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茶教室・京都

易武山刮風寨陳香餅05年 その6.

製造 : 2005年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山刮風寨古茶樹
茶廠 : 易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納ー上海 紙包み+密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 小さめの蓋碗
易武山刮風寨陳香餅05年

お茶の感想:
チェンマイから西双版納に戻ってきた。
空港に着いたのは深夜1時半。2時間遅れにもかかわらず、広東の茶友が空港に迎えに来ていた。
春茶の季節が近づいている。
みんなの気持ちが高ぶってきている。
中国では闘いの気分。
空港からその気分になった。
チェンマイから昆明の乗り継ぎで、東方航空は受託荷物を他の便で運ぶかもしれないと言いだして、チェックインカウンターで係員ともめた。中国を実感する最初の闘い。目がつり上がって眉間にシワが寄り、中国の顔になる。声がでかくなる。
昆明空港に着くなりあちこちで人々が怒鳴っている。
子供を叱る親の声、夫婦喧嘩の声、職員の喧嘩の声、掃除のおばちゃんの喧嘩の声、携帯電話ごしの喧嘩の声。みんな闘っている。
西双版納ゆきの搭乗口に近づくと大声の人がもっと増える。田舎の人のマナーとパワー。脚の踏み場もないほど散乱している食べカスは、中国国内線のどの搭乗口にも負けない。
次の日から大家さんと喧嘩(家賃を余分にだまし取ろうとするから)、物を買うにも喧嘩(不良品を買ったので交換して欲しいと主張するため)、食べるにも喧嘩(オーダーしていない料理がでてきて、そのまま食べさせようとするから)。喧嘩喧嘩の毎日がはじまった。3日もしたら大声で怒鳴り合うくらいは平気になる。
この土地では争いなしではやってゆけない。
もしも争いを避けたら、自分だけがガマンを溜め込んで、いずれ崩壊するだろう。
チカラの均衡のために闘う。
民族が混在して、言語も習慣も信仰も生まれ育ちも違う人達と、お互いに納得できる妥協点なんて見つかるわけがない。相手を思いやることなどなく、自己主張の押し合いをするのみなのだ。
こんなに毎日イライラする土地には住みたくないと思うが、あんがいみんなが健康的に見える。そういう自分もけっこうハリキッている気がする。
今日はこのお茶。
『易武山刮風寨陳香餅05年』。
易武山刮風寨陳香餅05年
易武山刮風寨陳香餅05年
易武山刮風寨陳香餅05年
今年は刮風寨のお茶がターゲットのひとつ。
今この2005年のを飲んでみると、自分ならもっと美味しくつくれるぞ!と思えるようになっている。
進歩したのかもしれない。
そういえば広東の茶友ともよく口喧嘩している。年齢は同じ40代半ばだが、育ってきた環境も時代も違う。貧しい農家に生まれて小卒から働いて、偽物づくり工業分野で事業を成功させた彼は、その成功体験をお茶にも応用できると信じていた。
まあ、自分の思うようにやってみたら・・・。

章朗古樹秋天散茶2015年 その2.

製造 : 2015年11月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 巴達山製茶農家
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 西双版納 密封
茶水 : タイ・チェンマイの飲料水陶器の瓶入
茶器 : マルちゃんの陶器の茶壺と白磁の茶杯
章朗古樹秋天散茶2015年

お茶の感想:
台湾茶道教室をされているPeruさんのところへこのお茶を持って行った。
+【章朗古樹秋天散茶2015年 その1.】
昨年末のことだったから、ちょうど西双版納の秋茶が終わって、できたてのお茶を飲んでもらうつもりだったと思う。
季節の終わりで茶摘みできた鮮葉の量が少ないために、大きな鉄鍋で炒るときの火加減が強すぎて、ちょっと焦がしている。鮮葉の量をみて薪の火を調整すればよいのに、そんなことお構いなし。布朗族の人たちである。
薪は1年ほどじっくり乾燥させて水分を逃してトロトロ穏やかな火が出るようにするべきなのに、半年もたたないうちに使ってしまうからバチバチの荒れた火になる。
むしろそこに魅力があるのじゃないか?という見方もできる。
感想をいただいたところ、「モワンとしている」ということだった。
モワン?
意外な表現に、もしかしたら保存を誤って湿気たのかと思って、すぐに自分で飲んでみたら冬茶の味だった。秋の旬を通り越して冬になっていたのに気付いていなかった。
ウロウロするような茶気の立ち方。そして茶湯のトロンとした舌触り。
チェンマイにて、ひとりでじっくり淹れてみても、やはりそんな雰囲気が感じられる。
章朗古樹秋天散茶2015年 焦げ
2煎めくらいまでは杯の底に焦げの粉が沈む。これが苦い。
章朗古樹秋天散茶2015年
章朗古樹秋天散茶2015年
葉底(煎じた後の茶葉)をよく見たら、茶葉のカタチも秋に比べて丸みがある。
茶樹が冬の眠りにつきかけて、茶葉の成長が遅くなって、縦に伸びにくくなるからだ。
こういうクセのあるお茶は、茶学でつかうと面白そう。
わざと茶気を立てないようにゆるく淹れてみたりとか。
この個性を欠点として見るのか、魅力あるように見るのか、淹れる人の見方次第になる。

