製造 : 2010年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納―上海 紙包み+紙の封筒
茶水 : 下鴨神社の地下水
茶器 : 小さめの蓋碗
お茶の感想:
中国大陸の中国茶の種類がバラエティーに富むのは、在来種の血統に多様性があり、各地域で大切にされてきたから。
品種が製茶方法を選ぶ。
製茶方法が品種を選ぶのではない。
品種の個性である茶葉の繊維構造や成分構成に合わせて製茶技術が選ばれる。
茶葉は昔から交易の産品として遠くへ運ばれていたので、消費者の都合に合わせてつくるよりも、消費者の都合の合うところへ運ばれて流通した。
消費者のために品種を改良するのではない。
図書館で見つけた本『品種改良の世界史・作物編』を読みながらそんなことを考えた。
このお茶『易武古樹青餅2010年』は、一枚一枚の風味がやや異なる。
その理由がだんだんはっきりしてきた。
易武山は歴史の古い茶山で、品種のバラエティーに富む。
実生(茶樹から種が落ちて育つ)なので、母樹とはちょっと違った性格の茶樹が育ち、世代交代するうちに差が開く。その上、易武山には高級茶づくりの歴史があり、300年以上も前に外地から持ち込まれた品種、つまり血統の違う品種も混生している。
参考ページ
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【易武山 品種のオアシス】
茶摘みは3月1日から4月10日まで40日間かけた。”春の旬”と言えるシーズンのはじめから終わりまでギリギリいっぱいが40日くらい。
新芽の出る時期が品種によって異なる。例えば”早生”・”中生”・”晩生”と3つに分けたとしたら、3つの味のお茶ができることになる。
悪いことではないが、お客様は混乱するかもしれない。同じ春に同じ製法で同じ人がつくった同じ名前のお茶なのに、味はちょっとずつ違う・・・。
よく混ぜて平均化させてから圧餅(圧延加工)する手はある。どのメーカーもそうしている。
しかし、混ぜるときに茶葉が崩れやすく、屑になるのを増やしたくないので、少量生産の古茶樹のお茶ではあまり厳密に混ぜない。つくった順番に袋詰めしてゆき、その袋を開けた順番に圧餅してゆく。
もしもひとつの味のお茶をつくりたければ、1本の茶樹からひとつのお茶をつくるしかない。
今年試みた”単樹”のお茶づくりは、より濃い血を求めた究極の製法と言える。
易武山はこの葉脈の中央脈がオレンジ色で、ちょっと藍色や紫色がかった茶葉は早生の品種。香りが強い。
西双版納は茶の原生地でもあり、お茶どころとしても古いゆえに、品種のバラエティーがある。
血統で言うと、メコン川を境にして東西に性質の大きく異るのがある。特定の地域で在来種と外来種がある。
しかし、プーアール茶の製法はどこの山でも同じ。
本来は東西で異なるお茶がつくられていたはずだが、市場の需要に合わせて製法が均質化された。
山ごとの品種の個性に合わせて、製茶技術が個別に発展してもよいのに、そうはならない。
それでもお茶の味は山ごとに個性がある。
神社の裏の小さな山の上の喫茶。