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茶教室・京都

祈享易武青餅2014年 その5.

製造 : 2014年04月02日
茶葉 : 雲南 省西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨
茶廠 : 上海廚華杯壷香貿易有限公司監製
工程 : 生茶のプーアール茶
形状 : 餅茶357gサイズ
保存 : 上海 紙包+竹皮+紙箱
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
たった3年ほどのこと。
西双版納の古茶樹を取り巻く市場の変化により、農家の堕落と、大規模な森林の消失と、古茶樹のお茶製品の質の低下と、それは自分の予想を超えて大幅に下振れした。
もしかして、この変化を先読み出来なかった自分が未熟なのでは?
冷静に考えるとそう。
中国の辺境地の農村における人々の行動パターンや、過去の歴史や、農産物の流行と衰退。そうなるであろうことは予測できるはず。
少なくとも『祈享易武青餅2014年』の老板は予測していた。
だから、お茶づくりから農家を排除した。
そのための仕組みづくりを着々としてきた。
この成功をきっかけに、同じ仕組みを取り入れる業者が出てくるだろう。
お茶づくりの現場は、自然のことやお茶づくりの技術がわかればよいというものではない。
人について勉強する必要がある。
地域によって人は異なる。
仕事は、協力してくれるのも邪魔をしてくれるのも人。
人間がいちばん怖い。
今日はこのお茶。
+【祈享易武青餅2014年】
作戦の立て直し。
茶商は知恵で負けたらアカン。

漫撒陰涼紅茶2015年 その1.

製造 : 2015年03月22日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山丁家老寨古茶樹
茶廠 : プーアール茶ドットコム
工程 : 紅茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
丁家老寨
晒青

お茶の感想:
山の天気が崩れた。
初日からその兆しはあった。
風向きが変わって、少し湿った暖かい空気が流れてきた。
雲が朝の空を覆って太陽を霞ませた。
明日から小雨になる。
天日干しに頼るお茶づくりなので、予定を変更して山からいったん戻ってきた。
それでも初日に茶摘みしたのお茶が満足できる仕上がりとなった。
漫撒陰涼紅茶2015年
今年のオリジナルのお茶づくりは、茶摘みから製茶から圧延加工からお客様に飲んでいただくところまで、すべての工程をたどる。
眼を離さない。手を離さない。
それでゆこうと思う。
お茶づくりのすべてを知りたい。
一日一日、一回一回、微妙に異なる原因と結果の一つ一つを確かめたい。
『漫撒陰涼紅茶2015年』(後に圧餅する)
2015年の春2番めのオリジナルのお茶。
丁家老寨
丁家老寨
丁家老寨の山の尾根の森林の斜面に10本ほどの古茶樹が群生している。品種特性が似ており、いつか分からない昔(少なくとも200年以上)に同じ母樹の種から生まれた兄弟のような茶樹だと思われる。1990年頃に一度台刈りされて、この25年くらいでまた枝を伸ばしている。
茶摘み
この朝摘みだけを、太陽萎凋して、手工揉捻して、布袋軽発酵して、晒干してきた。
無農薬・無肥料。自然栽培の古茶樹のお茶ブームで、丁家老寨の森林はものすごい勢いで伐採されて新しく茶樹の苗が植えられる。この山の独特のお茶の風味が損なわれるのではないかと心配している。
漫撒無聞紅茶2015年
お茶の味にはまだ現れていないかもしれないが、かつての深い森林のイメージはなくなった。
歩いて歩いて、森林の影に育つ数本の古茶樹を丹念に探して、農家と交渉して、ほんの少しをかき集める。
丁家老寨
このやり方では1日につくれるのはほんの数キロ。今回は2キロ。180gサイズの餅茶にしたら11枚にしかならない。
当然高価になり、経営的にも無理があるけれど、とにかくこれでやってみる。
「自然栽培だったらよいでしょ」、「古樹だったらよいでしょ」、「手作業だったらよいでしょ」、そんな投げやりな態度でいっぺんに何十キロもつくられる荒っぽいお茶づくりにNO!と言う。
残念なことに、この茶葉を採取した斜面にある森林も、来年には新しい農地を確保するために伐採が始まる。
丁家老寨
森林の伐採
森林の伐採
この写真はすでに森林が伐採されて新しい農地となったところ。
そしてまた別の森林を探して、山を歩いて歩いて・・・。
しばらくこの繰り返しになるのだろうか。
経済のチカラはすごい。何百年もかけて育ってきた農家の知恵が崩壊する。
漫撒無聞紅茶2015年
漫撒無聞紅茶2015年
漫撒無聞紅茶2015年
紅茶づくりは疲れる。
渾身の手作業の揉捻1時間半。
揉捻
痺れる手足。心地よい疲れ。
この3日間の雨を避けてまた山へ行く。
山へ行くこと。茶葉に触れること。

