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茶教室・京都

香椿林青餅2016年 その2.

製造 : 2016年4月1日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 農家
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納 密封
茶水 : チェコの水道水・ブリタ濾過
茶器 : チェコ土の茶壺と宝瓶
クリコフの道

お茶の感想:
お茶づくりで西双版納の山の人の家に泊まり込んで寝食をともにするように、今回はチェコのマルちゃんの工房に泊まり込んでいる。
西双版納の山の人の生活は、生きている世界が違う。時代が違う。なじめないこともある。
それを考えたらチェコの工房の生活は楽。自分と同じ世界、同じ時代にマルちゃんは生きている。ちょっと変人なだけ。
西双版納の山の人は、半自給自足の農業から脱して、経済社会の仲間入りをはじめたところで、もっと消費を増やそうとしている。
マルちゃんは自ら選んで消費を減らそうとしている。
チェコはヨーロッパの中では田舎かもしれないが、町に住めば世界の大都市と同じ生活ができる。田舎の村へ行っても不便はない。プラハの都会っ子として育ったマルちゃんは、できるのにしないという選択で今の生活をしている。スローライフというのかな。
マルちゃんは菜食主義だが、これも都会の人だからこその思想で、山の人にその発想はない。布朗族の古い仏教のお寺は菜食主義だが自由に選択する余地はない。
この違い。どうなのだろ。
土の成形が失敗した例
スローライフの思想は作品に反映している。
例えば、土の成形。
茶壺の注ぎ口を胴体にくっつける作業のときに、マルちゃんの手元がくるって胴体がちょっとだけ凹んだ。叩いたり揉んだりして直したはずなのに、焼きあがってみると少し元に戻っている。
形状記憶というやつか。
無意識がモノのカタチに現れることがある。
菜食と肉食は、作陶の成形になんらかの影響があるだろう。
成形だけでなく、釉薬のかかり具合、薪の火加減、あらゆる過程で無意識が現れる。
作品には作家の生活が反映する。
マルちゃんはそこを気にしている。
台所
マルちゃんの作品はだいたいちょっと不便にできていて、使った後の手入れにもちょっと手間がかかるので、丁寧な生活のできる人向きである。
丁寧な生活をすると収入が減る。
単純に、稼ぐために働く時間が少ない。
水漏れする茶壺
水漏れする茶壺
今回いくつか選んだ茶壺の中に、ひとつ水漏れするのがあった。
粗いシャモット(耐火レンガを砕いた粉)の混じる土で焼かれたこの茶壺は、小さな空気の泡が内部にいっぱいできすぎて、湯がじわじわ表面に漏れ出てくる。
水滴が落ちるほどではないが、蒸気になって出てゆく。
香椿林青餅2016年
『香椿林青餅2016年』。
ゆっくり抽出するのを待っていたら、部屋いっぱいに爽やかなお茶の香りが広がった。茶壺の胴体から茶の香りの湯気が出ている。
香椿林青餅2016年泡茶
面白いけれど、手入れはちょっと面倒で、使った後はすぐに洗って乾かさないと、細菌が発生して臭う。
忙しい人は、あまり使わなくなって、インテリアになるだろう。
食事

厚紙黄印七子餅茶 その3.

製造 : 1995年
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県大葉種喬木晒青茶
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶崩し
保存 : 香港ー広州ー上海−日本ーチェコ密封
茶水 : チェコの水道水・ブリタ濾過
茶器 : チェコ土の茶壺と茶杯
窯入れ
氷柱
火入れ開始
薪をくべる
窯の炎
焼けるレンガ
窯に吸い込まれる炎
煙突から吹き上がる炎
燃え上がる炎
1270度
窯の隙間から見える赤い火
窯出し

