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茶教室・京都

香椿林単樹春の散茶2015年 その1.

製造 : 2015年03月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 漫撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : プラスチックバッグ密封
茶水 : ミネラルウォーター農夫山泉
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
いろんな植物がいる中で、人に好かれる植物は、もっと好かれるように進化してますます繁栄している。
米・麦・綿花・トウモロコシ・ジャガイモ・トマト・・・・・茶。
世界中に繁栄した植物は、ある意味で世界征服に成功している。
人は植物を養っているつもりかもしれないが、実のところ人は植物に養われている。
人は植物を品種改良してきたが、植物が人を利用して品種改良をさせた。
そういう見方があると植物学者が話していた。
そう考えると栽培に人の手が加わるほどに、人に好かれるお茶の味になった品種改良の歴史は、人工的で不自然と見るよりも、自然のなりゆきと見たほうがしっくりくるかもしれない。
野生茶やそれに近い自然栽培のお茶に、人に好かれる風味を求めるのは矛盾している。
香椿林単樹春の散茶2015年
香椿林単樹春の散茶2015年
このお茶『香椿林単樹春の散茶2015年』は、深い森の甘いお茶。苦味・渋味がほとんどない。
しかし、ほんの少しだけで気付かないと思うが、人に好かれないある種の風味を持つ。野生の棘味、エグ味とも言える。この味をもつお茶は原生種の血が濃いと見て、毎日飲むお茶にはしない。
”香椿林”は地名で漫撒山の一帯に所属する。
漫撒山の単樹だから、もちろん森の中の一本。他の木々の陰に生きるお茶。
同じく漫撒山の”弯弓”や”一扇磨”のほとんどを野生種と言わないのは、貢茶で栄えた200年以上前に、明らかに誰かが茶を摘んだ形跡である幹のあたりの枝分かれや歪曲、何十年かに一度は台刈りしたものによる幹の分岐があるからだ。
過去に品種改良を試みたかもしれないから、人に好かれる飲みやすい風味であってもおかしくはない。
このお茶の采茶(茶摘み)には立ち会っていないが、茶樹の様相はだいたい想像がつく。
これまでに西双版納の山々で何度か出会ってきたが、共通点として、昔に人が茶葉を摘んだ形跡である幹のあたりの枝分かれや歪曲が少なく、一本スラっとまっすぐ上に伸びている。
野生茶
この写真の茶樹の感じに似ているはず。
人に好かれない風味がかなり薄れていて、美味しく飲めて、ちゃんとお茶の味がする。
こういう曖昧なのが面白い。
遠い昔に茶と人との関係がはじまった西双版納。
野生か栽培か?
自然か不自然か?
いろいろ考えさせられる。
香椿林単樹春の散茶2015年

一扇磨陰涼散茶2015年 その2.

製造 : 2015年3月16日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山一扇磨野生茶
茶廠 : 漫撒山製茶工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶 (晒青毛茶)
保存 : クラフト紙パック密封
茶水 : ミネラルウォーター農夫山泉
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
上海の友人の店でこのお茶を淹れてみた。
+【一扇磨陰涼散茶2015年】
淡くて消えの早い味。涼しい甘さ。
どう捉えてよいのか・・・みんなわからない感じで、しばらく静かに飲むだけだった。
彼らはこのブログもサイトも見ていない(日本語が読めない)ので、何の説明もなくお茶を飲んでいる。
自分から先に説明した。
「私が西双版納に行ってからの5年間で出会った最高のお茶です。」
そう言うと、どうやら意外な様子だった。
「今まで飲んだことのない味のお茶で、たしかに美味しいけれど、どこが良いのか、どこがどう違うのか、教えてほしい。」
そう言った人は、直前に飲んだ『倚邦単樹春の散茶2015年』こそが最高と感じていたようだった。
一扇磨陰涼散茶2015年
どちらも、西双版納州孟臘県のお茶。
倚邦も一本の茶樹(単樹)のお茶だから、森の生態環境は抜群に良い。
けれど、根本的なところの、お茶に求める理想が対照的なのだ。
倚邦山のは人の手を肯定する味。
一扇磨のは人の手を否定する味。
その違いがお茶の味に現れている。
どちらの方向にも上には上がある。
けれど、現地でお茶をつくる仕事をして上のほうを求めると、だんだんわかってくる。地域全体の環境の変化や、人の手を否定することの難しさ。
ときには自分の行為まで否定的に見ようとしなければならない。
その話をしたら、わかったようなわからないような。
ちょっと解釈に時間がかかりそうだった。
たぶん、もうちょっとわかりやすく違いがわかるよう、飲み比べるお茶を選択したほうがよかった。
同じ漫撒山一帯の丁家老寨のお茶と飲み比べたらわかりやすかったかもしれない。