版納古樹熟餅2010年 その26.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 紙包み+竹皮
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター 
茶器 : グラスポット350cc
版納古樹熟餅2010年プーアル茶

お茶の感想:
前回上海を訪ねたときに、
このお茶を友人の小売店で紹介した。
+【版納古樹熟餅2010年】
そのときのお客様から後日友人に問い合わせがあった。
「店で飲んだのと味が違う」
こういう話だった。
「お茶好きの集まる茶会で高級な熟茶を出したくて、店で飲んだ時に梅子香があったこのお茶が珍しいので求めたが、茶会で淹れたら味がゆるくて不評だった。」
詳細を友人に聞いてもらうと、紫砂の大きめの茶壺を使ったらしい。もちろん水も異なる。
ちなみに店で淹れたときは白磁の蓋碗だった。
茶器も水も異なればもちろん茶の味は異なる。
しかし、今回の場合は茶葉の性質を理解できていなかったところに原因があるとみた。
小売店の友人もそこに気付いていなかった。長年茶を売る仕事をしていながら気付かないワケがないと考えた自分のほうが間違いだった。
熟茶はじっくり抽出したほうが美味しくなる。
それは一般的な熟茶の製法によるもので、常識となっている。
版納古樹熟餅2010年プーアル茶
このブログでもグラスポットで煮出すような淹れ方をよくしているが、実はこのお茶『版納古樹熟餅2010年』について言えば、このお茶ならではの個性を引き出しにくい淹れ方である。
それでもグラスポットを使うなら、湯を減らして、一煎一煎を茶杯に注ぎ切るようにすると良い。
版納古樹熟餅2010年プーアル茶
高級になる生茶をつくるに値する新芽・若葉。産地違いや季節違いのブレンドもしていない純料の茶葉。熱に敏感なつくりになっている。
店で紹介した時は蓋碗でサッと湯を切る淹れ方をしていた。
高温の湯で淹れるのは基本だが、抽出時間を短めにするのがコツ。煮出さないこと。
版納古樹熟餅2010年プーアル茶
新芽・若葉の熟茶は色の出るのが早く、とくに2煎め3煎めに気をつけないとブワッ―といっぺんに濃く出てしまう。それでも美味しく飲めるが、もったいないことになる。
湯の色は透明感を保ち、ちょっと薄いかなというくらいで十分。
その中に新芽・若葉ならではの茶気・香気・水質を感じ取れるだろう。味が薄くても存在感たっぷり。つまりそれが味の透明感になる。
渥堆発酵がしっかりしていながらスッキリした味で、こんなふうに飲める熟茶は実は少ない。
一般的にはこの熟茶『7581荷香茶磚97年』のように、老叶子と呼ぶ大きく育った葉や茎、ブレンドによって新芽・若葉が見えていても、実はかなりの割合で老叶子で構成されている。
近年はこれも一般的ではなくなりつつあり、熟茶づくりも変わったが、お客様のお茶淹れ技術がその変化についてゆけてない。
7581荷香茶磚97年プーアル茶
7581荷香茶磚97年プーアル茶
老叶子のタイプは質が良ければ淡く淹れても香気が楽しめるが、茶気は弱く、水質の粒子は荒い。
写真のは極端に濃いかもしれないが、じわっと濃いめに抽出したほうがバランスが良く、独特な風味も楽しめる。また、老叶子は色の出るのが遅い。おのずと抽出時間はちょっと長めになるので、蓋碗や小さめの茶壺よりも、湯量があって熱量をじっくり茶葉と交換できる大きめのポットに分がある。
しかし、ここで紹介した淹れ方がすべてではない。
いろいろ試されたし。
版納古樹熟餅2010年プーアル茶
7581荷香茶磚97年プーアル茶
上: 版納古樹熟餅2010年
下: 7581荷香茶磚97年
『7581荷香茶磚97年』は渥堆発酵の浅い仕上がり。
発酵期間は長くかかっているが、使われた水の量が少ない。1980年代の技術であり、ちょっと特別。一般的な熟茶として紹介するには向いていなかったかもしれない・・・。