お茶の感想:
茶壺をオーダーするつもりでチェコに来たが、すでにつくられた茶壺の中から選ぶしかないとわかった。
自分が思ったようなのを作家がつくれるわけがない。西双版納の自然栽培のお茶と同じ。
窯出し
プーアール茶に向いていそうな茶壺をどう選ぶか?
持参した茶葉でお茶を淹れてみる。
窯出しの後、土の匂いを茶葉で煮て消してからお茶を淹れる。
水の注ぎ、重量バランスの良さ、持ちやすさ、など、すぐにわかることもあるが、わかるのに時間がかかるところもある。
持ち帰ってひとつひとつをじっくり使ってみるしかない。
半年以上かかるだろう。
プーアール茶向けの要素みたいなのを見つけたい。
グラスの杯
お茶の味わいと道具の味わいについて考えることがあった。
チェスケー・ブジェヨヴィツェのアンティークショップでマルちゃんが見つけたグラスの杯。
グラスの杯とチェコ土の杯に同じお茶を注いで飲み比べたときに、自分はグラスの杯が美味しくて、マルちゃんはチェコ土の杯が美味しいと評価した。
グラスは白磁の杯に似て、すべての味がまっすぐ現れる。
チェコ土の杯は味が隠れて、ぼやけたりくすぶったりする。
プラハのお茶の店のトーマスもグラスの杯を選ぶだろうとマルちゃんは言う。
仕事柄、自分はトーマスと同じモノサシでお茶の味を見ているかもしれない。
手元に試飲の順番待ち茶葉がたくさんあって、ひとつのお茶を一日かけて味わう暇はない。味が隠れているのは困る。
そういえば、最近ひとりでお茶を飲むことが多くなった。
試飲が目的なので、他人といっしょに飲んでいたら時間がかかって効率が悪い。茶友たちの無駄なサンプルを試飲するのを避けたい。
お茶の味だけを見たい。
茶壺を味わう
茶壺
お茶の味わいは味や香りだけではない。
茶会では、もっと総合的な美とか作法とかを鑑賞される。
茶縁という言葉があるように、お茶が人との出会いのきっかけになることもある。そうなるとお茶の味は重要ではない。
石の表
石の裏
チェコ土のマルちゃんの作品の味わいを味わう。そのためにお茶を飲む。
道具をつかいこなす味わいを味わう。
池のほとりの森
赤松の葉と雪
池の上を歩く
池の上でお茶の用意
凍った池の上で温かいお茶。
遠い昔にレンガづくりのために掘られた大きな穴に水が溜まって池になたところ。
小川が流れ込んでいるので水は綺麗。
夏は砂浜のビーチになる池で、キャンプの人でいっぱいになるらしい。
遠くに小さく見える人はアイスホッケーの練習をしている。
氷の上で飲んだお茶には特別な味わいがあった。
寒いだけでお茶の味など味わえなかった。
どっちなのかよくわからない。
家に戻ってから、かじかんだ手を薪ストーブにかざしてもみもみしながら飲んだお茶のほうが美味しかった。
氷の上でお茶
厚紙黄印七子餅茶
+【厚紙黄印七子餅茶】
マルちゃんの作品は、みんなが認めるようなものではないから、他人の評価にフン!という態度でいられるような、使う人に強い意志が要るかもしれない。

巴達古樹紅餅2010年 その19.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : チェコ土の茶缶・室内
茶水 : チェコの水道水・ブリタ濾過
茶器 : チェコ土の茶壺と宝瓶
チェコチェスケー・ブディェヨヴィツェ
チェコチェスケー・ブディェヨヴィツェ
チェスケー・ブディェヨヴィツェ
チェコのお菓子
ヤンの店

