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茶教室・京都

刮風寨古樹青餅2016年 その1.

製造 : 2016年4月23日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 生茶
形状 : 餅茶200gサイズ
保存 : 西双版納 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
チェコ土の茶壺
鉄瓶

お茶の感想:
ヨガを習い始めて3年経つ。
ずっと初心者だが、最近ようやく呼吸を味わえるようになってきた。
頭でわかっていても身体ではわかっていない。口で言うのはカンタンでもやれるのとは違う。
それでもまだ慣れていないせいで集中力できない。ただのストレッチ体操になる。
上海での”体感を探る”テーマの勉強会は、ヨガと同じように身体の変化に注目する。お茶を飲むごとに身体のどこかに起こっている変化を見つける。
お茶になにかを探すのではなくて、自分の身体のなにかを探す。
医食同源を理解するのに大事なところ。
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試飲する茶葉の一部
刮風寨古樹晒青茶 2017年4月 生茶 春 新葉
刮風寨古樹青餅 2016年4月 生茶 春 新葉
刮風寨単樹小餅 2016年4月 生茶 春 新葉
刮風寨冬片老葉茶 2016年12月 生茶 冬 老葉
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刮風寨は”茶王樹”と”茶坪”が古樹の二大群生地であるが、上の4つのサンプルはすべて茶坪のもの。同じ斜面の半径20メートルくらいにある古茶樹から採取している茶葉。
条件が絞られていて、ちょっとの違いに大きな違いを見つけることができる。
サンプルB
『刮風寨古樹青餅2016年』
今日はサンプル2番めのお茶を試す。
広東の茶友が刮風寨に泊まり込んでつくったもの。そのとき自分は現場にいなかったが、毎日のように茶友から報告を受けていたので手に取るようにわかっている。その後の圧餅の加工には参加している。
2016年4月23日采茶。春の旬をちょっと外した遅めのタイミング。それでも2016年の初摘みである。森の中の古茶樹は新芽の出る時期がやや遅い。
季節は雨季に入ったところ。雨を避けて晴れの日が3日間は続きそうなタイミングを見計らって茶摘みのアルバイトを手配して鮮葉を集める。茶友はもちろん茶坪の森に入って茶樹の下で監視している。
天気が良くて晒干までうまくできた。
葉の色が薄い
新芽が大きく育っていて、若葉の色が薄い。
やや雨の多い季節になったときの茶葉の様子。
繊維がやや硬く、粘着力がないので、揉捻のねじれが甘くなって、茶葉がより大きく立派に見える。
サンプルB
サンプルB
ひとくちでパッと燃え上がるような早春の茶気はないが、春っぽい陽気はまだ残っている。
早春に比べると茶酔いのアタリは穏やかで飲みやすい。
呼吸、鼻の通り、吐く息の温度、心臓の鼓動、舌や口の中の力のかかっているところ、喉から胸の通り、ゲップ、おなら、腹への収まり、耳鳴り、眼に入る光の感じ方、頭の血の巡り、手足の血の巡り、手足・首・肩・背中の筋肉、汗の出方、眠気、覚醒。などなど気付くところはいろいろある。
この訓練をしてゆくと、ふだんの食べものや飲みものの良し悪しは、身体が見つけてくれる。
葉底
葉底(煎じた後の茶葉)は、茶葉の質を見る。
お茶淹れの技術も現れる。

個人の体質だが、自分は上火しやすい。上火とは身体に熱がこもること。
上火するとまず眠りが浅くなる。全身がだるくなる。ものを食べるときに舌や唇の内側を噛んでしまったり、口内炎ができたりする。鼻水が出る。喉が乾いてガラガラ声になる。
風邪の初期症状と似ている。
勘違いして、体力をつけようとしてカロリーの高いものを食べると、火に油を注ぐのと同じ。
西瓜(スイカ)を食べるのが熱を取るのに早いが、季節外れでハウス栽培したものや、肥料をやりすぎているものは”涼”の性質を失っているので効かない。
ヨガは上火を鎮火させるのにも効果的であることを最近見つけた。
1時間半ほどかけてゆっくり基本動作を味わう。呼吸をお腹に送り込むの動作が効く。
どういう仕組みで熱を取り除くのか謎。
謎のままでも利用できれば十分。

益木堂那カ古樹純料茶2010年 その5.