革登山春天散茶2015年 その1.

製造 : 2015年03月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明革登山大葉種古樹
茶廠 : 革登山農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 革登山農家
茶水 : 革登山山水
茶器 : コーヒー用グラスポット

お茶の感想:
革登山春天散茶2015年プーアル茶
革登山
革登山
革登山
白花
一番上の写真は孔明山。旧六大茶山からこの山が見えることが昔の記述に登場する。
白花と呼ぶ食べられる花が咲いている。
今年の春一番は革登山の古茶樹。
昨年秋に訪ねた78歳の老人の農地。今年は79歳。
革登山
革登山
革登山の古茶樹は栽培の歴史が長く、老人の農地は比較的人の手が加わっている。
秋に草刈りをして、冬のはじめに鍬入れをして、根本に藁をかぶせる。
熟した枝(老葉をこすり落として枝を裸にして深い根を育てる技術)づくりもする。
昔から高級茶をつくってきた古樹の栽培技術。
革登山春天散茶2015年プーアル茶
革登山春天散茶2015年プーアル茶
革登山春天散茶2015年プーアル茶
革登山春天散茶2015年プーアル茶
革登山春天散茶2015年プーアル茶
革登山
近年の流行で、高級茶は栽培に人工的な要素が加わらないほど珍重される傾向にあるが、茶葉を収穫するということは茶樹の性質が変わるということ。周囲の雑木林を切って日当たりを確保したり、下草を刈ったり。森の中で野生状態に居るのとは環境も異なる。お茶の味も変わる。
昔の栽培技術は、植物の性質をよく研究してきた知恵の蓄積。近年の経済の欲にかられた浅い知恵とは異なる。
革登山春天散茶2015年プーアル茶
老人の農地は他の一般的な古茶樹よりも新芽が数日早く出る。まったく手を加えないのは新芽の出るのが遅くなり、4月中頃からの雨季にならないと新芽は出ない。そうすると製茶の制度が悪くなる。
3月8日のこの茶葉は古茶樹であるがまだどこか眠い感じ。どちらかというと冬茶の味がする。
昨年の秋は雨が多くて、乾季の冬になるのが例年よりも3週間ほど遅れた。
冬が短い。茶樹の睡眠時間が足りない。
春の新芽が少し出たものの、まだちゃんと目覚めていない。
こういうのもたまには良いかと思う。
春なのにまだちょっと冬の味。
老人の農地の管理方法だからこそできるお茶。
革登山春天散茶2015年
春眠暁を覚えず。

昆明老方磚92年 その3.

製造 : 1992年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶
茶廠 : 昆明茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 方磚茶
保存 : 昆明乾倉 紙包み 
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : グラスポット

