ない。
ホッとした。
おそらくカラスミ味は炙っても消えないから、今後の9批以降の渥堆発酵に期待する。温州人は粘り強いからヤルだろ。
もう冬が来て微生物発酵の微生物からしたらちょっと寒いだろうから、次は来年の夏かな。

ひとりごと:
生茶の保存熟成に問題がある。
西双版納のお店のほとんどのお茶が湿気ている。
ものすごい量のお茶が西双版納の倉庫やマンションの一室で湿気てゴミになりつつある。
なんて問題視しているのは自分と一部の茶友だけで、実は湿気た味が熟成の味だとみんなは主張していて、相手にされない。
好みの違いだ!と片付けられる。
熟茶のカラスミ味やアンモニア臭も同じことかもしれない。
自分はアウトで彼らはセーフだろう。
だから自分はココに来て仕事をするポジションがある。
この構図がわかってきてからあまりうるさく言わなくなった。意地悪じゃないけれど、親切でもないかもな。

孟海老師3号熟茶2018年 その1.

采茶 : 2018年 不明
加工 : 2018年8月
茶葉 : 雲南省孟海県詳細不明
茶廠 : 孟海県の老師
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜孝の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
孟海老師3号熟茶2018年

お茶の感想:
温州人の茶友が竹籠での渥堆発酵を習った老師が孟海県にいる。
老師はふだんはメーカーの技術者として働いているが、自分でも少量の熟茶をつくって売っている。
そのお茶を飲む。
今年の8月にできたばかりの熟茶。
孟海老師の渥堆発酵は25キロだったかな。決まった量があるらしい。
メーカーの大規模な何トンという渥堆発酵からした25キロはごく少量だが、竹籠を使った小堆発酵からしたらそこそこの量。
茶頭
茶頭
いったん圧餅してから崩したサンプルだが、どう見ても茶頭がある。それに髪の毛が挟まっている。ま、よくあること。
竹籠の渥堆発酵で茶頭ができるということは、そんなに頻繁に撹拌していないということ。
注目したいのは、”糠味”と”カラスミ味”。
とくに悪印象のドブ水味を連想するようなカラスミ味に注目。温州人の熟茶はじっくり抽出して5煎め以降の葉底に出てくる。
蒸す
茶壺を鉄瓶の上に乗せて蒸して、蓋に結露する水滴と茶葉の匂いを嗅ぐ。
水滴は問題なし。糠味はちょっと味噌っぽい。バラの花のドライフラワーになったときのような爽やかな香りも交じる。
茶葉を熱する
茶葉に鼻を近づけると、一瞬だけアンモニアのツンとした刺激があったような気がして、もう一度鼻を近づけてみたが匂いはなくてツンとした刺激だけがある。
1煎めの色
茶湯の色
1煎めと2煎めを足した。
甘い。うまい。
カラスミ味がこの時点であるが、ちょっと違う。延長線上にドブ水を連想するような悪い印象ではない。
天日干しの棗っぽい香りと酸味がある。
茶湯の色は透明度が高い。出来たてでこのレベルはすばらしい。
色の出方がゆっくりで、温州人の熟茶のように1煎めからドバっと濃い色が出てくることはない。
口感がキレイ。飲んだ後の消えが良くて甘い濃い印象をサラッと流すので、もう一杯飲みたい気になる。
茶頭を保温ボトルに移してじっくり抽出しておいて、散茶のほうを飲んでみる。
保温ボトル
散茶
散茶のほうにも小さな粒状になった茶頭が存在していて、オレンジっぽい色をしている。
茶湯の色
やはり茶頭と同じ味。むしろもっと甘くてバランスが悪い。もっと味噌臭い。
茶湯の色は濁っている。
3煎めから真っ黒になるまで抽出してみた。
黒い
まだこのほうが美味しく飲める。この濃さで美味しいということは、やはり渋味・苦味が一般的な熟茶に比べてかなり弱いのだ。ヘンなバランス。これぞ茶頭の熟茶の味そのものである。
散茶にも茶頭の味がしているということは、竹籠の25キロすべてが茶頭味になっているということで、それなら『温州人第六批熟茶2018年』と似た結果だから、この味こそが竹籠を使った小堆発酵の特徴だと解釈するべきなのかな。
味噌っぽい風味を好む人も多いわけで、微生物発酵が悪い成分をつくっていなくて衛生的に問題なければこれでよいのかな。
葉底
老師の熟茶には5煎めくらいの葉底から出てくるカラスミ味は無い。
ただ、1煎めからのお茶の味にそれがまんべんなくある。悪い印象の味ではないから、好みの問題だろう。
葉底に緑色の残っているところもごく少なくて、全体的にキレイに変色している。
葉底
茶頭の葉底
茶頭を割って中のほうの葉底を見ても、均一な色でキレイな発酵ができている。さすが老師。
老師の熟茶を参考にしてつくったのなら、温州人の渥堆発酵はあと一歩のところまで来ているということか。