製造 : 2010年3月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県孟宗山那カ寨古茶樹小葉種
茶廠 : 農家+益木堂
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 上海密封
茶水 : 京都の地下水 
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
益木堂那カ古樹純料茶10年
那カ古樹純料茶10年
益木堂那カ古樹純料茶10年

お茶の感想:
上海の友人の店に置いていたお茶。
+【益木堂那カ古樹純料茶2010年 その1.】
古茶樹の小葉種。
小葉種の茶葉は長期保存には向かない。
最近仲間うちでそんな意見が出ているが、どうだろ。
このお茶は2010年の出来たてのときは評価が高くて、毛茶(原料の茶葉)を仕入れたメーカーの担当者は会うたびそれを自慢するけれど・・・。
泡茶
泡茶2
実際にそうかもしれない。
新鮮なときの美味しさを失っている。
苦味が粘着質でスッキリしなかったり、欠点が目につく。
たしか2013年頃までは美味しく飲んでいた。
ひとくちでパッと花が咲くような陽気さが小葉種のよいところだが、熟成すると輝きを失う。
この感じ、2010年のオリジナルのお茶にもある。
+【巴達古樹青餅2010年】
巴達山曼邁寨の古茶樹は中葉種。小葉種よりもちょっと大きく育つ茶葉だが、味の表現といい熟成のすすみ方といい、小葉種のものとよく似ている。
葉底1
葉底2
新鮮なお茶の味を活かすなら、餅茶に加工しないほうがよいし、長期保存もしないほうがよい。

蒸し暑い日がつづくせいか、冬の寒い寒いチェコのマルちゃんの工房で深夜に毎日見ていたお茶の番組シリーズ『一条 叶放訪茶』を思い出した。
見ていたら、そこから『茶有喝过才能说』につながった。
なかなかいい。
老茶の店の「03」「07」「12」「17」「20」がいい。薬膳の「13」もいい。かつて台湾にあった磚茶100モノを飲む「15」もなかなか。有機栽培のお茶を比べる「21」は希望の光。茯磚茶の「24」「25」はシブい。
山の中に竹の茶室をつくった「02」のだるまさんみたいな主人は一度お会いしたことがあるが、そのときの印象そのまま。
「私キレイでしょ」を見せ合うパーティーピーポーなお茶会は苦手。
女子が集まって「その服いいね!」をほめ合う必要性が、男子には理解できない。
女子趣味に合わせて、男子までも茶人服で襟巻きしているのはキモい。
女性のチカラが強くなっている時代の流れ。
その点、老茶専門店の大阪の人みたいな豹柄シャツで我が道をゆくおっさんはカッコイイ。もはや希少で、その人自身が老茶である。
自分も老茶になる。

老班章古樹純料茶10年 その2.

製造 : 2010年5月
茶葉 : 雲南省西双版納孟海県老班章古茶樹 老班章茶農協会認定
茶廠 : 孟海鴻福茶廠
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 上海 密封
茶水 : 京都の地下水 
茶器 : チェコ土の茶壺+鉄瓶
チェコ土の茶壺