お茶の感想:
昨日の『広西六堡茶90年代』の体感に注目してみる。
2日にわたって朝から晩まで飲んでみたところ、お腹が減ったり、手足に血が巡って暖かくなったり、ゆったりとした酔い心地だったり、夜はぐっすり眠れたり・・・・それらは似ているが、熟茶ほど身体に熱を持たないような気がする。
微生物発酵の黒茶なので、体を温めるのはもちろんだが、熟茶ほどオーバーヒートしない。涼しい性格なのだ。
熟茶が”陽”とすると、昔の製法の六堡茶は”陰”だろうか。
熟茶の渥堆発酵のピーク時の温度は60度に達する。微生物が活発になりエネルギーを燃焼して発熱する。この熱と水分と酵素の作用で茶葉の色は変色する。熟茶の新芽は橙色、老葉や茎は赤黒くなってゆく。
ところが、『広西六堡茶90年代』の若葉はまだ緑色を残している。熟茶ほど黒く変色していない。
中医学の”七情”の観点でこの違いに注目してみる。
茶葉の中のいろんな成分や微生物のつくる酵素との、相須(互いに協力)・相使(一方的に協力)・相殺(互いに毒性を消す)・相畏(一方的に毒性を消す)・相反(互いに有効性を消す)・相悪(一方的に有効性を消す)。
同じ黒茶であっても、発酵の加減によって身体に与える影響はそれぞれ異なる。味や香りだけでなく、性質の異なるお茶になる。
一般的には、黒茶・緑茶・烏龍茶・白茶・・・・と、おおまかな分類で身体に与える影響がどんなものか、薬効がどんなものかが語られている。
しかし、実際のところ黒茶ひとつとってもバラエテイ―がある。
お茶の性質を決めるのは発酵の加減だけではない。
山の生態環境、土質、茶樹の健康、茶葉の素質、茶摘みのタイミング。製茶の工程では、例えば殺青の火加減や手加減によっても身体への影響は異なる結果が得られる。
そう言えば、高温炒りで手返しの早い殺青は、飲んだ人を”上火”させやすいと聞いたことがある。ゆっくりめに手返しするのは、飲む人への思いやりかもしれない。
さらに、揉捻・晒干、烏龍茶なら焙煎の工程にも、風味だけではない薬効の性質を分けるなんらかの影響がある。製茶のプロセスの組み合わせにもまた、相須・相使・相殺・相畏・相反・相悪を考慮した知恵があるかもしれない。
昔のお茶にはこれらの知恵があったと見ている。そして、今そのほとんどが忘れられつつあると思う。
今日はこのお茶。
『昆明老方磚92年』。
昆明老方磚92年プーアル茶
昆明老方磚92年プーアル茶
昆明老方磚92年プーアル茶
生茶の黒茶の体感は、熟茶の黒茶とは全く異なる。
どちらかというと『広西六堡茶90年代 』に似た涼しさがある。
生茶の黒茶には”號級”や”印級”などの茶文化の高級茶と、生活のための栄養茶と、二つのタイプがあり、このお茶は後者のタイプ。
粗茶葉が使用され、無加水のゆっくりした微生物発酵が行われ、そして長年熟成される。このプロセスでなければ得られない薬効があるのだろう。
熟茶の渥堆発酵の製法は、歴史ある生活のお茶だった生茶の黒茶と同じ効能を目指して、より安定生産・より大量生産するために開発されたはずだ。しかし、実際は性質の異なるお茶となっている。
味はすぐに理解できるが、薬効を理解するのは時間がかかる。
昆明老方磚92年プーアル茶

広西六堡茶90年代 その2.

製造 : 1990年代
茶葉 : 広西壮族自治区梧州
茶廠 : 農家
工程 : 黒茶
形状 : 散茶
保存 : 広西壮族自治区梧州梧州市ー西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代 
広西六堡茶90年代

