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茶教室・京都

刮風寨冬片老葉2016年 その1.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター水
茶器 : 銅のヤカン
チェンコーン空
チェンコーンメコン川

お茶の感想:
久しぶりに陸路で西双版納に来た。
タイのチェンコーンからメコン川を渡って、ラオス経由で西双版納に入った。
アパートに着くまでトゥクトゥクやバスやタクシーを7回乗り継いで12時間以上かかる。
このゴールデントライアングルのルートはバックパッカーなら楽しめるかもしれないけれど、目的がはっきりしている人には無駄もストレスも多い。
ラオスから中国へ出るボーダーが長蛇の列で予定時間を1時間半もオーバーした。
バスは自分を待たずに出発して、ひとりだけ置いてけぼりをくらった。
しかし、このままバスで移動を続けても、その日のうちにアパートまで到着できない時間だった。
中国側の国境の町で次の日のバスを待って一晩過ごすことになる。安いホテルはあるが、暗闇のあちこちで麻薬取引していそうな気味の悪いところだ。
そんなこともあろうかと昨日のうちに西双版納の友人に電話をして中国側の国境まで車で迎えに来てくれるよう頼んでおいた。
しばらく国境で待っていたら車が来た。
チェンコーンを出てちょうど12時間で予定通りに景洪市のアパートに着いた。
ちなみに、飛行機ならタイのチェンマイから昆明経由で遠回りだが移動は5時ほど。
一帯一路(中国からラオス・タイ・マレーシア・シンガポールまでをつなぐ道路や鉄道の計画)の影響で、大規模な工事による混乱はこれからもつづくだろう。5年と言われていても実際は10年かかるだろう。
あえて陸路で来たのはこの変化を見ておきたいから。
日本のように成熟しているところでは10年経っても風景はそんなに変わらない。
バスの窓から見るこのルートの風景は年々変わっている。工事のホコリにまみれた街道に生きる人々にはなぜか活気がある。
かれこれ7年の間に何度も通った車窓の風景に、ふと記憶の断片が蘇る。自分もまたずいぶん変わってきた・・・。昨日と今日の連続する日常が旅をするとプッツり途切れて大きな時間が見えてくる。
西双版納の茶業も大きな変革期の数年だった。
今年も春の旬が巡ってくるけれど、昨年と同じ仕事はもう通用しない。このスピードについてゆけない。
お茶づくりを休んでみようと思う。
山には行く。農家の手伝いはする。もちろん素晴らしい茶葉があれば少しは仕入れる。
惰性で去年と同じことをするのは止めよう。
ところで、昨年秋にはじめたオリジナルの熟茶づくりはいったんストップした。
試作中の茶葉はすべて処分して、アパートの庭の土にした。
実は、冬の間にあるサンプルの茶葉が手に入ってから、これまでの考えがひっくり返った。すぐに次のアイデアも出てこないので、しばらく寝かせることにした。
仕事をしないつもりなのに、西双版納に来ると忙しい。
あらゆる農産物と同じように、茶葉もまた人を休みなく働かせる。
まずはこのお茶『刮風寨冬片老葉2016年』を出品する。
冬片老葉茶2016年
刮風寨の”茶坪”という地名の森の古茶樹から採取した冬の大きな葉。
漫撒山の瑶族の独特の栽培方法で、根を育てるために大きく育った茶葉を枝から擦り落とす。
この落とした葉っぱをお茶にする。
このページで紹介している。
【丁家老寨青餅2012年 その2.采茶】
瑶族の人と山に入ったときに飲むお茶に近い。
茶葉を枝ごと折って取ってきたのを炙ってヤカンで煮るお茶。
炙る1
炙る2
これは炙るかわりに蒸している。
大鍋にグラグラ湯を沸かして蒸し器に茶葉を放り込み、熱を通してから晒干(天日干し)する。それだけ。冬のあいだに刮風寨の農家がつくってくれた。
晒干緑茶の一種で、これもプーアール茶と言えるだろう。この地域でつくられるお茶はなんでもプーアール茶にしておけばよい。
このお茶は瑶族やダイ族が食事のときに飲んでいるだけで、遠くへ運ばれる製品ではない。このままでは嵩がありすぎて馬で運搬できない。おそらく粉砕して黒茶の原料にしていたのだ。メーカーが原料を仕入れて加工する。その工程で微生物発酵するとさらに嵩が減る。圧延して固めたり竹籠にギュウギュウに詰めたらコンパクトになる。
西南シルクロードの茶馬古道を経て、チベットやインドに行った生活のお茶。
新芽・若葉でつくるお茶とは体感がまったく異なる。
カビの侵食
虫食い
紫葉
茶花
見た目は悪い。
1年以上も茶樹に付いたまま育って老いた茶葉もある。虫食いがあったり、カビの寝食があったり、枯れ葉になりかけていたり。
ところが、お茶の味は見かけとはまったく逆で清らかで柔らかい。苦くも渋くもない。ほんのり甘い。
白茶にも似た乾いた草のような香り。
煮るお茶
煮るお茶2
刮風寨の原生林の森の香りがする。
飲んだ後には森の影の涼しさがある。

香椿林青餅2016年 その3.

