プーアール茶.com

茶教室・京都

貢朝号三合社青餅07年 その1.

製造 : 2007年5月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山三合社古樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 陶器の壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺
壺熟成
貢朝号三合社青餅2007年
餅面裏

お茶の感想:
雨の季節はしっとりしたお茶が美味しい。
茶葉のコンディションも人のコンディションも変わる。
壺の中に保存していたのを試してみる。
『貢朝号三合社青餅07年』。
製造年が2006年だったか2007年だったか覚えていない。
易武山の町役場の職員が手元で熟成させていたお茶。
餅茶7枚モノ竹皮包み1筒×6筒=42枚/一件で竹籠に入って、部屋の隅に他の数件のお茶といっしょに積まれていた。
竹籠は埃をかぶって蜘蛛の巣だらけだったが、よくあること。品質に関わる問題ではない。
その部屋は閉め切ってもスキマだらけで乾燥は保てない。易武山は湿度が高いから、夏の雨季には湿度80%を越す日が多い。さらに、家庭の豆鼓(豆味噌)づくりをするのに、蒸した大豆をザルに広げて麹カビがびっしり生えるようなのを同じ部屋でしている。
豆鼓
豆味噌
(写真は乾燥し始めていて綿状のカビが消えている。)
微生物が活動しやすい温度と湿度があるということ。
味噌の麹カビはもちろん良性のものだが、黒茶の発酵の麹カビと同じとはかぎらない。
茶葉の赤黒い変色は微生物発酵をうかがわせる。
餅面表
餅面に光沢があるのは熟成の良いサイン。
もしかしたら易武山でも熟成がうまくゆくのでは?と思って、その後も易武山で個人の保存する茶葉を何度も試してみたがダメだった。
同じような体験を同業者からも聞いたことがある。
彼らもやはり良いものに二度と出会えていないから、なにか偶然が重なったときにだけうまくゆくのだろう。
そのくらいの確率。
貢朝号三合社青餅07年
味はどうかというと、それほどでもない。
1970年代から1980年代の香港倉で熟成された孟海茶廠の青餅の足元にも及ばない。ただ、風味の中にところどころ共通したものが見つかる。
葉底
葉底の新芽・若葉・茎の色がなるべく均一なほうがよいが、これは比較的良いほう。悪いサインの茎の黒焦げた色は見つからない。
プーアール茶の熟成の本場は広東省の沿岸部だが、2000年前後に香港倉が消滅してからは、これといった成功例が出ていない。
最近テレビによく取材されている東莞市の熟成専門業者の茶葉のサンプルを入手したので、昨年の勉強会で試飲してみたが、たいしたことなかった。この『貢朝号三合社青餅07年』のほうがましなくらい。
台湾には今も正しい味の熟成茶があるはずだが、過去に一度は香港倉で熟成されたものを台湾倉に移動したのが多い。それは台湾倉の成功とは言えない。マレーシアやシンガポールも同じ。新しいお茶から熟成をスタートさせなければ倉の良さが証明できない。
チェコの壺熟成
チェコのマルちゃんの工房で壺熟成中のオリジナルのお茶。
京都壺
西双版納・チェンマイ・京都・上海・広東・・・・いろんなところで壺熟成を試してみる。
壺熟成はどこに置くかでお茶の味が違ってくるから、そこが面白い。自分だけの熟成味をつくれる。
熟成は現物をもって証明するしかない。
いつか熟成自慢大会をしたい。

弯弓古樹青餅2014年 その6.

製造 : 2014年05月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)弯弓
茶廠 : 曼撒山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶崩し
保存 : アルミ茶缶密封
茶水 : 京都の地下水 
茶器 : チェコ土の茶壺
春尖の茶葉