一扇磨単樹春の散茶2015年 その1.

製造 : 2015年03月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)一扇磨
茶廠 : 漫撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 紙包+陶器の茶缶
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
一扇磨の単樹は2種。
単樹とは一本の茶樹からつくられたお茶のこと。
一扇磨単樹A春の散茶2015年
左: 一扇磨単樹A春の散茶2015年
右: 一扇磨単樹B春の散茶2015年
AとBとする。
これを比べる。
茎の長く育った茶葉は、熱帯雨林の深い森の原生品種のもの。
どちらも3月末の茶摘みで春の旬を外していない。
一扇磨は漫撒山一帯ではやや海抜の高い1700メートル付近に茶樹が多い。
おなじく漫撒山にある弯弓は海抜1200メートル付近だから、気候がやや異なる。
山を歩くとまず空気が異なる。
植物の様子が異なる。
+【一扇磨 古茶樹 写真】
+【弯弓 2013年 秋天】
写真ではわかりにくいかな・・・。
漫撒山はかつて貢茶づくりで栄えた茶山。
ほんの200年ほど前まで山のあちこちで茶が栽培されていた。その後廃れて人家がなくなり、深い森が戻ってきた。
再発掘されたのは2007年のプーアール茶バブルの年。
それからまだ10年も経たないのに、古茶樹の流行で森林が乱開発されたのには心が痛む。
森林のお茶の価値は森林そのものにある。
それはお茶の味にはっきり現れている。このことを、産地にもお茶ファンにもやかましく伝えてゆきたい。
一扇磨単樹A春の散茶2015年
一扇磨単樹A春の散茶2015年
森林のお茶は口当たりからして甘い。
水質の良さは山の水そのもの。爽やかな香りは山の空気そのもの。
ひとくち飲めば風が吹いて心が揺れる。
一扇磨単樹A春の散茶2015年
左: 一扇磨単樹A春の散茶2015年
右: 一扇磨単樹B春の散茶2015年
葉底(煎じた後の茶葉)のカタチを見てもわかるように、品種特性的な違いは少ない。
漫撒山には遠い昔に外地から持ち込んだであろう茶の品種も混成しており、バラエティーに富むのだが、一扇磨は弯弓ほどバラエティーが多くない。これは、やや海抜の高いところの気候によるものと思われる。
製茶の仕上げの違いが色に現れている。
左のAの軽発酵の進んだ色は昔ながらで、右のBの殺青による緑茶っぽさは近年の流行。
ただ、1950年代の”號級”や1970年代の”印級”のプーアール茶は、もしかしたら殺青をしっかり仕上げていた可能性もあるので、このあたりはこれから検証する。
どのように仕上げても、一扇磨のお茶には軽快な苦底(後味の苦味)に特徴がある。
苦味の蒸発は早くて、まったく嫌味でない。爽やかな印象。
弯弓のお茶は華やかな甘い香りで人を誘うが、一扇磨のお茶は淡々とした静かな表現である。
最近こういうのが上等に思える。

漫撒生態紅餅2015年 その1.