版納古樹熟餅2010年 その31.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納 紙包+竹皮
茶水 : タイ・チェンマイの飲料水陶器の瓶入
茶器 : マルちゃんの陶器の茶壺と茶杯

お茶の感想:
たまに苺のような香りが出る。
版納古樹熟餅2010年
版納古樹熟餅2010年
版納古樹熟餅2010年
版納古樹熟餅2010年
版納古樹熟餅茶2010年
チェンマイに滞在中は毎日SATIでお茶を淹れている。
+【Sati - the Art of Tea and Yoga】
Sati - the Art of Tea and Yoga
Sati - the Art of Tea and Yoga
ひとりで自主練することもあれば、ヨガのお客さんに淹れることもあれば、現地に住む日本人たちに淹れることもある。
夜はNOTHのJAZZで身体にリズムを注入。
チェンマイのJAZZ
チェンマイのNOTHのJAZZ
ビールはラオスの黒。

茶学・水音を聞く

チェンコーンのメコン川
チェンコーンのメコン川
チェンコーンのメコン川
水音を聞く。
茶学の参加者みんなで聞く。
水音を聞くときはだれでも静かになれる。心地よい音楽のように、外側に向いていた意識が自分の内側に戻ってくる。
心がシンとなって、お茶の余韻を味わう準備ができる。
古池や蛙飛び込む水の音
また、リズムもそこに発生する。
茶壺から杯へ落ちる水滴のポトポトや、杯から杯へと注ぎ分ける一瞬の間がつくるリズム。
聞こえる効果と、聞こえそうで聞こえない効果と、どちらもあるからお茶を淹れる人が水音を立てるか立てないかは自由。また、偶然が作用してなかなか思い通りにはゆかないのが現実。
けれど、意識することが大事。
音楽の演奏のように、美しい音とそうでない音ははっきりしている。
茶学・水音
水音はミクロの世界で水のカタチを変える。水のカタチが茶葉の成分の配列を変える。そしてお茶の味を変える。お茶の味は飲む人の気持ちを変える。人の気持ちはめぐりめぐって世の中を変える。
茶器を楽器のように操って、いい水音を鳴らしてみたくて、うずうずしてきたでしょ。

茶学・水を制する

手のひらにのるほどの小さな茶壺をあやつって、もっと小さな杯へ茶を注ぎ分ける。
それだけなのに度胸が試される。
茶学
水は、やさしい動きでないと荒れる。やさしすぎてもだらける。
お茶の味もまたそうなる。
水に勢いやチカラを与えるには、重力を利用する高さと手のスピードがいるけれど、チカラが入って硬くなると跳ねて散る。柔らかな動きで小さな茶壺や杯の中いっぱいに渦巻く流れをつくるその加減は、誰もが子供の頃から経験していることだから、小さな茶壺と杯を見ただけで直感的に慎重と大胆の綱引きになることを悟るだろう。
慎重な人は大胆を心がけ、大胆な人は慎重を心がける。どちらにしてもギリギリを攻めないとツヤツヤした水質のお茶にはならない。
だから緊張するべし。
茶学では、水をいくらでもこぼせる受け皿のある茶盤を使わずに、こぼれると気になる平たい板を使う。ときには机の上そのままや、布を一枚敷くだけにする。
一滴もこぼさないよりも、ちょっとこぼすくらいの勢いがほしい。こぼしすぎると淹れ手の乱れが現れる。
そんなこと、言われなくてもみんな自分でわかっている。
茶学
水を制するのは、自分を制する技術でもある。

越境野生青餅2010年 その4.

