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茶教室・京都

刮風寨単樹1号2018年 その1.

製造 : 2018年4月13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 散茶100g
保存 : 西双版納 
茶水 : 農夫山泉・四川省
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
刮風寨単樹1号
刮風寨単樹1号
刮風寨単樹1号

お茶の感想:
刮風寨単樹1号は茶友たちが「鉄拐李」と呼んでいる。
鉄拐李(李鉄拐)が足の悪い仙人だったから。
遠い昔に根元のほうで2つに分かれ、いったん横に倒れた幹が大きく曲がって上に伸びる姿は神々しくもある。
刮風寨のエリアは山が深いので、お茶の需要が減ると誰も山に入らなくなって、ほんの数年で原生林に戻ってしまう。
台刈りや剪定されないと枝分かれが少なくて幹がスッと上に伸びる。高幹は単樹のお茶にするのにふさわしい。上に伸びた幹と同じバランスで地面の下の根も下に伸びているはずで、深い地層に根が達していると想像できる。
刮風寨単樹1号の葉
3年前から刮風寨のお茶に集中している茶友も単樹のお茶の味にはまって、刮風寨のエリアから裏山を超えてラオスにまで足を伸ばして、すでに何本もの単樹のお茶をつくっては試しているが、今のところ単樹1号の美味しさに叶うのは見つからない。
個性がストレートに現れる単樹のお茶は美味しいとは限らない。
前の記事にした単樹2号は同じ茶坪の斜面を横に50メートルほどずれたところにあって、土質は同じだと思うが、品種特性的な違いが現れていて葉形も違えばお茶の味も違う。
左1号右2号
左: 単樹1号 100g
右: 単樹2号 100g
同じ100gの晒青毛茶でも1号と2号では嵩がこれほどにも違う。茶葉の形状と成分が違う。1号の黒い色は鉄分などのミネラルの含有率が高いせいだと思われる。
采茶は1号も2号も4月13日。
1年前から農家と約束して、10日前から森に入って新芽・若葉の成長具合を確かめて、采茶のための木登り人員を確保して、製茶の日の天気を予測して、この日!という采茶のタイミングを決める直前には緊張で胃が痛くなる。
単樹1号の殺青は瑶族の農家の主人が担当した。ホッとした。
農家の主人が殺青
農家の主人もこのお茶を愛していて、自分用の取り分を主張するが誰も文句なし。
側で殺青を見ていて、やはり熟練の殺青はすばらしいと思った。ふだんの他人に売る用のお茶の殺青とはぜんぜんちがう動きだった・・・。
自分の殺青との違いは手返しのスピード。
農家は強火で攻めて手返し早くすることで焦げを防ぐが、このやり方では水分が蒸発しやすく標準的な茶葉だと緑茶っぽい風味になりやすい、が、単樹1号はそうならない。茎の部分が長く育って水分を多く含むからだろう。
殺青
茶葉を投入する直前の鉄鍋の温度は390度。
何年か前に非接触温度計でいろんなところの鉄鍋を計ったが、だいたいこの温度。
一鍋で炒る約5キロの鮮葉を投入した瞬間に、たしか190度に下がる。さらに1分か2分でもっと下がる。それから数分でまた温度が上がってくるが、この間が問題。茶葉が常温から70度以下の低温域が長く続くと意図しない軽発酵がすすむ。茶葉全体が均一にそうなればよいが、葉の縁のほうや茎の部分だけが黄色やオレンジ色に変色する。また、風味も紅茶のようなモワンとした甘い香りが混ざる。
炒りはじめて短時間に茶葉の水分を高温の蒸気に変えて、全体的に熱が伝わるようにしたい。それには強火がよいし、鉄鍋に厚みのあったほうが鍋の温度が下がりにくくてよい。
ただ、ここを追求しすぎて道具をこだわると、違う種類のお茶になりそうな気がする。
漫撒山の地域一帯は森の水気が多く、茶葉は茎が長く育って水を含む。その結果、炒った茶葉のところどころに変色が残るのが普通。
単樹1号も2号も手の動作をがんばって精度を上げてみたけれど、ムラをなくそうとする追求はほどほどにしたほうが、ここのお茶の個性が守れそう。
単樹1号
茶湯の色
葉底
「神韻」と呼ぶやつだと思う。
脳がクラっときて、一瞬であっちの世界へと連れて行ってくれる。味もさることながら酔い心地が違う。まるでクスリ。
中毒になりそう。

刮風古樹青餅2018年・黄印 その1.