お茶の感想:
上海の友人の店に預けていた餅茶が数枚戻ってきた。
3種ほどあって、しばらく飲んでいないお茶ばかりなので確かめておく。
まずは老班章の2010年。
『老班章古樹純料茶10年』
老班章純料2010年
西双版納にいると試飲する機会の多い老班章のお茶。
この茶山の原料の茶葉価格が年々高騰してゆくのが恒例のニュースになって、中国全土にブランドが浸透している。
マーケティングがうまくいった茶山。
自分は好みではないから老班章のお茶は無視。
現地の茶友らはちょくちょく行くので、「これはどうだろ?」とサンプルを持ってくる。1ヶ月に1つは老班章を試飲する機会がある。
ニセモノもホンモノも含めて、美味しいと思えるのと出会えるのは1年に1つあるかないか。
高騰した価格に見合うものなどめったにない。
老班章にはひとつ気がかりなことがある。
茶葉が高騰したため新班章と称する茶地の開拓が周囲に広がった。2008年にはすでに周囲の山の広大な森林の開拓がはじまっていた。森を大規模に失った環境のバランスがお茶の味に影響するはず。
老班章純料2010年
久しぶりにこれを飲んでみると、意外と上質だった。
過去の記事には「舌にへばりつく苦味」と書いているが、適切じゃない。「余韻の長い苦味」と言うべきだろう。
とにかく苦味が美しい。清い感じがする。
透明感に深みがある。
余韻の広がりに風景が見える。
抽象的だが、美味しさが上にゆくほど抽象的な表現になるものなのだ。
逆に、具体的な表現をさせるお茶は安物に多い。
体感はというと、暑い日に涼しい。
豊富なミネラルのせいか、足の指に血がめぐる。毛細血管が開いて軽く汗をかく。穏やかな茶酔いが眠りを誘ってウトウトする。
7年目になる熟成の風味は、乾燥を保っていたので大きな変化は無いが、ノイジーな味が落ちてクリアーになったと思う。微かに蜜のような甘い香りが加わった。
煎がすすむと吐く息・吸う息にお香の煙のような香りが漂う。この山の原生種の特性が現れている。
老班章純料2010年
ひとつメモしておくと、この茶葉は5月の2番摘み。例年なら春の旬を外しているが、しかし2010年は80年ぶりの干ばつで雨が少なかったので、2番摘みはいつもの1番摘みの終わりくらいのコンディション。小さな新芽・若葉に旬の濃さが現れている。
茶樹の背が高いほど芽の出る時期が遅くなるので、もしかしたら大きな茶樹の1番摘みかもしれない。
葉底
葉底。茶葉の繊維がやや硬くなっている。
茶葉にはいろんなことが記録されている。
2010年5月の老班章の山の環境も茶樹の健康も。
お茶を淹れるとそのときが蘇る。

刮風寨冬片老葉2016年 その2.

製造 : 2016年12月(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家
工程 : 晒干緑茶
形状 : 散茶50gパック
保存 : 密封
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の宝瓶+鉄瓶
冬片老葉

お茶の感想:
いろんな人にすすめたがあまり反応がない。
+『刮風寨冬片老葉2016年 その1.』
たぶん、これ独自の良さが伝わっていない。
いちばん良いところは、飲み疲れしないこと。
30年モノの老茶と同じレベルだと思う。
成長した大葉の成分は身体へのアタリが柔らかい。
冬茶の厚い葉や茎はでんぷん質を多く含むからお腹への収まりがよい。
毎日たくさん飲んでも問題なし。
冬片老葉
冬片老葉
このような穏やかなお茶は近年少なくなっている。
毎日の生活の中でたくさんお茶を飲む人が減っている。
プーアール茶だけでなく中国茶全体を見ても、売れ筋は飲み疲れするようなアピールの強いお茶ばかり。
SNSなどで口コミしやすい、わかりやすいお茶がウケル。ちょっと飲んだくらいではわからないお茶なんてウケない。
プーアル方茶80年代
写真は碁石茶。
4年前にこのブログで紹介している
このお茶ももともとは生活のお茶。アピールが弱い。
冬片老葉と同類。
冬片老葉
冬片老葉
今年の春にチェコの若い茶商が西双版納に訪ねてきて、冬片老葉をたくさん持って帰った。
毎月のお試しセットでいろんなお茶と一緒に箱に詰めて200人の会員に配るらしい。15gに小分けするそうだ。
「そんなのでこのお茶の良さはわからないよ!」
と言ってみたものの、
「それしか茶葉を売る術はない。」
と返されて、なにも言えなくなった。
冬片老葉
自分も毎日飲むことにはならないので、他人の事は言えない。

プーアル方茶80年代 その1.