製造 : 2015年04月20日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山丁家老寨小茶樹および古茶樹
茶廠 : 漫撒山工房
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 手すき紙+竹皮包み
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
漫撒生態紅餅2015年
漫撒生態紅餅2015年

お茶の感想:
早春の新芽・若葉の紅茶。
ミントのような爽快な香りが特徴。
晒干(天日干し)だけで仕上げて糖質の焦げ味がまったくない。
餅茶にした紅茶は3ヶ月ほど置いて風味が落ちつくのを待ったほうがよいが、圧餅したてのこの時点で試飲してみる。
漫撒生態紅餅2015年
左: 漫撒一水紅餅2015年
右: 漫撒生態紅餅2015年(このお茶)
早春を意識しすぎて軽発酵が足りないか・・・。ちょっと辛い渋い。
ただ、軽発酵を無理にすすめたらミントの爽快感はなくなる。
『漫撒一水紅餅2015年』は雨が降った後のお茶。よく育った若葉。しっかり軽発酵。
木陰にある数本の茶樹からつくってある。やさしくて涼しい甘さ。
漫撒生態紅餅2015年
漫撒生態紅餅2015年
左: 漫撒生態紅餅2014年
中: 漫撒一水紅餅2015年
右: 漫撒生態紅餅2015年(このお茶)
漫撒生態紅餅は去年のほうが美味しいか・・・・。
天日干しで仕上げるこの紅茶の製法では、ちょっと育っ若葉のほうが向いているかもしれない。
同じ淹れ方で比べたらダメな感じ。
早春のはちょっと湯の温度を下げたほうがまろやかになる。
今年は手作業で揉捻したが、あまりに時間がかかりすぎて、はじめに揉捻したのと最後に揉捻したのとで軽発酵の差が大きくなった。

弯弓単樹B春の散茶2015年 その1.

製造 : 2015年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)弯弓
茶廠 : 曼撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 紙包+陶器の茶缶
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
もうひとつの弯弓の単樹。Bとする。
茶葉の色や形状がAと異なり、品種的な違いが明らか。
弯弓単樹B春の散茶2015年
弯弓単樹B春の散茶2015年
弯弓単樹B春の散茶2015年
弯弓単樹B春の散茶2015年
弯弓単樹B春の散茶2015年
左: 弯弓単樹B春の散茶2015年
右: 弯弓単樹A春の散茶2015年
ちょっと黄色が強くて、表面にツヤが無くて、細く尖った葉の形。
これには見覚えがある。弯弓の森の中で、おそらく母樹が同じであろう数本の茶樹が斜面に群生していた。
弯弓単樹B春の散茶2015年
写真のは単樹にできるほどの大きさはないが、品種的にはそっくり。
ふんわり甘い香り。やわらかな味。しかし、ちょっとだけ後味に棘がある。独特の刺激。野生茶的なスパイス。
好きな人にはたまらないと思う。
単樹のお茶は、品種がひとつに絞れるという点では製茶の精度が上げられるが、采茶(茶摘み)のタイミング、茶葉の成長具合によってお茶の味はいろんな方向へ傾く。
また、采茶のタイミングが1週間違えばお茶にできる量も異なる。例えば500gから1キロという具合に3倍も違ってくる。
さらに、漫撒山の単樹で価値のあるのは、深い森の中の茶樹であって、村の近くの茶樹ではない。
そうなると、茶葉の成長具合を毎日見れないから采茶のタイミングが図れない。
森に入ったその日が勝負。

弯弓単樹A春の散茶2015年 その1.

製造 : 2015年03月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)弯弓
茶廠 : 曼撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 紙包+陶器の茶缶
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
漫撒山
漫撒山
漫撒山