お茶の感想:
チェコの人は素朴で可愛いモノが好き。
そんなイメージがあるが実際にはわからない。
情報に誘導されて、そう思っているだけかもしれない。
中国のマーケットがわざとらしいモノを求めるので、中国の作家に茶壺をオーダーするのは難しいという話を前回にしたが、実際にはどうかわからない。そう思っているだけかもしれない。
西双版納の山岳少数民族には素朴な人が多いと勝手に思っていたけれど、それも情報の誘導につられていた。実際には逆で、お茶づくりでさんざんひどい目に遭っている。
自分の都合の良いように思いたい。
みんなそうだろう。
情報で誘導して商売につなげる。
マルちゃんはそうなることを嫌っている。
茶壺をつかう人ひとりひとりが、自分の眼で見て、自分なりに解釈して、自分なりの評価をしてほしい。
理想だけれど、でも、それは難しい。
他人の評価が多数集まるサイトやSNSの意見に頼る。
これが良いとか悪いとか教えてくれる先生を見つける。
作品そのものを見てもわからないから、人を見て判断する。
チェコ土の茶壺釉薬をかけているところ
茶葉もそうだけれど、はじめから真実を捉えることなんてできない。
1年くらい前には、チェコの土がお茶との相性が良いと言っていた。
現在は、あまり相性が良いとは思えない。
宜興の茶壺や景徳鎮の白磁の茶壺と飲み比べをしたら、チェコの土は劣る。
飲み比べというシチュエーションに無理があるとマルちゃんは主張する。
飲み比べをすることによって、口や鼻のほうに意識が集中する。この状態がすでに不自然で、お茶の味の見方が変わっている。普段お茶を飲むのに、口や鼻にそこまで意識を集中させたりしないから。
では、どんな方法で茶壺の性質を知ればよいのか?美味しいお茶を淹れられる機能を見つけられるのか?
何度も議論しては結論に至らず、午前2時頃になって疲れて眠る。そんな毎日の繰り返し。
寝ている間に頭の中でなにかが熟成して朝起きてふとひらめく。
巴達古樹紅餅2010年紅茶
巴達古樹紅餅2010年紅茶
今回はマルちゃんがなにかひらめいて、直線な胴体の宝瓶と丸い胴体の茶壺と比べることになった。胴体に湯の熱が伝わり跳ね返る、熱の反射が違う。湯を注いで蓋をしたときの上部の空間のカタチや大きさや違う。
+【巴達古樹紅餅2010年紅茶】
このお茶3gずつを計量。チェコ土の茶缶で1年ほど保存されている。チェコは空気が乾燥しているので、紅茶の熟成具合はなかなかよい。
巴達古樹紅餅2010年紅茶
シュッとした宝瓶とマルイ茶壺
お茶の味は器のカタチのまま現れた。
丸い茶壺のほうが美味しい。コロコロ転がるような舌触りの水。ふくよかな味の広がり。宝瓶はツンツンして辛い。茶気や香りが上に抜ける勢いはあるが、そっけない味。
葉底
丸い茶壺のほうが葉底が開いている。熱量がたくさん伝わったことがわかる。
マルちゃんがなにかひらめいたようでスケッチしていた。
スケッチ
上にマルく広がる茶壺はどうなのだろ?
白磁の茶壺にはこういうのがよくある。手に取るバランスが軽く感じられる。
一歩すすんだ。
クリコフの農家
クリコフの茶室
池の畔につくられた茶室。夏はここでお茶を楽める。
ブログの過去の記事に間違ったことを書いていてもそのままにしている。
新しい記事で間違いを改める。