製造 : 1980年代後期
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海茶区
茶廠 : 孟海茶廠(国営時代)
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 未入倉
茶水 : 京都地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶
プーアル方茶80年代
プーアル方茶80年代

お茶の感想:
茶葉を整理していたらこんなのが出てきた。
+【プーアル方茶80年代】
美味しいかというとそれほどでもないが、個性が際立っている。
8月に予定している上海の勉強会の候補として試飲してみる。
久々なので以前よりも熟成がすすんでいるはず。
チェコ土の茶壺
個性のありすぎる茶葉にはチェコ土の茶壺。
茶壺
かけ湯
めったにしないこんなこともしてみる。効果のほどは定かでない。
惑星のようなザラザラ肌が湯を吸って吐く。それを見たい。
チェコ土の茶壺
熱があるので蒸発してすぐ乾く。
プーアル方茶80年代
プーアル方茶80年代
ちょっと思い切って濃くしてみた。
苦い甘い。薬っぽい。仁丹みたい。
新芽・若葉の摘み時がよかったのだろう、水質はキメ細かく舌触りに潤いを与える。口に苦くてもスルッと入る。
30年くらい熟成したことで、身体へのアタリは穏やか。
孟海茶区の苦味からくる涼しさは健在。方茶ならではのスッキリ感がある。アミノ酸的な旨味の少ない健康な茶葉。
微かにチョコレート風味が感じられるようになった。熟成による変化。崩して保存しているので茶葉が空気に晒された効果もあるだろう。方茶は圧延が強く内側に空気が入りにくいので、固まったままだと熟成はゆっくり。
2007年に入手したときに比べると、甘味が増してずっと美味しくなっている。
葉底
1980年代のお茶だが、香港倉庫に入らなかった未入倉のものなので、茶葉にまだ緑っぽいところが残っている。

白牡丹生態茶2014年 その5.

製造 : 2014年4月
茶葉 : 福建省福鼎市磻溪大白茶種
茶廠 : 福鼎の農家
工程 : 白茶
形状 : 散茶
保存 : ステンレス茶缶
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・鉄瓶
鉄瓶

お茶の感想:
鉄瓶の湯には粘りがある。
保温力というか持続力というか、すぐに冷めにくい感じ。
鉄瓶から注いだ茶壺にも、茶壺から注いだ茶杯にも、粘りのある熱はつづいている。
これを高温という言葉で表現すると、デリケートな茶葉を煮やしてしまいそうだが、そうはなりにくい。
高温ながらやさしく熱が伝わる感じ。
『白牡丹生態茶2014年』。
熱にデリケートな茶葉。
一般的に、ちょっと温度を下げてみて・・・・となりがち。
鉄瓶の熱々の湯ならどうだろう。
茶壺
この白茶は2014年ですでに3年経っている。熟成の香りが現れている。かすかに漢方のような。
この香りは、温度を下げた80度くらいの湯では立たない。
かといって、沸き立ての湯を注いで蒸らすと酸っぱくなりやすい。渋味も出てくる。茶葉が煮えた状態。香りを立てると味が厳しくなる。
そこで、鉄瓶の湯の粘りに期待してみる。
例えば、熱い湯の風呂にザブーンと入ったら火傷するけれど、かけ湯して皮膚を慣らしながらそっと入ったら大丈夫。熱の伝わり方が違うとその作用も異なってくる。
例えば、鉄瓶から注ぐ湯の落ち方。茶壺の中での湯の熱のまわり方など、茶葉にやさしく熱が伝わる湯の流れをイメージする。
あくまで熱々の湯で香りを立てつつ味を柔らかくが目標。
チェコマルちゃんの急須
チェコマルちゃんの急須
チェコ土の茶壺は浅くて底が広いのを選んだ。
湯の熱は上に昇る。茶壺がタテに深いのは熱が茶葉に直接的にあたって煮やしやすい。底が広く浅いのは湯の熱が逃げたり、反射して間接的になるので柔らかい。
器をしっかり温めてから、妥協のない熱い湯を注ぐ。
白茶を淹れる茶葉を浮かべる
湯を注いでから茶葉を浮かべる。茶葉が自身の重さで沈むのを待つ。浮いているのはそのまま。蓋をして蒸らすと乾いた茶葉が湯を含んでゆっくり沈む。
風呂の熱い湯に片足ずつそっと入るように、茶葉を湯に慣らす。
3煎め
3煎めくらいまで浮かんだままの茶葉があった。
浮いている茶葉が蒸らされる空間を残すように湯の量を調整した。
湯を注ぐところを開ける
2煎めからは茶葉に熱い湯が直接当たらないようにした。
煮えることなく酸味は出なくなった。渋味も少ない。香りは立って生き生きとしている。
3煎・4煎とすすめても新鮮味がある。4煎めくらいでちょっと渋味が出たが、問題はない。
白牡丹生態茶2014年
白茶
白茶は前菜のようなお茶。主菜なお茶ではない。
プーアール茶みたいに10煎も続くのを自慢したりはしない。
サッと3煎くらいで終えるにしても、熱い湯でしっかり出し切れるほうが気持ちがよい。