ひとりごと:
もしもこのお茶『孟海老師3号熟茶2018年』が茶頭味の中では高いレベルだとしたら、さらなる上の茶頭味を求めて渥堆発酵を試行錯誤するのはバカで、保存熟成の味の変化で差をつけるほうがカシコイのかもしれない。
保存熟成の経験から見て、味噌っぽい風味は数年で落ち着くだろうし、お香っぽい香りとかバラの花のドライフラワーの香りはもっとはっきりしてくるだろうし、メイラード反応(常温の焦げ)のカカオの風味も出てくるし、苦味はちょっと戻ってきて甘過ぎないバランスになるだろう。
でも嫌い。
はっきりわかったのは、自分は茶頭の味が好みじゃないということ。保温ボトルのお茶も飲まずに捨てたしな・・・。
ということは、竹籠を使っているかぎり好みの熟茶はできないことになる。

温州人第六批熟茶2018年 その3.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜孝の茶壺・グラスの茶杯・鉄瓶+炭火
6批熟茶

お茶の感想:
とりあえず試飲。
餅面に鼻を近づけるだけで酒饅頭に似た甘い香り。
酵母がつくったアルコール由来の香り。
温めるとさらに強く薫る。
茶葉を温める
市販されている熟茶の中には雑巾の生乾きのような匂いのもあるが、それはおそらく雑巾の生乾きと同じ雑菌が原因である。温州人の茶友のつくる熟茶にはそれは無い。
1煎めの茶湯の色は、前回の試飲のときに比べて透明度がちょっと高くなった。
一煎め
2煎・3煎くらいまでは美味しく飲める。
茶湯にも酒饅頭っぽい甘い香りがあって、奥の方にお香っぽい香りがある。
お茶の渋味は消えてまろやか。いや、消え過ぎていると思う。
このタイプの味は国営時代の昆明第一茶廠の品番7581にちょっと似ていて、孟海茶廠の味ではない。
現在はどこの熟茶づくりも孟海茶廠の製法が主流になっていて、われわれは初心者でとりあえず標準的な味を目指しているはずだから、この時点でなにかがおかしい。
4煎め
4煎を超えてから問題にしている”カラスミ味”が出てくる。味というか香り。この香りをものすごく悪い方向にもってゆくと、ドブっぽい匂いになるだろう。生活排水の流れるドブ水。チーズや臭豆腐など湿った発酵食品にはドブっぽくても健全なのがあるが、乾物である茶葉からこの匂いが出てきてはいけないと思う。
さて、この記事のつづき。
+【温州人第六批熟茶2018年 その2.】
新製法での熟茶づくりの技術的な失敗の原因を探る過程で、もっと根本的な問題に気付くことになったわけだが、いきなりその結論を話しても伝わらないと思う。
今回はその”気付き”のキッカケとなった技術的な失敗についてもうちょっと詳しい話をする。
この失敗は、2年前のちょうど今の時期に自分も経験している。
このへんの記事。
+【巴達曼邁熟茶2010年 その6.】  
このときはまだ失敗に気付いていない・・・・今読み返すと恥ずかしくて汗が出る。
布袋発酵
ちなみに、これらの茶葉はぜんぶ捨てた。
最近の『東莞人第一批熟茶2017年』の自分が圧餅した1キロ分も捨てた。
アパートの庭の緑が一部だけ特別に繁殖しているのはたぶんこのせいと思われる。
ダメな茶葉を手元に置いておくわけにはゆかない。良い茶葉に感染するかもしれないから。
緑の栄養になった茶葉
温州人の茶友の6批の熟茶は、発酵の状態がとても良いと途中経過をSNSで報告してくるくらいに自己評価の高いものだったが、できてみると茶頭と似た味になった。散茶なのに茶頭味になったのは微生物の呼吸困難が原因。
小部屋や木箱(温習人のは竹製)や布袋や竹籠の通気が工夫されたら問題が解決される・・・とは自分は思っていない。
茶頭は渥堆発酵の茶葉の山の底のほうで自然にできるもの。
茶頭をひとつもつくらないようにこまめに撹拌するのは、真面目なようで聞こえはよいが、実は良くない可能性がある。
自分が布袋で発酵させていたときも、茶葉が均等に発酵するのが良いと考えて、加水をこまめにしたり、保温に電気毛布をつかったり、そして茶葉の撹拌を1日2回も3回もしていた。茶葉同士がくっつく暇はないので、茶頭はひとつもできない。