お茶の感想:
天気予報は晴れが2日続くということなので、漫撒山へ圧餅に行ってきた。
突然の雷雨と刮風(竜巻みたいなもの)が予想外だったものの、今年の春の7種のお茶を180gサイズの餅茶に加工できた。
いつもの漫撒山の個人経営の工房で圧餅した。
質素な道具と手作業。このほうが後の長期熟成には良いと思っている。
それはさておき、ついでに寄った地元の工房で出会った単樹のお茶がよかった。
単樹のお茶
単樹のお茶
3日かけて20本分くらいを試飲した。
そのうち5本分の単樹を入手した。
今年の春は空振りが多かったから、春の終わった今になってアタリの茶葉が見つかるのは奇跡。夢でも見ているのではないかと心配になるほど。
単樹はそこそこ大きな古茶樹でないとつくれない。
大きな茶樹ほど新芽・若葉を出すのは遅い傾向にある。
森林の陰に潜んでいるのは余計に遅くて、4月15日の撥水節にやっと今年の一番摘みができる。
ところが、今年は春の早い時期から雨が多かった。コンディションが悪い。
単樹を求める茶商やお客は、お茶にそこそこ詳しい人たちで、今年の茶葉にはあまり期待していない。
だから残っていたのかもしれない。
お茶の味は気候を反映している。
「異常気候だ」という春が何年かつづくと、それは異常ではなくなる。毎年のお茶の味が異なる。それだけのこと。
選ばなかった茶葉は、今年の気候が気に入らなくて嫌な味を出しているのかもしれない。

単樹の中には弯弓のが2本分ある。
そのうちの1本”水路”と呼ばれるお茶を試飲する。
とりあえず”単樹A”と名付ける。
弯弓のお茶
弯弓のお茶
すばらしい水質。弯弓のお茶の味。
弯弓から薄荷唐へゆく道なりの森林のお茶。国有林のお茶である。
国有林にもかかわらず、瑶族の農家が自分の農地のように茶を採取することができる。
近年の価格高騰に浮かれた農家が、さらなる金儲けのために森林を伐採してしまって、それが気に入らない。
たくさんつくるほど儲かる仕組みにハマった農家のお茶はもう要らない。
単樹の一本一本の茶樹の個性に価値をつける。森林のお茶の味を評価する。このことを農家に理解してもらうつもり。

倚邦単樹春の散茶2015年 その1.

製造 : 2015年03月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県象明倚邦山中葉種古樹
茶廠 : 曼撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
西双版納の森林
西双版納の森林
倚邦の森の大木

お茶の感想:
単樹のお茶をもっと増やしたい。
倚邦単樹
今日はこのお茶。
『倚邦単樹春の散茶2015年』。
倚邦単樹春の散茶2015年
昨年の倚邦の茶葉と、今年の単樹の茶葉は、手掛けた農家が異なる。
+【倚邦古樹青餅2014年】
理由は、ひとことで言うと森林が後退したから。
一本のお茶を選ぶために森を選ぶ。
倚邦単樹春の散茶2015年
水質の密度が濃くて甘い。
消えが早くて爽やか。
ほんのちょっとだけ焦げ味があるけれど、致命傷ではない。むしろ魅力になるだろう。
単樹は鮮葉の量が多かったり少なかったりして揃わないので、製茶の精度が上げにくい。
とくに殺青の火加減が難しい。
今回のは1回で炒るには多すぎるので2回に分けられたが、そうすると一鍋分が少なくて茶葉が乾きやすくなり、焦げにつながる。
倚邦単樹春の散茶2015年
倚邦に多い小葉種ではなくて中葉種。
中葉種は香りがやわらかで、易武山の麻黒の味に近い。
今回の単樹は晒青毛茶にして1500g。
圧延加工する予定だが、すぐにできないかもしれない。
2011年がそうだったように、今年も雨が多くて、天気の様子を見ながら慎重に日を決める必要がある。
秋までに圧延できたらよいと思う。

『倚邦単樹春の散茶2015年』の黄片。
ほんの一握りだけの黄片と粉々に崩れた茶葉。
倚邦単樹春の散茶2015年
美味しいから自分で飲んでしまった。
水分の少ない黄片は、茶葉の端のほうが焦げやすい。

丁家老寨春の散茶2015年 その1.