お茶の感想:
熟成と”春尖”(chun jian)の関係を考える。
春尖とは早春の新芽・若葉のこと。
乾季の冬を越して根や幹や枝に蓄えられたエネルギーが新芽に集中する。
現在は春尖をたっぷり配合された餅茶は少ない。茶葉の生産量が増えているからだ。
春尖の採取できるのは数日間だけ。春の旬は5週間ほど続くが、ほとんどは春尖と呼べる濃度はない。需要が増えると農家の采茶は長期化する。収穫量の多い晩春の茶葉の生産量ばかりが増えて春尖の割合は減る。
近年は多くの餅茶が早春から晩春の茶葉を混ぜ合わせて餅茶にするので春尖の配合は少ない。
春尖が多いと味はピリピリ辛い。苦味がやや強い。体感も強い。
美味しさの観点からすると特別でもない。
例えばこのお茶。
+【祈享易武青餅2014年 その1.】
祈享易武青餅2014年
原料は一級品だが、早春から晩春までの茶葉が混ぜられるので春尖は少ない。森の古茶樹は日陰で育つものが多く、新芽・若葉の出てくるタイミングが遅くなる。どうしても春尖の割合は少ない。
大きめの新芽や茎
けっこう大きく育った新芽や硬い茎の部分が混じる。
しかし、味のバランスがよく、喉ごしやわらかく、体感もやさしい。ちょっと濃くしても美味しく飲める。
同じ年2014年の弯弓のオリジナルのお茶と比べてみた。
【弯弓古樹青餅2014年】
弯弓古樹青餅2014年
このお茶の春尖の割合は多い。
2014年3月15日頃と4月3日頃の2本の樹から采茶されている。後から考えると弯弓の古茶樹にしてはかなり早い采茶になる。比較的日光のあたる場所で育った茶樹がそうなりやすい。それゆえ早春のまだ乾燥した気候のうちに新芽が出て春尖の純度が高くなる。
弯弓と祈享
左: 弯弓古樹青餅2014年
右: 祈享易武青餅2014年
茶葉の大きさ。色の違い。
どちらも漫撒山の原生種に近い大葉種で、品種的な違いは無い。
春尖の繊維は小さく、柔らかく、茶漿と呼ぶ粘着性の成分が多く、圧延が緊密になりやすい。同じように圧延してもスキマなくガッチリ固まる。
泡茶
少し濃くしてみたら、やはり辛い。苦い。茶気がムンムンして、いったん喉から腹に降りてからまた胸に上がってくる感じ。ゲップが出る。
アルコール度数の高いお酒に似ている。
40度のウオッカはストレートでゴクゴク飲めないけれど、6%のビールはゴクゴク飲める。
春尖の唯一良いところは水質がきめ細かく舌触りがツルンと滑らか。このために甘いと感じることもあるが錯覚だと思う。ウィスキーのストレートでも上質なのは甘く感じたりする。
春尖の葉底
葉底(煎じた後の茶葉)。春尖の繊維は柔らかく指でカンタンにつぶれる。
お茶好きであっても茶気の強いのが苦手な人はけっこう多い。女性やお年寄りはとくにそう。
2014年の春は弯弓の茶葉のサンプルを多く試して、その中からわざわざこの茶葉を選んでいる。やさしい味のサンプルもあったけれどパスしている。
なぜ春尖にこだわるのか?
あまり意識しないでそうしていたが、振り返ってみると、老茶が自分の手本になっているからだ。
このふたつの餅面の茶葉の写真を見比べてほしい。
+【易昌號大漆樹圓茶04年】
+【7542七子餅茶80年代中期】
上が2004年の晩春の茶葉。色が薄い。黄金色した新芽が大きく育っている。
下が1980年代中期の早春の茶葉。色が濃い(黒い)。黄金色した新芽は爪の先ほどの大きさ。
1980年代のは春尖の多い特徴が現れている。
プーアール茶のいくつかのタイプの中で、1980年代のは清代の貢茶のカタチを継承する茶文化のお茶。交易で栄えた都市で販売されたお茶。生活のお茶ではなく嗜好のお茶。食・酒・煙草・薬草・茶。都市が求める快楽は生理的欲求から離れて、神聖なものを感じさせなければならない。
春尖にはそんなチカラが宿る・・・・というのが自分の見方。
熟成によって、強すぎる茶気は穏やかになるのか、熟成にどんなふうに有効なのか、13年後にははっきりするだろ。
易武古樹青餅2010年試作品
『易武古樹青餅2010年の試作品』。
黒っぽく艶のある餅面。緊密に詰まった茶葉。黄金色した新芽は爪の先ほどの大きさ。春尖の純度が高い。
春尖の茶気の強いのは、お茶淹れの技術である程度カバーできる。
白磁の蓋碗のような熱を逃がしやすい茶器でサッと湯を切るとか、保温性の高い茶壺なら煮やさないよう工夫するとか。なによりも茶葉の量をおもいきって少なめにしたらバランスは良くなる。

巴達古樹紅餅2010年 その20.

製造 : 2010年04月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山曼邁寨古茶樹
茶廠 : 農家+孟海の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺
巴達古樹紅餅2010年

お茶の感想:
20年モノ30年モノの老茶は、長年の熟成によって性質を変える。
生茶のプーアール茶は”寒”が強いと言われるように身体の芯を冷やすが、30年も熟成させた老茶は”温”の性質に変わる。
漢方薬にも共通する知恵がある。
プーアール茶には歴史の途切れた期間があって、”昔ながらの製法”と言いながら微妙に違う。
製茶にも保存にも違いがあり、ほんとうは微妙ではない結果となる。
熟成がすすんでからそれがわかる。
巴達古樹紅餅2010年
今日はこのお茶。
+【巴達古樹紅餅2010年紅茶】
紅茶であるが一般的な紅茶ではない。
熱による加工の工程がわずかしかない。
圧延加工のときに茶葉を蒸す蒸気以外に、酸化酵素を失活させるほどの熱(70度以上)が入っていない。
蒸気はコンプレッサーで圧力がかかって100度を超えているものの、ほんの20秒ほどしか蒸らさない。
圧餅後は乾燥室で熱風乾燥させるが、室温60度以下で12時間ほど。
この状態で長期熟成したらどうなるか。
”生”な成分は熟成に有効かどうか。
はっきりしないまま、この製法の紅茶をつくりつづけている。
2011年・2013年・2014年・2015年・2016年。
2010年のこれが一番古い。
餅面の色はやや黒味が増したくらいでそんなに変化ないが、香りは変わった。
ラベンダーのようなツンとした鮮花のような香りから、ドライフラワーのローズを経て、ドライフルーツの杏っぽい香りになった。
巴達古樹紅餅2010年
熱に敏感な茶葉なので、お茶淹れは難しい。
熱に反応して一煎ごとに風味が変わる。
低温の湯では味が出ないし、まとまらない。高温の湯で抽出する必要がある。
熟成7年目になるが、なにも説明なしに他人に飲ませたら、熟成味に気付かないだろう。
チェコ土の茶壺でお茶淹れ
おもいきって濃くすると、かすかにチョコレート風味が出る。
これはメイラード反応(常温の焦げ)によるタンパク質の一種が焦げた味。
老茶のプーアール茶には必ずある。
福建省の紅茶に烏龍茶のように焙煎したものがあるが、それも同じようなチョコレート風味を持つ。
同じ年の2010年の生茶にはまだチョコレート風味が感じられないので、この紅茶の製法のどこかに昔ながらの要素があるにちがいない。
葉底
2015年の冬に、このお茶を機械乾燥して餅茶のまま焙煎を試したことがあった。
しかしこれは失敗。サンプルとして不十分。
焙煎には技術の差がある。

1

茶想

試飲の記録です。
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