50度
このやり方では、厚みのある茶葉の内側のほうの発酵が不十分になる。
温州人の4批の葉底にもその現象が現れていた。
+【温州人第四批熟茶2017年 その1.】
50度
自分の2年前の熟茶を淹れると、はじめの1煎から3煎めくらいまでの茶湯の色に赤味があって、その後の煎はだんだんと黄色く明るくなってゆくが、同じように茶葉の内側のほうが発酵不十分だったことがわかる。
黒麹菌は、イメージとしては木の根っこのような糸状の菌糸体で茶葉の内側に入り込んでゆくのだが、こまめに加水して常に茶葉の表面に豊富な水分のある状態では、わざわざ内側に入らなくてもよいから根っこが深いところにゆかないで表面を這う。
さらに茶葉の内側の水分が多すぎると、深いところでは息ができない。
では、どういう状態が良いのかと言うと、加水後に最初は茶葉の表面にあった水分がゆっくり浸透して内側に入って、表面が乾いてくること。内側に水分が残っているので、それを追いかけて菌糸体が深く潜る。
茶葉の表面が、湿って乾く・湿って乾く・湿って乾く・・・・を繰り返すのが理想。
茶葉に入り込んだ水分は自然乾燥ではなかなか抜けない。例えば、圧餅した後の陰干しで茶葉の真ん中の厚みのあるところの内側が乾燥するには1週間かかる。
なので、渥堆発酵の湿って乾くサイクルも1週間くらいかかるはずだ。
この1週間は触ってはいけないのだ。
もしも途中で茶葉を撹拌すると、乾燥を早めてしまうから。
古い倉庫
そういえば『版納古樹熟餅2010年』の渥堆発酵では、加水と撹拌を終えて山にした茶葉を、誰も触らないように倉庫に鍵をかけていた。ほぼ1週間誰も倉庫に入らない。
+ 【版納古樹熟餅2010年 その3】
1週間のうちに茶葉が乾きすぎたり温度が下がりすぎたりしないためには、茶葉の量がある程度たくさん必要になる。
それと、もうひとつ。
茶葉の持つ水分にムラがあったほうが良い。
渥堆発酵の底の方で水分が多すぎて茶頭になるところが一部残っていたら、茶頭が周囲の乾いてゆく茶葉に水分と熱を供給してくれる。水分をたくさん含むほど発熱で温度も高くなる。それが茶葉の山の底にあるのだから、湯たんぽみたいなカタチになる。
茶頭が嫌なら、渥堆発酵してから茶頭だけ別に分けたらよいのだから、すべてをまんべんなく発酵させる必要など無いのだ。
渥堆発酵
渥堆発酵
茶葉の均一な発酵=キレイな発酵。
このような勘違いは他にもある。
例えば、サーモスタットで自動的に電熱を調整して木箱の中でより適温・適湿を保つこと。
微生物発酵はある一定の温度でもっとも活発になるのだが、水分の量と発熱が関係していて、乾くと冷えてくる。
なので加水したり加湿したりするのだが、これも微生物と茶葉のなるがままに放っておいたほうがよいのだ。温度が高いときは高いときなり、低いときは低いときなりにそれぞれの発酵が営まれている。
さらに、茶友たちは雑菌を殺す目的で殺菌灯を使いだした。
雑菌を殺すつもりで良性の菌類を殺すかもしれないし、雑菌と良性の菌類の仲良い関係を壊すかもしれないし、殺菌灯に耐性をもつ変な菌が発生するかもしれないし。
管理するつもりで管理不能に陥っている。
森の木を切ってから、茶葉の害虫対策に殺虫剤を撒くようなものだ。

ひとりごと:
微生物発酵で特定の成分を製造するのが目的ではない。医薬品やサプリメントや工業薬品をつくるのが目的ではない。発酵食品は、自然のままでカンペキな生態バランスを取り入れるもの。里山と人間の関係のように絶妙なバランスで、手を加えるべきところと加えてはいけないところとがある。

温州人第六批熟茶2018年 その2.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : 雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 散茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
温州人6批熟茶