製造 : 2016年4月1日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)香椿林
茶廠 : 農家
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺
香椿林

お茶の感想:
お茶ができてから1年経つ。
【香椿林青餅2016年】
香椿林青餅2016年
香椿林青餅2016年
ここにきて、やっぱり美味しい。
だいたいひと月に1度は試飲していたが、ちょっとずつ良いほうに向かうのがわかった。
今は毎日飲みたくなるほどのバランスの良い味。
この味なら、20年も待つ必要はない。微生物発酵させる必要もない。
茶葉を少し
茶葉は少なめで、ちょっと濃くしたほうが美味しい。
舌の上でミクロな泡がシュワシュワする。実際には泡ではなくて、なんらかの成分が舌の上で一瞬のうちに変化しているのだろう。その後、ピリッとした刺激が消えるときに蘭香がチラッと薫る。舌の上から薫る。息を吐くたびに喉の奥のほうから薫る。
専門家によると、ピリッとしたのは香りの成分らしい。何らかの化合物となっていて落ちついた状態なので、アロマオイルのように揮発して鼻を強く刺激することはない。口に含んでから成分の結合がゆっくりほどけて溶けて、舌や喉を潤した茶湯の一部が水蒸気になるときに、息の出入りにいっしょに運ばれて鼻をくくすぐる。
典型的な内香のお茶。
チェコ土の茶壺
濃く淹れるのは、茶葉の性質に合わせてのこと。
香椿林の茶葉はもともと水分が多く、製茶工程での軽発酵が比較的すすんでいる。
軽発酵のすすんだ茶葉は熱に耐性ができる。じっくり待って抽出しても煮えたエグ味が出にくい。
逆に、熱い湯で淹れないことには、輪郭がぼやけてシャキッとしない。
一般的に、早春の新芽・若葉は繊細で、とくに一煎めを熱い湯で煮やすとエグ味が出やすい。
香椿林青餅2016年
振り返ってみると、圧餅の工程で晒干(天日干し)するときに、餅面の色の黒さが際立っていた。
同じ漫撒山の『一扇磨青餅2016年』よりも黒っぽかった。
この色は良いサイン。
日陰に育つ茶樹であること。根の深い古樹であること。早春の成分が充実していること。新芽・若葉が柔らかいこと。などの条件が揃っている。
刮風寨との比較
刮風寨との比較
写真で比較している餅茶(右)は、昨年の春に広東の茶友がつくった刮風寨の生茶。
茶樹の大きさ、森の深さ、わかりやすい上質の条件はいずれも刮風寨のほうが勝っている。
しかし、茶摘みのタイミングが悪い。
昨年の春は早い時期から雨が多かったから、新芽の出る時期が遅い森の中の大きな古茶樹は旬を逃した。
やや早いタイミングで新芽を出す古茶樹は、森の中のは特に少ない。香椿林の森も同じで、采茶できたのは数本のみ。しかも茶葉が小さい。一日の収穫量が限られる。同じ人件費で森に入って采茶するわけだから採算が合わない。
採算の合うかどうかは人の都合。お茶の値段が高くなったら売れなくなる・買えなくなるのも人の都合。
人の都合のお茶がたくさん流通して、自然の都合にあわせたお茶は少ない。
香椿林青餅2016年泡茶

弯弓単樹B春の散茶2015年 その2.

製造 : 2015年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)弯弓
茶廠 : 曼撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 散茶
保存 : 紙包+陶器の茶缶
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の小さな茶壺
弯弓単樹B
弯弓単樹B

お茶の感想:
『弯弓単樹B春の散茶2015年』は、過去の記事で品種の特性のことを話した。
現在、熟成2年目になろうとして、はじめて姿を現した味がある。
濃いめに淹れたのを口に含むと、渋味・苦味が溶けながら香りに変わってゆく。
甘い香りと味にギャップがあって、ちょっとしたトリックが生じて、あれ?となる。
消えの早い渋味・苦味は、香りの成分でもある。
チェコ土の小さな茶壺
香りの成分が鼻に届いてようやく認知できるはずだが、時間差があって、お茶を飲み込んだ後の口の中で薫りだす。
内から薫る”内香”(nei xiang)。
渋味・苦味を流そうと唾液が出てくるときには、もうそれは消えている。唾液自身が甘いのかもしれない。
内香は森の中の日陰に育つ茶葉のもの。
太陽光をたくさん浴びる茶葉はアピールが強くて内香にはならない。
弯弓単樹B春の散茶2015年
昔の人は、お茶の香りからなんらかの薬効成分を聞き分けていたようだが、香りの感じ方から身体のコンディションを診ることもできただろう。唾液の酵素反応が香りを変化させる。鼻の感度が体調によって異なる。
茶酔いの体感にも個性がある。
漫撒山の内香は、おっとりした茶酔いで長い余韻が続く。背中の筋がゆるんで、お腹の底のあたりがぼんやり温かい。
春の旬の新芽・若葉でも穏やかで、頭に血がのぼるような上気を感じない。目が覚めているのに、眠いような感覚。
身体の内側にも。いろんなサインが出る。
チェコでダージリンの試飲
高級茶の価格について、チェコの茶商はこんなことを言った。
「美味しいお茶のちょっとの差には大きな価格差がある。」
美味しさを追いかけてやたら高いお茶を売ることにならないよう心掛けているらしい。
ちょうどダージリンのサンプルを試飲しているときだった。
生理的欲求を満足させるという観点から味の善し悪しを追求したらそうなるだろう。
インドのお茶だから、イギリス人の価値観なのかもしれない。
しかし、中国の高級茶は美味しさよりも薬効に価値がついている。薬効といっても茶酔いのような快楽のクスリとして。
自然環境の良さがそのまま身体に取り入れられると考えるから、人里離れた森のお茶に価値がある。
葉底

1

茶想

試飲の記録です。
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