ふと思いついて、紅茶を淹れてみた。
このお茶。
+【漫撒一水紅餅2016年】
漫撒一水紅餅2016年
漫撒一水紅餅2016年注ぎ
漫撒一水紅餅2016年
茶壺の口もといっぱいまで湯を注いでじっくり抽出したら、やはり煮えて酸味が強くなった。

7581荷香茶磚97年 その8.

製造 : 1997年
茶葉 : 雲南大葉種晒青茶景谷茶区
茶廠 : 中国土産畜産雲南茶叶進出口公司 昆明茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 磚茶
保存 : 西双版納 乾倉
茶水 : 京都の地下水
茶器 : チェコ土の茶壺・茶杯・鉄瓶

お茶の感想:
鉄瓶と白磁の蓋碗の相性を疑ってみる。
質感が違いすぎるからだろうか。
白磁の蓋碗
音が響くように熱も響く。
厚くて重い鉄に響く音と、薄いガラス質の白磁に響く音と、その違いと同じように熱の質も異なる。
茶葉への湯の浸透が異なり、お茶の味が異なる。
鉄瓶
鉄瓶肌
この写真を見てもなんとなくそう思う。
白磁と鉄瓶はあまりに異質。
鉄瓶の響きはゆったりしていて、チェコ土のマルちゃんの茶壺の波長と似ている。
チェコ土の茶壺
チェコ土の茶壺
こういう感覚は大事。
うまく説明できなくてもよい。
お茶の味に現れる。
その現物証拠で自分の感覚をそのまま他人に伝えることができる。
今日は熟茶で試すから熱量をしっかり茶葉に伝えたい。保温力のあるチェコ土の茶壺にした。
見かけは異なるが土質はほぼいっしょ。内側の釉薬はなし。
釉薬なしのほうが素直な味になる。
チェコ土の茶壺2つ
チェコ土の茶壺
公道杯は使わず、チェコ土の茶杯にそのまま注ぐ。
鉄瓶とステンレス電気ポット。
このお茶。
『7581荷香茶磚97年』。
7581荷香茶磚97年
1980年代の製法を再現した、ちょっと実験的な作品。
新芽・若葉を避けて成長するのを待ってから采茶した、繊維の硬くなった茶葉。揉捻で捻れないから開いたまま。茎の部分も多い。でんぷん質の多い秋茶ではないかと思う。
茶葉は季節や成長度によって成分構成が違うので、微生物発酵にも影響する。
1990年代からの熟茶は、味が濃く体感の熱いのが多い。その中でこのお茶はサッパリして体感は涼しい。
お腹の底から温まるが、夏に飲んでも暑苦しく感じない。
このタイプは、遊牧民らがヤカンに煮出してバター茶などにしていたもの。新芽・若葉のお茶のようにサッと湯を切るような淹れ方では成分が抽出しきれない。
茶壺で高温を長く維持したい。一煎ごとに湯を切ると茶葉が冷めやすいので、茶杯に注いで残った湯はそのままにして、上から熱い湯を足すようにする。
一煎め
左: ステンレス電気ポット
右: 鉄瓶
3煎めくらいまで、なぜかステンレス電気ポットのほうが茶湯の色が赤い。しかし味のボリュームの差はない。
口に含むと、やはり鉄瓶のほうが熱い。3分以上蒸らし時間があっても鉄瓶は高温を維持している。
味の印象は異なる。ステンレス電気ポットは味や香りがまとまっていない感じ。鉄瓶のはまとまっている。
いくつもの茶葉を試飲をするとき、口の中に広がる味や香りの方向を見る。方向がはっきりしているのは上等。例えば、上に抜けるとか下に沈むとか左右に広がるとか、どこか決まった方向のあるのがよい。バラバラで方向の定まらないのは上質ではない。
同じ茶葉でも、電気ポットと鉄瓶にはそんな差が出る。
7煎くらいまで進めたが、茶湯の色の濃さや味のボリュームには差がない。鉄瓶のほうが耐泡(煎がつづく)が良いというわけでもない。
ただ、味の印象が異なる。はっきり言えば鉄瓶のお茶のほうが美味しい。
葉底
葉底(煎じた後の茶葉)は同じ。
思っていたよりも鉄瓶は個性を主張しない。
湯が熱いからといって、お茶が濃く出たり特別に香りが立つというわけでもない。なにかを際立たせることも隠すこともない。素直に出る。
これから鉄瓶にする。
鉄瓶