お茶の感想:
温州人の茶友の6批(第6作目)の熟茶。
前回の記事から1ヶ月経った。
+【温州人第六批熟茶2018年 その1.】
生産現場のミャンマーでは微生物発酵のための最後の加水を終えて、自然乾燥させて、熟茶のナマ(生)の散茶として完成している。そのサンプルが少し西双版納に送られてきた。
ナマというのはまだ火入れしていない状態で成分変化が不安定だから、圧餅加工の蒸気の熱で安定させた。蒸し時間は9分で自分基準の生茶と同じ。なので熟茶にしては短め。
晒干(天日干し)1日。涼干(陰干し)10日。
温州人6批熟茶
圧餅の成形には失敗しているが、味への悪影響はないだろう。
これで一応市販されている熟茶と同じ状態になった。
温州人は過去一番良い出来だと評価していたので、自分も期待したけれど、圧餅の蒸気で温まったときにアルコール由来の糠味が強くて、ダメかもしれないと予感した。
試飲
左: 熟茶のナマの散茶
右: 圧餅後
念のために散茶と圧餅のを飲み比べてみたが、大差はない。
これまで飲んだ中でもっとも甘い熟茶かもしれない。
味に悪いところはなく、口感には清潔感がある。
しかし、”麹味”もあれば”カラスミ味”もある。
温州人の熟茶の4批・5批と比べても、もっとも”麹味”と”カラスミ味”が強い。
市販されているメーカー産の熟茶にもこういうのはある。
飲んだことのある味だな・・・と記憶をたどってみた。
+【老茶頭プーアル茶磚06年】
+【醸香老茶頭散茶90年代】
いずれも茶頭の熟茶。
「醸香」は無名だったから仕入れたときに自分が名付けたのだけれど、名前のとおりで酒粕っぽさがあった。アルコール由来の”麹味”に似ている。
オレンジっぽい茶葉
オレンジっぽい色も『醸香老茶頭散茶90年代』に似ている。
一煎め
二煎め
茶壺で淹れてじっくり飲んでみた。
3煎めくらいまで濁る。
サラッと薄めに淹れると果物の梨みたいな感じ。
濃く淹れると”麹味”と”カラスミ味”が出てくる。
麹味は、どんな熟茶にも多かれ少なかれあるもの。
このお茶の麹味はどちらかというと好感が持てる。麹味にも良いのと悪いのがある。美人とブスがある。
温習人はアルコール由来のものは揮発するから、保存熟成の過程で消えると言っている。実際に1年間保存した4批には無くなっていたが、できたてのときは有ったらしい。無くなるのではなくて変化するというほうが正しいだろう。変化して美しい香りになるのなら、むしろ意識して麹味の出るようにつくったほうがよい。
葉底
葉底に緑色の発酵不十分なところが残っているのは、温州人の熟茶の4批・5批にもあった。
緑色のところは、長期保存のときにじわじわ酵素反応による熟成変化がすすむから、これでも良いのかな・・・。
この『温州人第六批熟茶2018年』はそこそこ美味しい熟茶にできている。
そう。問題はそこじゃないのだ。
問題は、茶頭と似たような味が出ているところ。
茶頭
『醸香老茶頭散茶90年代』の茶頭 2013年6月撮影
われわれが試みた新製法の渥堆発酵の茶葉は、大きな木箱の中に囲ったり、布や竹籠で包んだり、サーモスタットで温度・湿度を自動管理したり、こまめに加水を調整したり、茶葉を撹拌したり。メーカーの一般的な渥堆発酵よりもずっと人工的にコントロールしている・・・・はずだ。
茶頭は、大量の茶葉を渥堆発酵させたときにできる。
渥堆発酵
茶葉の山の底の方は水の逃げ場がなくて、茶葉が余計に水を含んで、茶葉と茶葉がくっついて塊になって、黒麹などの好気性細菌が息苦しい状態になって、息苦しいのが平気な酵母が水に溶け出した茶葉の成分を分解して、糖質をアルコールにして、その副産物として麹味につながる香りの成分ができる。
渥堆発酵の後半のゆっくり茶葉を自然乾燥させる段階で、茶頭の内部に残った水を求めて麹菌類がまた戻ってくるけれど、根っこみたいな菌糸が茶頭の表面から中心部まで掘りすすんで新たな発酵のサイクルが始まる前に乾燥してしまうから、息苦しい酸欠だったときにできた風味が残って定着する。だから茶頭は偏った風味になる。
製品にするときは、わざわざ篩にかけて散茶と茶頭を分けてから固形茶に加工する。なので茶頭は単独で製品化されることがほとんど。
渥堆発酵6批
『温州人第六批熟茶2018年』2018年10月温州人撮影
新製法は渥堆発酵をより人工的にコントロールして、茶頭をひとつもつくらないように工夫していながら、できた散茶が茶頭と同じ味の熟茶になったのはどういうこと?
ここが問題。
つまり、コントロールできていないということ。
4批・5批に比べて6批に”麹味”や”カラスミ味”、つまり茶頭の味がより濃く出た原因は、茶葉の量が多かったから。それまではせいぜい20キロ以内だったのが6批から急に100キロに増量している。
茶葉が多いほど活動する微生物の人口も多くて、その分大量に酸素が消費されて二酸化炭素が吐き出される。微生物発酵の小部屋や木箱の通気が悪くて酸欠になっていたのだろう。
加水した水の量が多すぎて酸欠になったのが茶頭で、通気が悪くて酸欠になっていたのが6批の熟茶ということ。
渥堆発酵の発熱
渥堆発酵6批
微生物の中には酵母や乳酸菌のように息苦しいのが平気なのがいて、そのときはそれなりの仕事をして結果を出すから、衛生的に問題さえなければ、これもお茶の味の個性と解釈できる。
偶然ではあるけれど、この6批はそこそこ美味しい。
このまま技術を高めて7批・8批・9批・・・と経験を重ねてゆくと、もっと意図した風味に持ってゆけるだろう。
では、なにが不満で「このやり方はダメ」と否定して根本からやり方を変えたくなったのか?
茶友たちからひとり離れてでも違うやり方を模索したくなったのか。
微生物発酵に対する自分の勘違いとはなにか。
つづきの話は別の記事にバトンタッチする。