お茶の感想:
昨日のつづきで、広西六堡茶のサンプルの試飲。
本日4種。昨日の8種と合わせて12種。
そのうち、気持よく飲めたのはこのお茶『広西六堡茶90年代』のみ。
こんなものだろうと思う。
熟成の味を求めたらこうなる。
ダメだったサンプル茶葉に注目すると、無加水状態での後発酵に積極的だからゆえの失敗も見られた。チャレンジ精神は評価したいが、お腹を壊さないかと心配になるような不味いお茶を流通させるのはやめてほしい。
近代的な設備の大手メーカーによる渥堆発酵の、安定した品質の新しい六堡茶が市場を席巻するのも無理ない話だ。
同じ黒茶の熟茶のプーアール茶と比べると、原料の茶葉の素質が全般的にちょっと低めだった。古茶樹とか無農薬・無肥料を謳っていても、西双版納では無名茶山の安モノのレベルのほうがましなくらい。
やはり茶葉の素質という点では雲南省に優位性がある。
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
素質が低いという言い方は、ちょっと理解が足りないかもしれない。
なぜなら、伝統的な六堡茶の茶摘みは、一芽五葉くらいに大きく育った老叶子。黒茶にするのはこういうタイプであり、旬の新芽・若葉は緑茶としてそのまま流通していたのではないかと思う。
プーアール茶の熟茶は、旬の季節の新芽・若葉の微生物発酵をいち早く成功させた。
渥堆発酵の水を掛けるという手段。旬の新芽・若葉の強い茶気のガードは微生物の繁殖をなかなか許さない。水をかけることでガードが下がりやすくなる性質を利用したのである。茶気・香気の立つシャキッとした輪郭の味は、それまでの眠たい味の黒茶に比べたら、目の覚めるようだった。
過去に紹介したこのお茶がそんな感じだった。
+【下関茶磚80年代】
そして、六堡茶にもこの技術が試されるようになる。
今回の六堡茶にも、1980年代とされるサンプルのひとつに(本物かどうかの鑑定は難しい)、渥堆発酵の特徴があった。旬の新芽・若葉が使われていてた。しかし、この方向で勝負するならプーアール茶の熟茶には勝てないだろう。
六堡茶もまた、新しい市場における自らのポジションをつくるために、道を探っているところなのだ。
広西六堡茶90年代
今回のこのお茶『広西六堡茶90年代』は、その点で昔ながらと言える。
一芽五葉くらい。茎もしっかり混ざっている。眠たい味の黒茶ながら、口当たり喉越しともに清潔感がある。
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
葉底の色がいろいろなのは、もしかしたらブレンドしたのかもしれないが、よく見ると、新芽・若葉の色が比較的新鮮を保ち、老葉と茎がより黒く変色している。無加水の微生物発酵においてはこのようになりやすい。渥堆発酵があった茶葉なのかどうかは今となってはわからないが、加水されていたとしても少なめだったと考えられる。

広西六堡茶90年代 その1.

製造 : 1990年代
茶葉 : 広西壮族自治区梧州
茶廠 : 農家
工程 : 黒茶
形状 : 散茶
保存 : 広西壮族自治区梧州梧州市ー西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
広西六堡90年代
広西六堡90年代

お茶の感想:
広西壮族自治区の黒茶(微生物発酵のお茶)六堡茶をいくつか試した。
残念なことに、六堡茶もまた伝統の製法ではなくなっている。
1990年頃からだと思うが、メーカーの設備で加水による渥堆発酵が取り入れられ、熟茶のプーアール茶と似たつくり方となった。味も似ている。
広西六堡90年代
昔は生茶のプーアール茶と同じく、晒青緑茶(天日干しの緑茶)を農家がつくって、竹籠に詰めたのを出荷していた。後発酵は無加水での微生物発酵で、中流通の茶商や貿易会社の倉庫で行われたと聞いている。
このタイプの黒茶は”越陳越香”。長年保存熟成させることで、ますます魅力的な味になってゆく。
過去に扱った1970年代の六堡茶。
+【広西六堡茶】
前回の上海でも老茶の愛好家に1980年代のを飲ませてもらったが、あるところにはある。
しかし、その年代のを仕入れて売るとなると値段が飛ぶから難しい。
プーアール茶の老茶が高騰した前例があるから、茶商がすでに買い漁って、世界各地の老茶ファンの手元にしっかり収まって、現在もまだ流通に残る六堡茶にはそれほど良いものはないだろう。
それでも六堡茶を試すのには理由がある。
近代的な製法であろうがなかろうが、六堡茶の茶商たちは麹の類である”金花”の無加水発酵に積極的である。
倉庫で囲って独自の味を醸している。
もしかしたら、ちょっと特別な風味が見つかるかもしれない。
広西六堡90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年代
広西六堡茶90年
結論から言うと、ひとつ見つかった。
本日紹介のお茶の『広西六堡茶90年代』。
8つのサンプルを試して、たったの1つ。7つは残念な感じだった。
六堡茶を専門に扱う流通から取り寄せたサンプルですらこの打率だから、市場に流通するのはもっと質が落ちていると思われる。
サンプルの中には、1970年代・80年代・90年代・2000年代といろいろ記してあったが、1970年代と1980年代のは明らかに偽物。渥堆発酵の味がする。
1990年代のはいくつかあったが、そのうちのひとつにちょっと生茶の老茶に似た風味を見つけた。茶商に確認すると、これもやはり熟茶製法ということだが、水の散布の少ない味。プーアール茶の熟茶であれば1980年代までの技術による味。
良いと思う。
茶葉の素質はベストではない。秋茶葉だと思われ、春茶のような茶気・香気は立たない。淡々と穏やかな表現。水質に密度はないがキレイな質感。喉越しは柔らかい。
何煎でも気持ちよく飲める。
気持ちよく飲めること。いくらでも飲めること。これこそ黒茶の良さ。