章朗古樹春餅2016年・黄印 その2.

製造 : 2016年4月7日采茶
茶葉 : 雲南省西双版納州孟海県巴達山章朗寨古茶樹
茶廠 : 店長ふじもと
工程 : 生茶のプーアル茶
保存 : 密封
茶水 : 京都地下水
茶器 : 白磁の蓋碗・鉄瓶・ステンレス電気ポット
八角鉄瓶

お茶の感想:
今回入手した鉄瓶はすべて新品。
古びた感じに見えるが中古ではない。
なるべく昔ながらの製法のを選んだ。
内側に漆が塗ってあり、漆と鉄が化合してできた黒錆(黒鉄)の膜をつくる。これによって鉄を劣化させる赤錆の発生が防げる。
茶葉のタンニンでも黒錆はできるので、ときどき茶葉を煮て内側の膜を補強する。
鉄はデリケート。
湯を沸かした後にしっかり乾かさないで濡れたままにすると、次の日にはもう赤錆の小さなスポットが現れる。
また茶葉を煮たらよいが、見かけによらず不安定なところがある。
鉄瓶の錆
鉄瓶で沸かした湯には鉄イオンが溶け出すらしい。
しかしこれがお茶の味にどう関わるのかはっきりしない。
科学的な知識よりも、お茶の味を観察して、どのように鉄瓶を使うのがよいかを探るほうがよいだろう。
鉄・水・火の関係。
幼いころは水遊びや砂遊びに夢中になって、万物とのつながりを自分の身体で確かめていた。
そんなアプローチができたら、鉄瓶は楽しめる。
章朗古樹青餅・黄印2016年
今日はこのお茶。
【章朗古樹青餅2016年・黄印】
西双版納の孟海茶区から西へ、ミャンマーにかけて分布する古茶樹には共通した苦味がある。
苦くて、後からその反動が来て甘い。
鉄瓶の湯で苦味がどう変わるのか、そこが見どころ。
今回はステンレスの電気ポットと比べてみる。
ステンレス電気ポットと鉄瓶
久しぶりに白磁の蓋碗。
茶葉の重量もちゃんと計る。
鉄瓶は湯が沸くのに25分。
ステンレス電気ポットは3分20秒。
湧いてから、鉄瓶はアルコールランプの小さな火で沸騰状態を保つ。ステンレスの電気ポットは一煎ごとにスイッチを入れて再沸騰させる。
もちろん、鉄瓶の湯に鉄の味がするなんてことはない。念のため。
章朗古樹青餅・黄印2016年
左:ステンレス電気ポット
右:鉄瓶
茶湯の色はまったく同じ。
香りのボリュームにはほとんど差がなかった。
鉄瓶の湯は熱い。
杯を持つ指の感じでは5度くらいの差がある。
2煎め
3煎め
葉底(煎じた後の茶葉)の開き方が1煎めから違っている。写真は2煎めと3煎め。
水質が違う。
鉄瓶のは、口当たりまろやかで喉ごしに潤いがある。
ステンレスの電気ポットのは、”燥”。ドライでカラッとしている。
味わいは、金属の質感のもつイメージ通りで、鉄瓶のは重低音。ステンレスのは高音。音のような響きの違いがある。
ステンレス電気ポットと鉄瓶
苦味は鉄瓶のほうがよい。強いのに優しい。
ステンレスの電気ポットは若い味。鉄瓶は1年ほど保存熟成したような落ち着いた味。
耐泡(煎がつづく)は同じ。
7煎くらい進めても、茶湯の色も味のボリューム感もほぼ同じである。
鉄瓶のお茶の味が一煎めからボリューム感があったので、後が続かないのでは?と思ったが、そでもない。
お茶を淹れる味わい。
お茶を飲むだけでなく淹れる動作を味わう。
上手に淹れることだけが大事になると、コーヒーマシーンのように機械に任せたほうが良いことになる。