製造 : 2018年4月11日・13日(采茶)
茶葉 : 雲南省西双版納州孟臘県漫撒山(旧易武山)刮風寨茶坪
茶廠 : 農家と店長と茶友たち
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納
茶水 : 西双版納のミネラルウォーター
茶器 : 宜興の茶壺・グラス杯・鉄瓶・炭火
圧餅の蒸し
圧餅の石型
圧餅の布袋

お茶の感想:
今回は自分ひとりで圧餅する。家の厨房のカンタンな設備で茶葉を蒸す。
圧餅の工程は、茶葉を蒸して布に包んで石型で圧して、冷ましてから布を外して涼干・晒干する。
文章にするとたった一行のことだが、ひとりでやると重労働で、一日20枚圧餅するのがやっと。
道具を手入れして掃除を終えたら深夜になる。
一週間続けたらあちこちの筋肉が盛り上がって体つきが変わってくる。
180g×20枚=3.6kg。製茶(萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干)をひとりでするのとほぼ同じ生産性である。
65kg の体重の人間がたった3.6kgの茶葉に疲れ果てるのだから、圧餅の茶葉に与えるエネルギーは大きい。
圧餅は、円盤型に整形するだけが目的じゃない。
散茶の嵩を減らして運搬しやすいようにしたことが出発点だったとしても、”蒸す”ことの火入れや、蒸気の水による軽発酵や、石型で茶葉の繊維の揉むこと、昔の職人はこれらの意味を理解していたと思う。
お茶に薬効が求められていた時代だから、なおさら細かな作業の効果に考えがあったと思う。
圧餅後の餅茶
餅面
もしも圧餅を工房に依頼すると一日数百枚も可能である。しかし、茶葉の変化を全体を通して見ることができない。数人一組の分業になるからだ。分業では、各自の担当するところの茶葉を観察できても全体は把握できない。蒸したとき、布で包むとき、包んでから2度蒸しするとき、石型で圧すとき、布を外すとき、涼干・晒干で乾燥させるとき。この一連の変化を見ているだけではダメで、どうしても手の感触など身体全体でその変化をつかむ必要がある。
晒青毛茶ができるまでの製茶も同じ。
采茶からはじまって萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干の流れを身体で知るのが大事。
というのが最近わかってきたので、圧餅も自分でやることにしたのだ。
身体で知ることが言語化できないと他人に伝えられない。
例えば揉捻について。
名前のとおり茶葉を揉み捻る工程であるが、「手で揉むのは何分かかるの?」と、現場でよく聞かれる。
揉捻
手で揉捻すると、ある時点で急速に茶葉が変化しはじめるのが指先や手のひらの感覚に伝わる。さらにすすめると、あきらかにこれまでとは違った変化があって、「もういいよ!」というサインが手に伝わる。手と茶葉との会話がある。
茶葉のコンディションは毎回異なる。たとえ同じ一本の茶樹から採取しても、日によって水分・栄養分・繊維質が異なるし、気温や湿度や気圧という外的な要因も揉捻の結果を左右するだろう。
したがって、揉捻の時間は5分で終わることもあれば20分かかることもある。その判断は手がする。
雲南の自然栽培の茶樹は一本一本の品種特性が微妙に異なり、茶葉の大きさもカタチも繊維質も成分も異なるから、揉捻一回の手に取る茶葉(この段階ではまだ水分が多いので1.5キロくらいだろうか)ごとにチカラ加減や時間を調整しなければならないはず。
手で揉捻すると個人によって技術もチカラも異なるから、例えば自分なら10分のところを他人なら15分かかるかもしれない。手は疲れてくるから1回めと10回めにかかる時間は異なる。