ひとりごと:
他人がわかるように話すのはカンタンじゃないな。
自分が見たり経験したりして辿ってきた思考の過程を、それと同じ道を辿って話をするしかなさそう。
真理を追求するフリをして商売するのが目的なら、他人にわかりやすいように事実を曲げてしまうだろう。
広告というのはそのへん巧妙で、発信側が事実を曲げたのではなくて、視聴者側の無知を利用して誤解をうまく誘導している。
学生時代に広告の仕事がカッコよく見えて憧れたことがあったけれど、今は軽蔑している。

刮風紫叶青餅2018年 その1.

製造 : 2018年4月28日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶王樹
茶廠 : 農家と北京人の茶友
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納 紙包+竹皮包
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮白磁の茶杯・鉄瓶・炭火
手の茶葉
茶壺に茶葉

お茶の感想:
北京人の茶友のお茶。
2018年春の刮風寨の茶王樹の古樹でつくった生茶。
この記事の後半に登場している。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印 その1.】
それから半年経っている。
圧餅したての「変な味」と言っていたのは今はもうない。
それを確かめるのではなくて、茶王樹の品種特性を確かめる。
今年の秋につくったオリジナルの紅茶に似ているかもしれないから。
+【刮風秋水紅餅2018年】
茎がひょろっと長いところや、葉が細長くて揉捻で縦にねじれているところや、そしてなんとなく色がヘンなところ。紫っぽいので北京人の茶友に電話して聞いたら、やはり鮮葉のときにそうだったらしい。
茶壺と鉄瓶
一煎め
茶湯の色
このタイプのお茶にはやや酸味があるけれど、このお茶は甘めのグレープフルーツみたいな味。バランス良ければすべてよし。
葉底
茶湯の色2
茶葉の色も茶湯の色も、うっすら紫が入っているような感じ。
濃いめに煮出すとわかりやすい。
このような茎の長いカタチの茶葉は、沸騰させない温度でじっくり抽出することで甘味が増して美味しい。
煮出す
茶湯の色5煎め
葉底
紫っぽい茶葉にもいろいろあって、オレンジっぽいのが混ざるのや、やや紺色っぽく毒々しいやつや、緑と完全に混ざり合って暗い緑色のやつなど。これは緑と混ざったやつかもしれない。
参考の写真ページ
+【易武山 品種のオアシス】
葉底の茎
新芽のは底
葉底の大きな葉
4月28日の采茶なので、刮風寨にしてもちょっと遅めの春だが、葉底は小さな若葉だけでなく大きく開いた茶葉も柔らかくて指でカンタンにすり潰すことができる。旬を保っている。采茶のタイミングがよい。製茶もよい。
今年の春に2キロだけのお茶。

ひとりごと:
このお茶なら仕入れてもよいけれど、2キロしかない宝物に値をつけさせるのだから、すごいことになるな。

蛮磚古樹青餅2018年 その1.