製造 : 2015年3月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)丁家老寨古茶樹
茶廠 : 農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
丁家老寨春の散茶2015年
丁家老寨春の散茶2015年

お茶の感想:
今年の春は丁家老寨でお茶をつくって過ごしたけれど、雨のせいで短い春となった。
その様子はこの記事に書いた。
+【漫撒山風の道の散茶2015年 その1.】
雨が3回降ってからは、丁家老寨のどの農家のお茶も香気が下がった。
そのため雨の降る前の日の晒青毛茶を農家から入手した。ほんとうはもっと自分でつくりたかったけれど。
雨の前に茶摘みできたのは3日間くらい。
古茶樹の新芽・若葉が出てくるのはちょっと遅いので、あっちに一本こっちに一本と、若葉の成長した茶樹を探しながら採取する。それでも若葉はまだ小さい。仕上がった晒青毛茶を見ると、雨の前と雨の後では大きさや形状が明らかに異なる。
以前に『丁家老寨青餅2012年 』をつくった農家は心得ていて、はじめの2日分の晒青毛茶を分けて保管していた。3キロ半ほどある。
これを求めることにした。
180gサイズの小餅にしようと思う。
丁家老寨春の散茶2015年
このお茶の農地は鍬入れをする。
丁家老寨では、鍬入れをするところと鍬入れをしないところと、2つのタイプの農地がある。鍬入れをしないところは地中に石が多くて硬いから。
丁家老寨春の散茶2015年
鍬入れをすると春の新芽・若葉が数日だけ早く出てくる。
今年の春はそのほうが良くて、雨の前の茶葉を増やす結果となった。
鍬入れをするのは自然栽培のイメージが半減するせいか、最近は鍬入れをしない農地の茶葉を求める茶商もでてきた。
しかし、今年の春のお茶で、同日の茶摘みで、鍬入れをした農地としない農地との茶葉を比べると、鍬入れした農地のお茶のほうが甘く薫る。味が濃い。土質の差もあるだろうが、すでに2箇所以上でこのことを確認している。
栽培に人の手が加わるほど、人に美味しく感じられるお茶になりやすい。
鍬入れもそんな効果があるのだろうか。
次回は、同じ農地で鍬入れしたのとしていないのを試してみたい。
丁家老寨春の散茶2015年
丁家老寨春の散茶2015年
農家のつくった『丁家老寨春の散茶2015年』は、自分のつくった『漫撒山風の道の散茶2015年 』よりも美味しいかもしれない。
今年のお茶づくりで試みた”陰涼”や”風道”は、お茶の味で表現する”詩”である。
人の嗜好に迎合していない。
自然のままを味わうお茶。
丁家老寨

瑶洞古樹散茶2015年 その1.

製造 : 2015年3月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山瑶洞古茶樹春茶
茶廠 : 農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
プーアール茶の古茶樹の流行は、自然茶志向が背景にある。
都市の食料の原料となる作物の不健康が問題になって、その反動だから、これからも自然茶志向は続くだろう。
茶樹の自然栽培にもいろいろある。
無農薬・無肥料だったらとか、剪定や鍬入れをしなかったらとか、明確な定義は無い。
栽培に人の手が加わるほどにお茶の味や香りはわかりやすい美味しさになる。濃厚な味、華やかな香り。
しかし、それと引き換えに体感は悪くなっている。
茶樹の健康は、お茶の味で見るのではなく体感で見ること。水質で見ること。味や香りに誤魔化されてはいけない。

この”瑶洞”の茶葉は、自分が西双版納でお茶づくりをはじめた2010年頃に、茶樹の健康を知るきっかけとなった最初の茶葉。
有名茶山の易武山麻黒大漆樹で農家に1ヶ月ほど泊まり込みでお茶づくりをしていたときに、いつも采茶にゆく栽培型の古樹とはあきらかに異なる色・形の鮮葉が別の場所から持ち込まれた。
そのときはまだ経験がなかったのでこの良さに気付いていなかった。
製茶後に試飲しても、味はぼんやりボヤケているし、どこが良いのかわからなかった。体感や水質を見る目がなかったからだ。