茶摘みのときから茶葉に触っていると、一連の工程(采茶・萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干・圧餅)の前後の関係にも気付く。
手で揉捻
例えば、早春の雨の降らない日が続いた茶葉の揉捻は短時間で済むとか、雨が降った後は繊維が硬くなって3倍の時間かかるとか、殺青で水分が残っていたほうがヨジレやすいとか、殺青の火入れがしっかりできたときに手にくっつく茶漿の粘度が高いとか、揉捻をしっかりすると軽発酵がすすんで甘い香りが出るとか、揉捻しすぎると圧餅の粘着が悪くなるので蒸し時間を長くしなければならないとか、揉捻でわかる水分量で晒干の茶葉を広げて一日で乾く厚さを予測するとか。
もしも機械で揉捻して茶葉と手の会話が断絶すると、前後のつながりがなくなり、つじつまが合わなくなるだろう。お茶の性質をある方向に導こうとするなら、手で揉捻するのはあたりまえなのだ。
手で揉捻したら生産効率が5分の1になる。
単純に計算して5倍の価格でお茶を売ると機械揉捻の生み出す利益に追いつくわけだが現実的ではない。
機械揉捻
「手の揉捻は何分するの?」と聞く人の心理はおそらくこの生産効率のことを先に考えている。
工業生産的な価値判断が背景にあるのは、そのほうがカシコイと評価される社会環境であり時代であるからだ。さらに悪いのは、それを知ったうえでマーケティングする者も出てくる。手で揉捻する本当の意味を考えずに手工を演出する。そのほうが売れるから。
この考え方は、お茶づくりの労働をつまらないものにしてしまった。
お茶だけでなく、他のあらゆるモノづくりに共通する。
人の手の仕事の価値を失って、人が貧しくなるスピードが加速して、お金を稼いでも稼いでも貧しくなるスピードに追いつかない。
さて、『刮風古樹青餅2018年・黄印』。
刮風古樹青餅2018年・黄印
刮風古樹青餅2018年・黄印
5月4日に圧餅を終えて、10日間かけて涼干(陰干し)して、荷造りを終えたところ。長期熟成は西双版納では行わないからとりあえず上海に移動させる。
180gの小餅サイズ全部で19枚。出品は17枚くらい。
圧餅の蒸し時間はいつもよりも長くなった。深蒸しになった。
これも手の判断である。石型を踏む足の判断でもある。
なぜ手や足がそう判断したのか?後から頭で解析を試みているところ。
出来たての餅茶は味が安定しない。この時期がいちばん不安になる。もしかしたら手が判断を誤ったのではないか?と疑いたくなるからだ。
お茶淹れ
茶湯
もう何度も経験しているので、この間しばらくは試飲しないほうがよいと知っていても、やはり気になって試飲してしまう。
ヘンな味が出て心配になって眠れなくなる。
圧餅を3日前に済ませてきた北京の茶友が、刮風寨の古茶樹のお茶を持ってきた。
彼のオリジナルだが、製茶は農家がして、圧餅はメーカーがしている。彼自身は身体を動かさないので太っている。カタチだけのお茶づくりは誰にでもできる。
茶友の餅茶
餅面がキレイ
メーカーの圧餅は餅形がキレイ。
品茶
でも、やっぱりヘンな味が出ている。
同じ道をたどっている。
圧餅前の散茶の味をみると、そのヘンな味は無い。なので明らかに圧餅が影響した味である。
圧餅3日後の茶友のと10日後の自分のを比べると、ヘンな味が抜けているのがわかった。よかった。よかった。
炙って乾燥
圧餅後の水分が残っていることだけがヘンな味の原因じゃないと思う。
炭火の遠火で炙って茶葉を強制的に乾燥させても、やっぱりヘンな味が残っているから。
1ヶ月ほど待つしかない。

1

茶想

試飲の記録です。
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