製造 : 2014年04月10日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明山曼庄国有林古樹
茶廠 : 農家+孟海の工房+北京人の茶友
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 紫砂の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
餅面表
餅面裏

お茶の感想:
なかなかいい茶葉。
いい茶葉とすぐにわかるのは”蛮磚”(曼庄)という茶山が自分のホームグラウンドにしている漫撒山からそんなに遠くなくて、品種特性が似ているからだろう。見た目が、漫撒山の刮風寨や弯弓に古来からの大葉種と同じ系統のやつ。
蛮磚山は西双版納の旧六大茶山のひとつで、象明という地域に属している。象明は”倚邦山”や”革登山”や”曼松”の香り高い小葉種や中葉種が有名だけれど、地理的には漫撒山からそんなに遠くない。
ものすごく簡略化した地形でこの2つの地域を見ると、象明と漫撒山(易武)には南北縦に山脈があり、その間を川が流れて大きな谷を形成して、2つの山脈を分けている。
餅面裏
(その川。奥の方にダイ族の村の古い瓦屋根が見える。)
漫撒山の高いところから大きな谷を見下ろして、向こうに見えるのが蛮磚山や倚邦山になる。
この記事にスケール感がわかりやすい写真がある。
+【革登単樹秋天散茶2014年 その1.】
北京人の茶友は2015年から蛮磚に腰を下ろしてお茶をつくっている。
といっても、彼は商売人なので自分の手を動かさない。太っているから身体の動きが悪い。農家がつくるのを側で見るだけ。圧餅も工房の職人の作業を見るだけ。オリジナルな印刷の包装紙に包んでオリジナルなお茶が出来上がる。
小さなお店のオリジナルはだいだいそうなのだけれど。
ま、他人の商売には口を出さない。
「ただ、このやり方ではお茶の勉強はできないぜ!農家のつくるのを側で見ていてもその仕事が良いのか悪いのかわからない。」
というのがわかっているから、ここへ持ってきて試飲させるのだよな。
茶葉
一煎め
1煎目から3煎目まで煮え味があった。
お茶をグツグツ煮たような野暮ったい味。
3煎めまで杯の底に黒い粉が残る。鉄鍋で茶葉が焦げた粉。
これは殺青でお茶を煎る鉄鍋を一回ごとに洗わないから出てくる。
北京人に聞いてみたら、3回に一度だけ洗って、洗うときは金タワシで鍋の表面を擦っているらしい。
メンテナンス方法が間違っている。
1回ごとに鉄鍋に軽く水を流して、どこの農家にもある竹箒のブラシで水といっしょに汚れを掃き取るだけでよい。表面の黒鉄の酸化皮膜を削り取らないようにするべき。
3煎め
9煎め
4煎めくらいから製茶の悪いところが流れ去って透明感が出てきた。
美味しいので9煎か10煎までじっくり飲んだ。
刮風寨の古茶樹にも負けない素質を感じるので、聞いてみたら、蛮磚の一般的な古茶樹ではなくて国有林の森の中のやつだった。村から30分車で走ってから山道を歩いて30分というから、刮風寨の森に比べたら規模は小さいが、原生林に囲まれた茶地らしい。
やはり森のお茶だから、新芽・若葉の成長と采茶の人員確保と天気とのタイミングがなかなか合わなくて、1日の采茶でできた晒青毛茶は2キロ。春はこの2キロがすべて。
葉底
葉底
北京人の持ってきたサンプルはこの他に2種ほどあったけれど、このお茶だけじっくり飲んで終わった。
いい茶葉に出会ったらこうなる。
いっぺんにいくつもお茶を飲むのは、どのお茶もそこそこの質ということ。かもしれない。

ひごりごと:
川の向こうに見えていた村。
ダイ族の村
ダイ族の村
ダイ族の村
2014年の秋に散歩した。
その後ここに行っていないけれど、瓦屋根はまだ残っているのかな。
魚とり
この日、その川で魚捕って食べたのだった。
今は少ししか獲れなくなったと聞いている。

老撾高幹古樹2018年・秋天 その1.

製造 : 2018年10月(采茶)
茶葉 : ラオス・ポンサーリー県・孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨付近
茶廠 : 瑶族の農家
工程 : 生茶
形状 : 散茶
保存 : 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶+炭火
ラオスの空
森
森の入口