版納古樹熟餅2010年 その36.

製造 : 2010年7月
茶葉 : 雲南省西双版納州巴達山曼邁寨+章朗寨古茶樹2009年秋茶
茶廠 : 農家+孟海県の茶廠
工程 : 熟茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 乾倉
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 鉄瓶+チェコ土の茶壺
鉄瓶あられ

お茶の感想:
鉄瓶で淹れる。
濃く淹れても透明感のある味わい。
高温の抽出でありがちなドライな刺激をしっとりと包み込むような水質。
鉄瓶の湯でいろんなお茶を濃い目に淹れてみよう。
ということで、今日はこのお茶。
【版納古樹熟餅2010年】
版納古樹熟餅2010年
思い切って真っ黒に出してみる。
いつもは7煎くらいまで続けるところを、前倒しにして3煎めで切るつもり。
鉄瓶ならではの熱の響きをつくるには時間を掛けてゆっくり湯を沸かすほうがよい。
まずガスコンロの弱火で25分ほどかけて湯を沸かす。途中からシューン!という音が鳴り出して、底から小さな気泡が湧いて上下に対流する。気泡がだんだん大きくなって蒸気にチカラがみなぎってくる。
ガス火
ガス火の熱はまっすぐ上がり鉄瓶の底を突き抜ける。
上への直進力が強すぎる。水に強い刺激を与えるから、小さくトロトロした火で鉄瓶まで1センチ以上の隙間を空けたほうがよい。コンロの高さ調整ができるよう薄い五徳を敷く手もある。
沸騰するまでの時間、鉄から伝わる熱の響きを水が聞いている。水の粒子がそれを形状記憶する。
アルコールランプ
アルコールランプの火も親指の先くらい小さめ。
鉄瓶から茶壺に注いでからも水の記憶はすぐに消えない。茶葉に響いて成分が抽出される。
そんなお茶の味。
版納古樹熟餅2010年
版納古樹熟餅2010年
体感にも違いがでてくる。
これだけ真っ黒く抽出してもサッパリしている。熟茶にありがちな暑苦しさはなく、むしろ涼しい。茶葉の良さを引き出している。
茶酔いはゆったりと長い波で寄せる。
静かで落ちついた体感。
お腹の底を温める熱がいつもより力強い。
水が記憶している熱の響きは、体内の水にも響く。
鉄瓶を傷めたくないので試さないが、強火で短時間で沸騰させたらお茶の味も体感も変わるだろう。いつも使っているステンレスの電気ポットは3分で沸騰するが、その湯でこのお茶を濃く淹れたらもっと乾いた辛い暑い味になる。体感も厳しい。
お酒をこの観点で評価するとひどいものが多い。

易武古樹青餅2010年 その34.

製造 : 2010年4月
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県易武山麻黒村大漆樹古茶樹
茶廠 : 農家+易武山の工房
工程 : 生茶のプーアル茶
形状 : 餅茶
保存 : 京都陶器の茶壺
茶水 : 京都の地下水
茶器 : 鉄瓶+チェコ土の茶壺
鉄瓶