製造 : 2010年4月
茶葉 : ミャンマーJing dong 野生古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 京都プラスチックバッグ密封
茶水 : タイ・チェンコーンの浄水器+大瓶
茶器 : 小さめの茶壺チェコのマルちゃん作
越境野生青餅2010年プーアル茶
越境野生青餅2010年プーアル茶

お茶の感想:
チェコのマルちゃんが日本語で「ガツンと青プー」という言葉を覚えてきた。
どうやら滋賀の陶芸作家さんのところで作陶したときに、窯の熱に汗をかきながら徹夜の火の番をして、喉の渇きを癒やすための生茶を飲んだらしい。
作家さんたちのあいだで男のお茶・労働のお茶という意味を込めた「ガツンと青プー」というのが合言葉になっていた。
もっとガツンとしたのはないのか?みたいな話になって、宴会をするときにこのお茶を持って行った。
+『越境野生青餅2010年』
手元にあるお茶の中ではもっとも野性味がある。
ヘビー級のパンチを喰らわせてやる。
底なし沼に沈んでゆくような茶酔い。
全身のチカラが抜けて風呂あがりの気分になれるのは、西双版納の西側のミャンマー寄りの古樹のお茶に多い体感だが、『越境野生青餅2010年』はもっと重い。引力が強くて寝そべりたくなる。
強いわりには気持ちが高ぶるようなことはなく、低いところを漂う。
越境野生青餅2010年
お茶を飲むと酒の酔いがリセットされて新しくまた酒がはじまる。
酒ーお茶ー酒ーお茶ー酒ーお茶、だいたいこのあたりで記憶が無い。
つぎの日の朝にあたたかい布団の中に寝かされていたことに気がついて、ふと隣を見たら、同じように記憶を失ったであろう滋賀の陶芸作家さんの顔が布団から出ていた。
あとで聞いたら、酒を飲まないマルちゃんと、酒に飲まれない若い印鑑彫師さんとが、自分を引きずって布団の中に入れてくれたという。ガツンとパンチを喰らったのは自分と陶芸作家さんの2人だった。
次の日、季の雲のマルちゃんの展覧会で、若い印鑑彫師さんの書のパフォーマンスがあった。
大きな紙に大きな筆で茶の樹が絵描かれて、その場で刃物で彫られた茶の花とつぼみの印が押されて、”命”という字が真ん中に書かれた。
昨晩の酒ーお茶ー酒ーお茶の、リセットするチカラになにかを感じて、世の中で起こっているいろんなことと合わせて、”命”の字が思い浮かんだと、若い印鑑彫師さんはこの作品をみんなに説明された。
まっすぐはカッコいい。
チェンコーンのメコン川
チェンコーンのメコン川
今日、タイのチェンコーンのメコン川沿いのゲストハウスで、ひとりでこのお茶を飲んでいる。
そして思い出したのだった。
やはり重い茶酔いで、低く沈んでゆき、身体のチカラが抜けて眠くなる。キーボードを打つ指さえも重くなる。
そういえば、滋賀の陶芸作家さんとギャラリーのオーナーさんとが、後日このお茶をお求めくださった。
酒の記憶は忘れても、お茶の記憶は忘れない。