お茶の感想:
刮風寨の山の裏はラオスで、ポンサーリー県になる。
刮風寨から続く山には瑶族が多く住んでいて、あちこちに村がある。
地元の瑶族たちは許可なしに親戚や友達を訪ねて行けるが、中国人といえども茶友たちはそういうわけにはゆかなくて、”辺民証”という許可書を取って国境を超える。
パスポートで超えられる大きな通関は限られていて、かなり遠回りすることになるが、辺民証で超えられる小さな通関はあちこちにあって、仕事で行き来する人たちには便利になっている。
刮風寨の春のお茶づくりが終わる頃に茶友たちがこのあたりを訪ねてきた。
目的は高幹の茶樹を探すこと。
といっても、彼らが森に直接入って探すなんてことはできない。道に迷ったら死ぬ。人づてに瑶族の村を訪ねて、そんな茶樹の群生する森はないか聞いてまわる。
茶樹上
茶樹下
高幹の茶樹はこんな感じ。
この写真のは中国側の刮風寨の茶坪の奥地。
単樹1号・単樹2号よりももっと背が高いが、ただ、あまり美味しくない。
+【刮風寨単樹1号2018年 その1.】
+【刮風寨単樹2号2018年 その1.】
この高幹の茶樹に会いにゆくために森の中のいくつもの尾根を超え谷川を渡ったが、銘茶は美人。地域の気候・山の地形・生態環境・土質、いくら良いとこに生まれ育ったお嬢さんでも、生まれながらの天性の素質のほうを評価される厳しい世界なのだ。
山道
川
鉈で密林を切り開かないと進めないところもある。毒蛇も毒虫も毒のトゲを持つ蔦もみんな密林の緑の召使いたちで、生きものが死んで足元の土になるのを望んでいる。彼らの純粋な殺意にはゾッとするものがある。
「ラオス側の森の中にいくらでも高幹の茶樹がある。」
と聞いているものの、黙っていて向こうからやって来るものではない。高幹の茶樹は収穫が難しくて少量で、商売にならないからだ。
刮風寨に近いラオス側の山でも甘いお茶ができる。なので産地偽装の茶葉の需要が大量にある。ほんの数キロではなくて数百キロの需要が農家にとってはうれしい仕事。なので多くの森が開拓されて小樹の農地になる。
小樹の茶樹
この写真は刮風寨の小樹の茶地。小樹といえど樹高は2メートルほどある。樹齢は20年弱。山の峰から中腹あたりまで原生林の緑で覆われていて、茶樹以外の農作物は無い。まさに理想の生態環境。こんなお茶は美味しいに決まっている。
山頂付近の森はいわば山の心臓であり血液の循環の役割を担っている。原生林が刈られて植林されたりすると心臓が止まる。栄養のめぐりの悪い山となる。
小樹の茶樹
この写真のような理想の環境が残っているのは偶然ではない。国有林を保護する国の活動と、刮風寨のお茶をブランド化して商売する業者と、経済活動に比較的熱心でない瑶族のおっとりした性質と、うまい具合に利害が噛み合ってこうなるわけで、山を超えてラオス側を見てきた茶友たちの話では、そうはうまくゆかないらしい。国の管理も茶商の目も届かないところだから、農家は短期的な利益を追求して原生林を刈りつくして見るも無残な農地が多いらしい。山の心臓が止まっているのだから、茶樹への栄養のめぐりも悪くて、数年でお茶の味は落ちるだろう。お茶の味が落ちるのが先か、流行で膨れ上がった需要が落ちるのが先か、どちらにしても短期的利益を追求するのが得策になるのは、産地偽装のお茶の宿命である。
そのようなわけでラオスの農家に高幹の茶樹から茶葉を採取してもらうことをお願いするには、取引条件の良い提案をするしかない。
瑶族の帽子
茶湯の色
泡茶
葉底
昨年にラオスの森の中で20本ほど群生している高幹の茶樹が見つかって、人の歩ける道をつくって森に入れるようにして、周囲の高い木々を伐採して草を刈って、今年の春から採取がはじまったお茶があった。
茶友がラオスの村を訪ねたときに製茶したての晒青毛茶(天日干し緑茶)が10キロほどあって、すぐに交渉した。2日後に刮風寨に運ばれてくるはずが、運搬途中で深センの茶商に横取りされた。もっと良い価格が提示されたのだろう。
情報が漏れている。
ラオスの農家と親戚関係の刮風寨の農家がスマホを使って微信(WeChat)で紹介してしまったのだ。
高幹の茶樹
(一番手前の白い幹が茶樹。刮風寨茶坪の奥地。)
幹
この秋にも数キロつくられたが、今回もこっちには回ってこなかった。
刮風寨に滞在中に少しだけ分けてくれたサンプルを飲んだ。それが上の写真。
栄養の充実っぷりが見てわかる葉底の緑色の濃さと茎の太さ。
少し家に持って帰ってきたので、なじみの茶器を使ってじっくり飲んでみる。
『老撾高幹古樹2018年・秋天』老撾とはラオスのこと。
ラオスの古樹茶
泡茶
古樹味はある。
古樹味とは、これと形容できる味ではなくて、あえていうと唾液みたいな味。腹ペコでごちそうを想像して出てくるヨダレの味。水よりも口に親和性があって、舌に溶けて、消化酵素がお腹を癒やす。
でも、このお茶はブスだった。不味い。嫌な苦味が舌に残る。
ラオスよりもミャンマー側の山に多いタイプのブス。茶文化のお茶ではなくて生活のお茶レベル。
葉底
高幹は、枝分かれが少なくスラッと上に伸びるように育った証だが、この理由が大事で、森の深いところで人知れずひっそり育ったか、農家が大事にして茶摘みや台刈りを自主規制したか、不味いので誰も見向きもしなかったか。
このお茶は誰も見向きしなかったやつだろう。
深センの老板が買ってくれてよかった。