お茶の感想:
お茶の良し悪しは酔いの質をみる。
茶酔いの快楽に価値がある。
舌先・鼻先でわかる味や香りにたいした価値はない。
高級茶ほど没個性でひかえめな味のほうがよかったりする。
人は快楽に上質を求めることにストイックになれる。
なにかの本で読んだが、アヘンがそうらしい。アヘン戦争のアヘン。
その効能を最大限に発揮できるよう、喫烟する一日前からなにも食ベない。酒もお茶も飲まない。コップ一杯の水だけでしのぐ。空腹時に酒を飲むと酔いが回るように、空っぽの身体にアヘンが回るとブッ飛べるそうだ。もしも身体に不純物が入っていると飛べなくなる。
たとえ裕福な人でも、美食・美酒をあきらめてアヘンの快楽に生きようとする。だから中毒者はガリガリになってゆく。映画などで貧民が生活苦から逃れるためにアヘンに溺れてガリガリというのは作られたイメージ。そもそもお金のない人に高価なアヘンは変えない。現実はむしろ公務員など地域社会の要職に就く人がアヘンに侵されるから大きなダメージを与えた。大英帝国の狙いはそこだった。
歴史の本によると、アヘンの喫烟は主に茶楼で行われていた。
交易で栄えた華やかし頃の中国の都市にある茶楼は『千と千尋の神隠し』の舞台となる油屋みたいなイメージ。カンフー時代劇でも出てくる木造の豪華な館。個室で寝そべり、窓から表通りを見下ろしながら、食・酒・煙草・茶・女・音楽と、あらゆる快楽を嗜む。
タイの仏像
お茶はその快楽のひとつ。
茶葉を選んだり、道具をそろえたり、キレイな水を汲みに走ったり、湯を沸かすのに時間をかけたり、淹れ方を工夫したり、瞑想したり。茶酔いの快楽のためなら手間暇を惜しまない。犠牲をためらわない。
山深い霊気のあるところに育つ茶樹。樹齢は300年を超えた高い幹のものを選ぶ。采茶や製茶はできるだけ人の手の汚れ(わざとらしさ)から遠ざけなければならない。
ストイックな追求は、味のためよりも茶酔いのため。
お茶は古い仏教と相性がよくて、禁欲的な生活をするお坊さんが茶を飲むイメージがあるけれど、厳しい修行は茶酔いの効能が最大限に発揮されるためと見ることもできる。
ストイックな快楽主義者である。不純物だらけの一般人とは違うレベルの快楽を体験しているにちがいない。
鉄瓶八角
鉄瓶を試す。
茶壺と同じで、使い始めは安定しない。内側の漆塗りや鉄の臭いがあるので、熟茶の茶葉を2回煮て”ならし”をした。それでも安定するには3ヶ月はかかるだろう。
湯はガスコンロの極小の火で24分かけて沸騰させる。それからアルコールランプの小さな火で高温を保つ。「シューン」と小さな音が鳴っているくらいの沸騰。
今日はこのお茶。
【易武古樹青餅2010年】
易武古樹青餅2010年試作品
湯の熱には響きがあると話していたけれど、感覚的に鉄瓶の熱はお寺の鐘のようにゴォーーーンと響く重低音。
易武古樹青餅2010年
茶湯の色からしても濃い味になったはずだが、口に含んだ瞬間は意外とあっさり。ややトロンとした舌触りながら透明感があり涼しい液体。と思っていたら、ちょっと時間差があって底の方から味わいが湧いてくる。
一煎めにして三煎めくらいの深い味わい。ゆったり長い波長。チェコ土のマルちゃんの茶壺の波長ともピッタリ合う感じ。
「はーーーーーっ!」と腹の底から息が出てる。
香りは素直に出ている。アピールはおとなしめだが、これも長い波長で余韻が続く。
苦味はおおらか。二煎・三煎とすすめると春尖の辛味がでてくるが、煮えた嫌味はほとんど出ない。
茶酔いはゆったりしている。
いきなりパーンと響くようなことなく、じわじわ効いてくる。覚醒と眠くなるのとバランスよく綱引きして、ボーっと窓の外の緑を見た。
7月の緑
鉄瓶は重い。
上の写真のは1750g+1000mlの水を入れると2750g。軽めのダンベル。筋トレできる。
たぶん重さが理由で使わない人もいるだろう。
ひとまわり小さいのも買ってみた。1450g+700mlの水で、それでも2キロはある。
鉄瓶小

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茶想

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