巴達古樹青餅2010年 その26.

製造 : 2010年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 生茶・紫砂陶器の茶壺 紅茶・プラスチック袋密封 
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
新版 漢方の歴史

お茶の感想:
漢方の本にこんなことが書いてあった。
七情はニ味の薬物を組み合わせるといかなる複合作用が発現するかを分類規定した配合原則である。単行(たんこう)・相須(そうしゅ)・相使(そうし)・相反(そうはん)・相悪(そうお)・相殺(そうさつ)・相畏(そうい)の七つのパターンが設定され、増強・相乗作用、反発作用、毒性相殺作用、一方が他方に不可逆的に働く作用など、種々の薬効変化が示されている。そして相須(互いに協力)・相使(一方的に協力)・相殺(互いに毒性を消す)・相畏(一方的に毒性を消す)の組み合わせがよく、相反(互いに有効性を消す)・相悪(一方的に有効性を消す)の組み合わせは禁忌だというのである。
「新版 漢方の歴史」小曽戸洋著 
第三章 神農伝説と『神農本草経』より
これだ。
一枚の茶葉の中にもいろんな成分があり、単行・相須・相使・相反・相悪・相殺・相畏は、製茶方法を変えることによって導き出せる。
巴達山の春の古茶樹の茶葉
だから、生茶と紅茶は体感が異なる。
先日から話題にしている”茶気”のアタリは紅茶のほうが穏やか。
中国茶の製茶分類はこの薬効の違いがベースとなっているのではないか?
ひょっとして、これはあたり前の知識で、自分が中国茶のいろはを一から学ばなかったから、今になってやっと分かったのだろうか?
それとも、基本的な知識ではあるが、現在に生きるみんなには興味のないことなのか?
あるいは、歴史の断絶を何度か経験した中国茶なので、こんなにバラエティーのある製茶方法が生まれた起源を忘れてしまったのか?
今日はこのお茶。
巴達山の同じ季節の茶葉でつくった2つのお茶。
+【巴達古樹青餅2010年】
+【巴達古樹紅餅2010年紅茶】
巴達古樹青餅2010年と巴達古樹紅餅2010年紅茶
巴達古樹青餅2010年と巴達古樹紅餅2010年紅茶
巴達古樹青餅2010年と巴達古樹紅餅2010年紅茶
巴達古樹青餅2010年と巴達古樹紅餅2010年紅茶
巴達古樹青餅2010年と巴達古樹紅餅2010年紅茶
巴達古樹青餅2010年と巴達古樹紅餅2010年紅茶
左: 巴達古樹青餅2010年
右: 巴達古樹紅餅2010年紅茶
生茶と紅茶を同時に飲むと、生茶の茶気のアタリがやや穏やかになる。
熟茶を同時に飲むと、もっとはっきりと茶気のアタリがやわらぐのがわかる。

政和寿眉老茶90年代 その1.