しかし気になったので、少し分けてもらって、ときどき飲んでいた。
気付いたのは1年後くらい。
この茶葉にはあきらかに優れた体感がある。薬効と言ってもよいくらい。
瑶洞古樹散茶2015年
『瑶洞古樹散茶2015年』(圧餅して『瑶洞古樹青餅茶』にする予定)
2013年に一度仕入れて『漫撒古樹青餅2013年』の”緑印”として出品した。
2015年のこれは2度め。
農家の趣味で、森林の中の30本ほどの古茶樹を、ほとんど手を加えない状態で放置している。
冬に草刈りをするだけ。
春に一度しか摘まない。というか摘めない。
雨の季節は毒蛇や山蛭がいて入るのも難しい。
草が育って道を塞ぐので乾季に草を刈っておいて春の準備をする。
今年2015年の春の収穫は、晒青緑茶に加工して6.5キロのみ。
まだこの茶樹を自分の眼で見れいていない。(この時期は別の山に行くから。)
けれど、茶葉の様子からだいたい想像できる。
森に水気が多いらしくよく育っている。
自然栽培の割に早い時期に新芽を出すが、これはおそらく農家が周囲の樹々を切って太陽の光を浴びたせい。
そのため渋味や辛味の刺激が強くなった。甘味や苦味に涼しさが足りない。
ほんとうは栽培に手を加えたりしないほうがよいが仕方がない。農家が早くたくさん売ってお金にしたいから。
瑶洞古樹散茶2015年
瑶洞古樹散茶2015年
今年2015年のはちょっと辛い。
この刺激のあるのは空腹時に飲むと胃を削る。
お茶の味のアピールは2013年よりも強くなって、わかりやすい美味しさ。
香りが強い。蓋碗の蓋や杯の底にかすかに甘い桃が薫る。
おそらくこのほうがウケるだろう。

人間がお茶に近づくほどに美味しくなって、それと引き換えに失われてゆく薬効。
自然とどのように付き合うのか。
近づくとダメになるので、どのくらいの距離をおくのか。
お茶の栽培にはある種の思想が必要。
漫撒古樹青餅2013年
漫撒古樹青餅2013年
写真は2013年の『漫撒古樹青餅2013年・緑印』。
2年前のこれは味も香りも内気すぎて、わかる人にしかわからない感じだった。
これこそホンモノの自然の味だが、売れないお茶だった。

易武単樹青餅2014年・秋天 その2.

製造 : 2014年04月12日
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山老街古茶樹の単樹
茶廠 : 易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 紙包密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗

お茶の感想:
このお茶は180gサイズの餅茶。
6枚つくった。
+【易武単樹青餅2014年・秋天】
易武単樹青餅2014年・秋天
易武単樹青餅2014年・秋天
易武単樹青餅2014年・秋天
秋の茶葉なのにきめ細かな水質。
栄養の充実している感じ。
この茶樹は易武老街から歩いてでも行けるほどの茶地にある。
昨年から追いかけている森の深いところではなく、周囲には栽培型の茶樹の多い斜面だが、それでもこの樹だけスラッと背の高い幹で、同じくらい深く潜った根っこから養分が吸い上げられて、周囲の茶樹とはまったく異なる風味になっている。
長年人の手の加わった農地でも、人が摘みすぎないように管理すると、数年でここまで回復するのだから、植物の生命力はすごい。
このクラスのお茶の味がわかるファンが増えれば、エセ高級茶人気にブレーキがかかって、自然と調和のとれたお茶づくりができる。
易武単樹青餅2014年・秋天
実際は、このクラスのお茶は市場に流通しない。
知る人だけに流通している。
例えば、現地の茶荘にこのお茶が売り出されていて、試飲ができたとしても、分かる人しか買えないだろう。
多くの人がこの静かな風味に隠れている上等に気付かない。もっと安くてアピールの強い美味しいお茶を買うだろう。
それでよいと思う。
漫撒山丁家老寨の単樹
この写真は、漫撒山丁家老寨を歩いて歩いて、農地の隅っこに見つけた野放しの一本。
今春はタイミングが悪く、采茶の直前に雨が降ったのでパスした。
秋にもう一度チャンスを伺いたい。
こういうお茶づくりに集中したいから、みんなにわかる美味しさのお茶づくりはやめる方向でゆきたい。


茶想

試飲の記録です。
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