チェコ共和国 冬 2017年

プラハの橋
プラハの川
プラハの町並
プラハの旧市街
1月6日からチェコ共和国にいる。
1ヶ月間ほど滞在する。
陶芸家のマルティン・ハヌシュさんに茶壺の改良をお願いするのと、チェコの壺で長期熟成をスタートさせるのと、お茶好きたちと交流するのが目的。
冬のチェコは寒い。初日からいきなりマイナス16度。
窯元のあるクリコフは過疎の村で、夏の観光シーズン以外は人口60人くらいのひっそりとしたところ。みんな家の中で寒さをしのいでいるので、村の通りを歩く人をめったに見ない。薪ストーブの火を絶やすと凍え死ねるだろう。
生活のために割く時間が長い。美味しいものをゆっくり食べて、温かくしてぐっすり眠むらないと身体の動きが悪くなる。
マルちゃんの作陶は一日一歩。歩みはのろいけれど、生活の味わいを味わっている態度が、土や火になんらかの影響を与えていると思う。
駅
マルちゃん
クリコフのレストラン
煙突
クリコフの窯元
ガラスの窓
ワークショップ
クリコフの窯
クリコフの窯
個人的に、昨年の夏頃からお茶を淹れる物理に関心を持っている。
このブログでもお茶淹れの技術や茶器の性質について書いているが、実は、チェコ土の茶壺でお茶を美味しく淹れるのは難しい。味や香りが土に吸い取られたかのように輪郭がボヤけたり、粗い土の鈍い熱伝導率が新芽・若葉を煮やしたりして、宜興の紫砂の茶壺や景徳鎮の白磁の蓋碗のような爽やで軽やかでキビキビした風味が得られない。
しかし、なぜかマルちゃんの茶壺を毎日使っている。
たぶん、造形の美しさ、手触りの心地良さ、重量バランスの良さ、水の流れの美しさ、などが、機能の弱みを補うのだろう。
お茶の味がちょっと劣るくらいはたいした問題じゃない。
チェコ土がどうしてもダメなら、他の地域から土を持ってくる手もある。その前に、土の粗さを変えてみたり、茶壺の胴体のカタチや厚みを変えてみたり、焼き方を変えてみたり、釉薬のあるなしを試してみたり、すぐにできる試みはある。
自分ならお茶のつくり方を変えてチェコ土に合わせることもできる。微生物発酵のお茶はチェコ土と相性が良いと思う。
マルちゃんと茶壺
チェコ土の茶壺口をつける
蓋の整形
チェコ土の茶壺
「日本や中国の作家に頼めないのか?」
何人かにそう聞かれたが、出会いがなかった。
茶壺づくりは、注ぎ口や蓋や取っ手のつくりが繊細で面倒な作業なので、普通はやりたがらないが、その点、マルちゃんは自称「お茶オタク」だけあって楽しんでくれる。お茶談義をしながらあれこれ飲みだすと徹夜になる。
中国の作家にはお茶好きが多いが、なかなか難しい。例えば、人のわからないところに嘘をついて利益を得たり、ホンモノを超えるコピーを安くつくろうとしたり、個性の強調しやすい絵付けや飾りにこだわって手っ取り早く高価にしたり、すばらしい技術があっても威張った感じに表現したり、自分に都合のよい品質基準をつくって優劣を主張したり、大量生産でコスト削減のために分業して個性を失くしたり。
すごく良いのは高かったり。
茶壺120万円
(中国の作家モノ茶壺120万円 上海のお店で撮影)
しかし、これは作家の望んだことではなくマーケットの望んことだと思う。
お茶もそうだが、人々が望むものしか結果的には残らない。マーケットの望んだようなモノが生産される。これに逆らう仕事は経営面で難しくなるので、それでもつくりたいモノをつくって食べてゆくには、相性の良いマーケットを探すしかない。
モノには、つくる人がなんらかのカタチで映り込む。
選んで使う人の、なんらかを投影することにもなる。
このへんのところをマルちゃんはよく考えている。
それゆえに、美味しいお茶を淹れる機能を追求することにマルちゃんは頑張らないのだが、まあそれでもいい。
薪割り
薪ストーブ
薪ストーブ
マルちゃんの焼いたお菓子
ワイン
白い枝
ところで、チェコはヨーロッパの中ではなぜかお茶に熱い人が多い。
例えば、首都のプラハは人口120万人で京都と同じくらいだが、プラハで勉強会をしたら参加者が10人も集まった。京都で勉強会をしても他府県からの参加者除くと、京都の人は1人いるかどうかだから、この状況からみてもチェコにはお茶好きが多い。
チェコには茶山がない。中国茶も日本茶もインドのイギリス茶も、みんな同じポジションであるから、どれかひとつこだわることなく全般的に楽しんでいる。マニアックなプーアール茶勉強会でも、初心者が足を運びやすいのだろうと思う。
お茶オタクから聞いた話では、チェコは1989年以前のガチガチの共産主義だった時代に、中国と物々交換のようなカタチで中国茶を入手していたらしい。
中国でも茶葉は専売公社が取り引きしていた時代で、良質のものが安かった。1990年代から徐々に茶業が民営化されるとともに、中国茶全般に質が落ちた。
そんな背景があって、チェコのお茶好きには経歴がある。良い時代の良い味を知っている人もいる。町にはTEA SHOPやTEA ROOMがそこそこあり、しっかり商売になっている。
しかし、当店のお茶はチェコの人たちには手が届かない。物価や人件費が安いので、高いお茶を売るのは難しいが、物々交換のようなカタチで、小さな工房のクラフトビール、モラビア地方の昔ながらのワイン、農家のつくった羊肉のサラミ、プラムを発酵させてつくった焼酎、オーストリアのホームメードのチーズ、そしてマルちゃんのチェコ土の作品とトレードする。
昔ながらのお茶の交易。
茶学4人分の茶葉
茶学
巴達生態紅餅2016年
葉底
写真は、『巴達生態紅餅2016年茶』で茶学しているところ。
チェスケー・ブジェヨヴィツェ
チェスケー・ブジェヨヴィツェ
チェスケー・ブジェヨヴィツェ
小さな町”チェスケー・ブジェヨヴィツェ”にあるマルちゃんの友達の店。
店主のヤンが抹茶を点ててくれた。
抹茶
抹茶
チェコには竹がないから、柄杓が陶器でつくってあった。
陶器の柄杓

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茶想

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