ひとりごと:
口直しにこのお茶を飲んだ。
+【刮風秋水紅餅2018年 その1.】
秋水紅茶
圧餅後の乾燥4日目で、ほぼ完了。
カタチの崩れた余りモノの茶葉で180gに満たないから自分用にしているやつ。
泡茶
美人の唾液は甘い。
錯覚なんかじゃないだろ。物理的に証明されるときがくると思う。

温州人第五批熟茶2018年 その1.

采茶 : 2018年9月
加工 : 2018年9月・10月
茶葉 : タイ北部の古樹+雲南省臨滄市鎮康県果敢交界古樹
茶廠 : 農家+温州人
工程 : 熟茶
形状 : 餅茶
保存 : ミャンマー
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : チェコ土の茶壺・景徳鎮の茶杯・鉄瓶+炭火
晒干茶
餅面表
餅面裏
餅面拡大

お茶の感想:
温州人が持ってきた自作の熟茶のいくつかのサンプル茶葉の中で、微生物発酵がほぼ完成していているのは第五批の試作。
これを圧餅テストした。
原料の茶葉の7割はタイ北部の古樹のもので春のもの。これは”苦茶”と呼ばれていて、実際に苦いお茶。苦い成分が多いというのではなくてバランスが悪い。甘味・酸味・旨味などが少ないので苦味が際立つことになる。ただ、栄養は充実している様子なので微生物が好んでくれたら発酵は大丈夫だろう。
チェコ土の茶壺
茶葉を温めて乾かす
圧餅後、完全に乾くのには一週間かかるから待ちきれなくて茶壺に入れて温めて乾かす。
このとき『東莞人第一批熟茶2017年』にはかすかにアンモニア臭がしたが、この『温州人第五批熟茶2018年』はまったくしない。
乳酸菌っぽい香り。自分は子供の頃にお腹が弱くてビオフェルミンを飲んでいたが、その系統の整腸剤によくある香り。良い発酵ができた証拠じゃないかと思う。
一煎め
二煎め
八煎め
2杯3杯飲むと実際に腹がスーッと気持ちよくなる。
できたての熟茶はどれもそうだが、茶湯の口感がヌルっとしている。それが残らないのが上質。おそらく微生物のつくった様々な酵素が湯の中溶けて混ざって瞬間に分解されるのだろう。唾液の酵素もかかわっているかもしれない。口から蒸発するように消えて清潔感がある。
味は透明感あって甘い。苦茶を原料にしたとは思えないほど。
潤いのある喉ごし。圧餅の後、涼干・晒干の自然の熱でゆっくり乾燥。メーカーの熱風乾燥とは違う。たぶん熱風乾燥が市販の熟茶にありがちな喉をカラカラさせる”燥”の感覚につながる。
葉底
葉底拡大
葉底はまだ柔らかい。
この柔らかさは正常。できたてのときは微生物発酵の後期に活躍する枯草菌類による茶葉の分解がまだすすんでいない。
圧餅後も熟茶はまだ完成していない。
版納古樹熟餅2010年
葉底
上: 『版納古樹熟餅2010年』の葉底2010年7月撮影
下: 『版納古樹熟餅2010年』の葉底2018年9月撮影
何年もかけて茶葉を別モノにして栄養価を増してゆく。発酵の仕事は一時的なものではない。これを評価せずにできたての新しい熟茶を買い求めるなんてどうかしている。

ひとりごと:
微生物発酵後期に活躍する枯草菌類は熱に強いから、圧餅の蒸気で死んだりはしない。まだ生きている。
しかし、茶葉が乾燥した状態では増殖したり酵素を増産したりできないはずだ。
なので圧餅後の熟茶の茶葉の成分変化は、熟茶づくりの工程でできた大量の酵素によるものであり、後に増殖したり酵素を増産したりしたものではない・・・はず。というのが自分の主張だが、温州人は圧餅後の増殖や酵素の増産があると見ているらしい。
ここの意見が別れているが、もうすぐ解明できるだろう。


茶想

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