茶学・水の振動

茶学は、いつでもやる。どこでもやる。だれとでもやる。何度でもやる。
今日はチェンマイからチェンコーンへ移動。チェンコーンで少数民族の手工芸品やアンティークの店をする女性の主人と茶学の話になった。
興味深そうに聞いていたが、
「お茶の味の違いは微妙で、わからないない人もいるでしょう?あなたの舌はそういうのに敏感だけれど・・・」
と言う。
味の違いは誰でも分かるし、参加者全員にわかる。その感じ方も全員が一致する。それを今ここで証明しよう・・・ということで即興の茶学となった。
道具はそろっていない。
最近どこでも持ち歩いている小さな茶壺がひとつと、携帯用ポットに入れていたアツアツの熟茶(版納古樹熟餅2010年)が450mlほど。
茶学 水の振動
小さな茶杯を2つ用意してもらって、携帯用ポットから茶壺に注ぎ、そして杯に注ぐ。同じ茶葉、同じ水、同じ茶器。しかもポットのお茶はすでに煎じてあるから、この時点でのお茶の味はひとつ。
茶壺から杯に注ぐ、その注ぎ方だけが彼女と自分の唯一の違いとなる。
「そんな微妙な違いは私にはわからないよ。」
彼女はそう言うが、お構いなしに茶壺から杯に注いでもらって、1杯目を飲んだ。
その感覚を覚えておくように言って、こんどは自分が杯に注いで、2杯目を飲んだ。
「・・・・・・」
やっぱりわからないと言う。
もう一度行う。
茶壺を彼女にわたして自分の杯に注いでもらって、3杯目を飲んだ。
ここで彼女は気がついた。
あまりにもお茶の味が大きく違っていたので「マジック?」と疑いだした。
もう一度行う。
今度は自分が注いだが、より違いを強調するために、杯を手に持って底の中心あたりをトントンと指で軽く叩いて水の波紋を起こす技術を試した。これは日本でワインの達人に教えてもらった技術だが、お茶にも応用できる。
その杯を彼女にわたして、4杯目を飲む。
自分のお茶は軽快でまろやかで、彼女のお茶は重くて渋い。明確な差が現れている。
仕掛けはなにも無い。ただ、茶壺から茶杯に注ぐ、その水の落ち方、波紋の広がり方、空気の小さな泡の立ち方、弾け方。水が微妙に振動して、水に溶けるお茶の成分が性質を変える。
茶学水の振動
(写真はチェンマイの生徒さんの落とす水。)
水の音や波紋の美しいのは、お茶の味も美しくなる。
個人的には、味だけでなく体感、つまりお茶の効能まで違ってくると思っている。
美味しいお茶を淹れるには、まず水と仲良くなること。そのためにはどういう動きをするべきか、心と身体がどういう状態であるべきか、考える必要がある。
「そう、だから私はハンディークラフトやアンティークなのよ!」
と、彼女の中でいろんなことがいっぺんに繋がった様子。
なぜ、水の振動の違いが全員にわかるのか?
なぜ、感じ方までも一致するのか?
それはおそらく体内の水もまたその振動のカタチに反応するからだろう。お茶の味わいを知るのは敏感な味覚のあるなしではない。
茶学 水の振動
人体の60%は水である。

茶学はじまる

茶学
茶学
お茶づくりのオフシーズンは道場をひらく。
2人以上いて、湯を沸かすことができればどこでも道場になる。
ひとつの茶葉を決めて、ひとりずつ順番に淹れる。同じ茶器で、同じ水で、3煎もしくは4煎で終わるというルールで、その場にいる全員にお茶を淹れる順番がまわってくる。
これを「茶学」と呼ぶことにする。
上手であろうが下手であろうが、美味しく淹れることに力を尽くす。そのために水や茶葉や茶器と調和する。
ただお茶を淹れて飲むだけのことなのに、あらゆる段階で試すチャンスがあり、試される関係がある。
すべてがお茶の味や水質に現れるから、他人に言われなくても自分で気付くことができる。学びのお茶「茶学」。
茶学
茶学
すでに京都とチェンマイで、いろんな年齢のいろんな故郷の人が試して、試されたけれど、学ぶ喜びは同じ。
子供も大人もベテランも初心者も、いざ淹れる番がまわってくると真剣勝負になる。微笑んでいようが硬直していようが眼の奥の光に変化が現れる。
この一杯が新鮮な美味しさであってほしいと願う気持ちが、競争心や個性となって現れて、自然にドラマができる。
例えば3人で茶学をすると、3人✕4煎=12杯、同じお茶を12杯飲むことになるが、1杯1杯に個性が現れ、印象が異なる。
水と茶葉と茶器と、そして淹れる人との完全な調和の1杯には神が宿る。宇宙の法則に触れた瞬間、その美しさ、ツヤツヤの水質に、なにも言わなくても参加者全員が気付くだろう。
「ありがとうございます。」
終わるときには心からこの言葉がでてくる。
茶学
茶学
場所はいつも素晴らしい環境とは限らない。周囲の音がやかましかったり、参加者全員がキューキューになって座るしかなかったり、子供の走り回る家だったり、暑かったり寒かったり。
茶器も完璧なものは揃わない。人数分にピッタリの大きさではなかったり、持ちにくかったり、注ぎにくかったり、杯の大きさが揃わなかったり。
水は、いつものミネラルウォーターを買えなくて、水道水しかない場合もあるだろう。
はじめからあきらめてはいけない。できるだけ理想に近づけようと準備するのが大事。そうじゃないと人間がだらける。
茶学
努力はしても、いつもなにか揃わない。思いがけないアクシデントもある。
その問題とどう対面するか、淹れ手ひとりひとりに姿勢が問われる。
条件は、参加者全員に平等である。
あなたならどうする?
自分ならどうする?