製造 : 1990年代
茶葉 : 福建省政和県 春茶
茶廠 : 政和の農家
工程 : 白茶
形状 : 散茶
保存 : ステンレス茶缶密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代

お茶の感想:
上海からメッセージ。
『政和寿眉老茶90年代』のほうが美味しいけれど・・・。
過去の試飲の結果に異議あり!ということらしい。
昨年10月にこのお茶を試していた。
もしかしたらと思うところあり、手元に残るサンプルを探して、もう一度『寿眉老茶2003年』と飲み比べてみた。
寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代
左: 寿眉老茶2003年
右: 政和寿眉老茶90年代
同じ白茶の老茶。
製造年がちょっと違うが、それ以外にも大きな違いがある。
『寿眉老茶2003年』は、福建省福鼎市の秋茶。
『政和寿眉老茶90年代』は、福建省政和県の春茶。
前回の飲み比べ、
+【寿眉2003年白茶 その2.】
こんなことを書いていた。
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この二つを比べると、『政和寿眉老茶1990年代』には「火共」と一文字で書く炙り味(香)が強くあった。
長期保存中に風味が傾いてくると炙ってシャンとさせる。これまでに何度炙られたのかわからないが、炙ると火味が加わる。ほんのりスパイスになることもあるが、このお茶は烏龍茶のような華やかさが生じていた。表現を抑えきれず、白茶らしさを失っていると思う。
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寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代
寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代
今日飲んでみると、炙りの味は落ち着いて、白茶らしさを戻していた。
味は互角。
しかし、そもそも福鼎市と政和県では、白茶づくりの思想が違うのではないか?
秋茶と春茶という原料の違いや、炙るという製茶工程の違いもまた、思想の違いからきているのであって、モノの良し悪しの判断基準にはならないのではないか?
さらに、原料の選定や製茶工程には、それぞれ狙いとする薬効の違いもあったはず。現在お茶づくりをする人々は、歴史の断絶により、その意味はもう忘れているけれど、受け継がれた技術になにかが残っているかもしれない。
もしも2つを比べることに意味があるとしたら、どっちが美味しいか、どっちがそれらしいかということよりも、背後に隠れた知恵を読み取るべきだったのではないか?
頭がクラクラする。
ま、一歩一歩やってゆく。
寿眉老茶2003年と政和寿眉老茶90年代

易武春風青餅2011年 その9.

製造 : 2011年12月(采茶3月)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納―上海密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶

お茶の感想:
茶気について引き続き考えてみる。
漢方の”上薬”・”中薬”・”下薬”。
上薬は、毎日の健康維持。
中薬は、体力増進。
下薬は、治療。
上のランクほど病院や製薬会社や国のお金にならない・・・。
お茶は毎日飲めるから上薬にあたるけれど、新芽・若葉のお茶の場合、”茶気”のチカラと副作用の扱いを間違うと毒にもなるから、中薬だろうか。

茶気は”香気”と共にある。
茶気の強いお茶ほど香り高い。
香りの成分は薬でもあり毒でもある。
香木店の先生が話していた。昔は白檀や沈香などの香木を売る店は、香木を削った煎じ薬を売っていたらしい。現在は薬事法によりできなくなった。
香りの成分はなんらかの薬効を持つことが多い。
聞香(もんこう)は、香りを聞くと言うけれど、中国ではお茶を味わうことを聞くとも言う。
聞くという意味には、音楽を聞くように心を寄せるという意味があるけれど、心を寄せるように薬効を感じるというような意味があるのではないかと思う。
中医学的には快楽のドラッグも薬のうち。
お茶を聞くのは、快楽を味わいながら、自分の身体への作用を確かめるというような意味があると思う。

西双版納の山ごとに品種特性の異なるお茶。
山ごとにお茶の味が違うように、山ごとに快楽の印象も違う。
こういう楽しみ方ができたら、お茶はもっと面白い。

今日はこのお茶。
+【易武春風青餅2011年】
易武春風青餅2011年プーアル茶
易武春風青餅2011年プーアル茶
”採辧春尖”
”加重萌芽”
”精工燻揉”
春一番の茶気を求めた伝統技法を真似ている。
”春風”という名前には、春の山の風の爽やかさとエネルギーを身体に取り入れるという意味が込められている。
東洋医学的には風ですらクスリになる。


茶想

試飲の記録です。
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