巴達古樹紅餅2010年紅茶 その17.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 西双版納ー上海密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 白磁の蓋碗

お茶の感想:
2010年につくった紅茶を熱風乾燥してみることにした。
このお茶。
+【巴達古樹紅餅2010年紅茶】
知り合いの製茶農家は昨年から紅茶ばかりつくっている。なので熱風乾燥の機械がある。
この紅茶は天日干しで仕上げているので、熱風乾燥はしていない。
餅茶へ圧延加工するときの蒸気が唯一70度以上の熱による変化。
70度は、茶葉が生まれながらに持つある種の酸化酵素の効力を無くしてしまう温度。
ここで、酵素について誤解が多いのでカンタンに説明する。
酵素は温度や湿度(水分)に反応して、まるで微生物のような働きをすることがあるが、生きものではない。タンパク質の一種で、いろんな種類があり、ミクロの世界で成分を結合させたり分解させたり、化学反応させる。
茶葉にはいろんな酵素がある。
70度を超える熱で効力を失うある種の酸化酵素というのは、茶葉を枯れ葉にしようとする働きがあるもの。
茶葉が生まれながらに持っていて、茶摘みした瞬間からこの酵素は働きだす。適度な水分と温度に反応するので、製茶の工程では、陰干したり、晒干したり、ゆすったり、揉んだり、袋に包んで保温したり、茹でたり、蒸したり、炒ったりして、その働きをコントロールして、無発酵や微発酵や軽発酵や全発酵を調整して、緑茶や白茶や青茶や紅茶などをつくり分けることができる。
機械乾燥
お茶づくりに活躍する酵素はこの他にもあって、例えば微生物発酵の黒茶のように外部からやって来た微生物がつくりだした酵素もある。お茶の成分を変化させて、茶気の毒性を弱めたり、栄養価値を変えたり、保存に強い抗酸化作用を得たりする。
その他にも、どれがどう作用しているのか、どういうふうに相互に関連しているのか、まだ解明できない働きもあるだろう。
地球上のありとあらゆる有機物質の変化には、いろんな酵素が活躍している。輪廻転生をつかさどる神かもしれない。
巴達山
巴達山
世界中の紅茶づくりは熱風乾燥が一般的。
熱い風によって酸化酵素の作用を死活化させて軽発酵を止める。これで保存時の味の変化をふせぐ。
生産の都合からしても熱風乾燥は良い。天日干しだと雨の日にはつくれないし、空に雲がたくさんあったり、空気が湿っていたり、気温が上がったり下がったり、天気に仕上がりを左右されなくて済む。
若葉の成長が早い雨の季節でもお茶がつくれるから、生産量が飛躍的に上がる。
夏の雨季の雲南省南部では、機械乾燥なしで廉価な紅茶はつくれない。
つまり、一般に流通するほとんどの紅茶は旬を外した茶葉が多いことになる。
自然栽培の良さを追求するなら、ほんらいは茶摘みをしないで茶樹を休ませたほうがよい夏の雨季(4月中旬から9月末)に、どんどん摘んでどんどん紅茶をつくるから、茶樹は疲れて品質は低下する。
西双版納では近年になって紅茶や月光白(白茶の1種)の生産量が増えてきている。
これをすると生茶の茶葉が質を下げるので、もしも夏に摘まない約束を農家とするなら、保証金を払う必要がある。
生茶にするはずの春の旬の茶葉でつくったこの紅茶『巴達古樹紅餅2010年』は、乾季から雨季になる前の早春につくったので、天日干しで仕上げられる。常温で乾燥した良さがあると考えている。
圧延の蒸しはほんの数十秒以内で、もしかしたら酵素を死活化できていない。
また、高温乾燥によって出てくる風味もあるにちがいない。
この餅茶をそのまま熱風乾燥してみて比べるとよいだろう。
機械乾燥
機械乾燥
機械乾燥
ということで、餅茶を包み紙のまま機械乾燥させた。
時間は1時間ほど。熱風の温度は一時的に90度を超える。
乾燥後すぐは風味が安定しないから、1ヶ月ほど待ってから飲み比べした。
西双版納・上海・京都・東京でいろんな人がこの2つの違いを体験した。
機械乾燥しない”生”のままの紅茶には、涼しい口感、涼しい喉ごし、涼しい体感がある。ヒヤッとした水質が感じられる。香りもまた涼しいということがわかった。
機械乾燥したものは、はじめのほうの煎の香りの立ち方はしっかりしているが、”燥”と中国の茶友はひとことで表現した乾いた口感がある。胸が焼ける。2つを同時に比べないとわからないほどの少しの差である。
巴達古樹紅餅2010年
”生”と”火入れ”の違いは保存熟成の変化にも影響するかもしれないので、これから観察してゆく。

2016年1月16日 長浜 季の雲 マルちゃんの展覧会。
季の雲
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